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ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第三部 異世界から来た転生者
110/243

第110話

 ダンジョン探索も44階層まで到達した。10階層毎に家に帰れる転移ポータルがあるため、ダンジョン内で夜を過ごすことはなかった。


 しかし、張り切りすぎたのか、体の魔力のバランスが崩れて、一週間寝続けることになってしまった。


「ノアは駄目ですね」

「ノア、そろそろ…正式に…精霊にならないかい?」

「まだ…嫌です! 内緒だけど…ダンジョンの最下層に…ダンジョンを踏破したら、ヒガシヤマさんにデートを申し込むつもりです」

「言っちゃってるよ…。ノア、まだ熱があるみたいだね」

「絶対に、デートするんです!!」

「はい、はい…。ほら、興奮しないで! 今は静かに寝てないと…。あれ? 気絶してる!? やっぱり…。肉体が限界だな…」


 四日後。


「カルメンシータ! お待たせです。今日からダンジョン攻略再開ですよ!!」


 足元に集まる使い魔たちを目の前に握りこぶしで、決意をあらわにするノア。


「お〜い。あまり無理するなよ?」

「はい。ヒガシヤマさん! 今日のお弁当はなんですか?」

「サンドイッチだ。異世界もので、サンドイッチという単語を出すとアレルギー反応を…起こす者たちがいるんだが…」

「何を言ってるか解りませんが、とりあえず行ってきます!」


 ◆◇◇◇◇


「う〜ん。ノア遅いなぁ…」


 いつも夕食前に帰ってくるのに、珍しく帰ってくる気配がなかった。


 バタンッ! トイレの方から物凄い音がした。すると白姫狐(クィーンフォックス)のカルメンシータが、血相を変えて走ってくる。


 僕は、ノアに何かがあったことを悟る。


「ノアッ!?」


 灰刃狼(ブレイドウルフ)のアウギュスタにもたれ掛かるノアを抱き上げる。


「ヒガシヤマさん…。ボス…に…ちょっと…疲れちゃった…」


 ぐったりとしたノア。苦しそうに息をしながらも、笑顔で答える。


 魔力が枯渇してる!? ノアの肉体と精霊が分離を始めていた。


「ノア! 限界だよ。お願いだ…。もう…精霊に…」

「こっちこそ…お願いです…あと…一日でいいから…」


 ノアは…勝手なお願いをして…気を失ってしまう。


 ノアをベッドに寝かせる。この世界で精霊王になってから…これほどの精霊力を使うのは初めてだ。


「ノア…。お願いだから…もう一度、笑っておくれ…」


 いや、死なないけどさ…。一点の曇もない笑顔…。


 うん?

 ノアは…。心から笑っていたのかな?

 ノアの夢ってなんだろう?

 叶えたいことってなんだろう?


 ノアの事…何も知らないないんだな…。


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