第116話
朝起きてベッドの上に座る。お腹が『ぐぅ〜』となるが、想像したご飯を作れるの偉大なスキルは、一日に一回のみ…そう簡単に使えない。
二度寝するべく、ベッドに倒れ込み、枕を抱きしめて匂いを嗅ぐ。ヒガシヤマさんの匂いが、ノアの匂いで上書きされ消えていくのが悲しい。
「うぅ…。あの馬鹿蝶々め!!」
10戦10敗。
数には数! 灰針鼠を100匹従えて、針の弾幕で雑魚蝶々を叩き落とす? 駄目です!! その後、100匹も灰針鼠を養えません!! 破産です!!
火蜥蜴のエドゥアールを炎魔神に進化させる!? 駄目です!! ノアの【従属】スキルでは指示に従ってくれません!! それに左腕の精霊義手の固有スキル【進化】が、そうそいう意味なのかも不明です。
今日思いついだアイデアは駄目だ。全く駄目。
ノアは服をベッドの上に投げ捨て、お風呂場に向かう。
水人魚のツェツィーリエを呼び出し、【水流】スキルでバスタブに水を張る。|次に火蜥蜴のエドゥアールを呼び出し、【火炎】スキルで水を温めてお湯にする。
ちょっと!? 精霊を家事に使うなって!? いいえ、違います。これは訓練の一環なのです。家事で利用できるような繊細な力加減を練習中なのです。はい。
ノアはバスタブに、指を入れる。うん、熱すぎず温すぎず…いい湯加減だね。
ノアがバスタブに浸かると、黒岩鰐のラヴレーンチェフが、ドカン!! と入ってくる。
「バスタブ壊さないでよ!? それとノアを踏んだら、ノア…潰れて死ぬからね?」
何度も注意するが、静かにゆっくりと、入ってくれないのだ。何故勢いをつけるのか!?
まぁ、スキンシップは大事だからね。でも、重すぎて抱っこしてあげられない。
ラヴレーンチェフの頭を撫でてあげる。
うん? 右手で撫でる時と、左手で撫でる時、反応が違うな? 左腕の精霊義手が良いの?
七色に光り輝く左腕を見る。そういえば、この左手って…何? 肉じゃないし、鉱石でもない。う〜ん…。ノアの体は、正体不明な…不思議ちゃんになってしまったのですか?
力に力、数に数。勝てないなら逃げる。そうか…敵のセールスポイントで勝てなっからって、負けじゃないんだ。勝てるポイントで勝つ。蝶々に勝てるポイントって何だろう?
湯上がり、真っ裸。どどーんっ! と、窓を全開にして、自然の風を体に受ける。
「気持ちぃぃ〜」
街に行ってみようかな? と思ったが、空飛ぶ船の出来事が、恐怖が、心を蝕む。
「駄目だ。最低でもダンジョンを踏破しないと、自信が持てないよ…」