第11話
タムリンに連れられ、街の市場に出掛ける。ついでに【鑑定】スキルや【索敵】スキルを使い熟練度を上げていく。【隠密】スキルも使ってみたけど、相手から認識されなくなるため、人通りの多い市場で使うと、ぶつかったりして危ないので使えなかった。
タムリンは買い物のときもメイド服を着ていたが、周りを見ると同じようにメイド服を着た女の子から大人の女性まで意外と沢山いた。
「やぁ。ノアちゃん、こんにちわ」
果物屋さんの前を通ると、声をかけられた。声の主は『ムーンレイク使い魔店』で灰針鼠を買ってくれた冒険者のマイリーお兄さんだった。
「えっ!? マ、マイリーさん?」
「覚えていてくれて嬉しいよ。この店は親父の店でね。冒険で疲れた体を休めるときは店番をしているのさ」
「なるほどー。灰針鼠は元気ですか?」
「うん。ほら、足元で寝てるよ」
「うわっ! 可愛い…」
「刷り込みした人間以外に敵意を持つから触らないでね」
「あう…。また触れないのですか…。買い物の途中ですので、今度ゆっくり冒険者の話を聞かせてください」
タムリンが珍しい青色の果物を買うと、マイリーさんは大量に仕入れたからと酸っぱい果物のイエローパルをサービスしてくれた。
タムリンはその後もどんどん買い物を続けながら、お屋敷に近づく。なるほど、買い物の順番も軽くかさばらない物を先に購入して、重くかさばる物を後から購入する。ルートも順番もきっちり考えられているのか。
お屋敷。そう言えば、『ムーンレイク使い魔店』の敷地って凄い広い。厩舎、中庭、林に畑、そしてお屋敷。もう一度言う。普通の一軒家ではなく、お屋敷だ。
何者なのだろう? もしかして…使い魔って儲かるのかな?
◆◇◇◇◇
そして待ちに待った深夜。白姫狐の寝顔を見るため【暗視】スキルと【隠密】スキルを発動させながら、厩舎に向かう。
おぉぉぉぉっ!? 【暗視】スキル凄い。光源がないのに周囲がくっきりと見える。それに【隠密】スキルのおかげでフローリングの廊下の軋む音がしない!?
【索敵】スキルも使って、タムリンとマーシャルさんが自室にいることを確認する。
ふふふっ。もう気分は盗賊? 暗殺者?
厩舎の二重のドアを問題なくクリアして、白姫狐の檻に近づく。
あっ。目が合った…。
白姫狐が寝る前だったのか? 【隠密】スキルのランクが低いために見破られたのか? どっちだろう?
「金貨43枚か…」
付けられた値札を見てため息を付く。住み込みの見習いであるため、毎月のお給料は金貨1枚弱。安めの灰針鼠も買えないし、買っても飼う維持費がない。辛い。
「あう…。お金か…」