第119話
布陣を調整する。黒岩鰐のラヴレーンチェフを先頭に、ラヴレーンチェフの左後方に灰刃狼のアウギュスタ、同じく右後方に白姫狐のカルメンシータを配置する。
ラヴレーンチェフに敵の攻撃を集中させるのだ。ノアは【強魔】スキルでラヴレーンチェフの防御力を強化する。
「カルメンシータは敵の撹乱と、アウギュスタの攻撃時に敵から守ってあげてください」
「アウギュスタは敵が攻撃した直後の隙きをついてください!!」
「フェールケティルは敵の魔法に注意して! 詠唱を止めてください!!」
ノアは司令塔として【回避】スキルと指示に専念する。【結界】スキルは、自分を中心とした球体ではなく、岩巨兵が使っていたように体に這わせる感じの奴に挑戦中だ。
月弓ならば、もっと簡単に決着がつくかも知れない。しかし月弓を発動中の無防備がバレてしまえば、司令塔であるノアを敵は襲うだろう。使い魔は使い魔を使って勝たなければならない。これがノアの結論だ。
リオニーとタムリンに鍛えられた使い魔たちだけど、実戦経験は殆ど無い。確かに初期の使い魔よりは強いけど、ダンジョンで鍛えてきたけど…。敵も…この階層の敵は、何故か戦い慣れていた。
敵の弱点を見つけて、最大火力をぶち込む。それが基本だ。でも、もっと頭を使うんだ。
ノアが、勝利に導くのだ!!
「アウギュスタ!! 敵後方に周って、青子鬼の魔法使いを倒してください!!」
物理系の赤巨鬼や緑豚兵の魔物たちが、黒岩鰐のラヴレーンチェフの挑発に誘われて固定された状態になる。今なら物理系アタッカーのアウギュスタの独壇場だ。体力の低い青子鬼の魔法使いにアウギュスタの斬撃を耐えられるはずがない。
「フェールケティル! 複数で厳しいですが、魔法の詠唱を阻害してください!!」
先に魔法使いを倒す作戦だったが、白姫狐のカルメンシータは、独自に判断してラヴレーンチェフの挑発の興奮している緑豚兵を凍結しながら倒していく。
そして「ノア達の勝ちです!!!」ノアは勝ち鬨を上げた。
ボス戦とは違ってじっくりと考えていられない。瞬時に状況を読み取り、戦術を組み直す必用があるのですね。
今度はしっかりと【特定】スキルを発動させ、周囲の魔物たちの進行方向を読み取り、安全地帯を見つけ出し、休憩を取っている。
この階層には、ノアの欠けているもの必用なものが、沢山ありそうな気がした。
「家に帰らず、ここで野営しながら、鍛えましょうか?」
これも本当なのだが、家に帰るとヒガシヤマさんの事ばかり考えてしまうのだ。
【弓矢】スキルも鍛えておきたいな。七色に光り輝く左手を見ていたら、ムニュムニュっと…左手が変形して、弓の形になった!? 剣にもなる? ムニュムニュっと剣になった…。
ヒガシヤマさん…。ちゃんと、こういうのは教えておいてよ…。
でも、月弓の時は、【結界】スキル解除しないと駄目だったよね。【弓矢】スキルはどうなんだろう? 解除しないのであれば、凄く使えそうな気がするんだけどね。