第113話
第60階層のボスとの再戦が始まる。前回、手も足も出ずにボロ負けした相手は、岩巨兵で、物理系の高攻撃力と防御力が売りの相手だ。
前回と同様に灰刃狼のアウギュスタを攻防一体の盾役として最前線に出す。
「前回は…人間だったけど! 月弓!!」
精霊となり威力が大幅にアップした精霊(妖精)魔法を放つ。しかし、岩巨兵は、全くダメージを受けていない。
「駄目? 何で!?」
ノアの魔法が低レベルなの!? 固有スキル【月術】はランクBだよ!? アウギュスタも咥えた長剣で果敢に攻めるが効果がない模様だ。
ならば! 「フェールケティル!!」白浮霊のフェールケティルに精神攻撃を指示した。だが、やはり…ゴーレム。精神攻撃は無効みたいだ。
無効!?
ノアは【特定】スキルで、岩巨兵の魔力の流れを確認する。魔力は…あれ? 外部から…何かが流れている!? 違う、結界だ。結界が薄く岩巨兵の表面を覆っている!!
その元を辿ると、変哲のない壁の飾りだった。えっと…1,2,3…4つ! あれを全部壊すんだね!!!
「月弓!!」
しかし、この飾りも…魔法攻撃無効みたいだ。ノアの使い魔で物理攻撃が得意なアウギュスタは、岩巨兵のヘイトを必死に稼ぎながら、ギリギリの戦いを強いられている。
白姫狐のカルメンシータに、飾りを攻撃するように指示する。カルメンシータは、幻術と凍結を得意とするが、その二つで敵の動きを封じ込めた後は、スキルに昇華していないけれど、強力は爪と牙で物理攻撃をしているのだ。
が、しかし…カルメンシータの物理攻撃力では破壊不可能らしい。
「撤退です!!!」
駄目なら逃げればいい。相手は階層主であり、逃げもしなければ追っても来ない。
この階層までに出逢った魔物を従属させて、また再戦だ。でも…ここまで、使い魔が増えていない理由は、特に必要性を感じていなかったからだ。どんな魔物が良いのだろうか?
「う〜ん…元・使い魔店の従業員としての矜持を持って、この難問に立ち向かう」
物理…物理…物理…物理…。あっ!
フェリオスさんに売った魔物。敵意を集める事が得意な黒岩鰐がいました!! 早速、捕まえに行こう!!
あれ? でも、何回層だっけ?
第30階層に転移して、一階層ずつ…もう一度、虱潰しに探索することにした。