第104話
「か、舌が痺れる!? これ、何ですか!? この感覚は初めてです…美味しいですけど…」
「ははっ。これはね、カレーライスという食べ物だよ。片腕のノアでも食べやすい物を作ったんだ」
「甘くもないし、苦くもない。何だろう?」
「それは、辛いという感覚だよ。この世界の料理には、辛い食べ物が無いのかな?」
「でも、ヒガシヤマさんは料理が得意なのですか?」
「これはね。神様から貰ったスキルだよ。何が欲しい? と聞かれたので、元の世界の料理が簡単に再現できるスキルが欲しいと答えたんだ。無趣味な僕の唯一の楽しみは食事だったからね」
「ヒキコモリ? ニート? どっちでしたっけ?」
「あわわわっ!? ノ、ノア!! そんな言葉、覚えなくていいから!! そのキラーワードをこの世界で聞くことになるとは…」
「ごめんなさい…。気を付けます…」
カレーを食べると全身から汗が吹き出してきた。生きていることを実感できた。生きている。それだけで嬉しい。
食後にヒガシヤマさんが困った顔をしている。言い出したくても言い出せない。過去の記憶で何度もみた表情だ。
「ヒガシヤマさんは、コミュ症? なんですよね? 何でノアと普通に会話できるんですか?」
「あわわわっ!? ノ、ノア!! またコミュ症とか!! 本当に覚えなくていいから!! あれ? でも…何でノアと…会話できるんだろう?」
腕を組み真剣に考えるヒガシヤマさん。
「そうか。そうだよ。助けたかったんだ。ノアを…。あっ!? あ、あのね…。言い難いのだけれど、ノアの巻いている包帯は、精霊の加護付きなんだよね。だ、だから…毎日取り替えないといけないんだけど…。取り替えるには…。そ、その…。は、裸を…」
「ヒガシヤマさん!! それを言いたくて、ずっと悩んでいたんですか? ノアには何でも言ってください。嫌なら嫌と言います。それは…裸を見られるのは恥ずかしいですが、散々見られていましたし、ヒガシヤマさんに下心はなかった…あ、ちょっとだけ…ありましたよね。ノアの容態が安定してきたとき…。でも…触るの我慢したから…無罪放免ですよ。ノアからお願いします。包帯を交換してください」
ノアとヒガシヤマさんは、お互い顔を真っ赤にして、交換作業を始める。胸の包帯がなくなり、吹き飛ばされた? 削られた? 乳房を見て悲しくなるが、そこに火蜥蜴のテッレルヴォと月妖精のドーグラスがいると思うと嬉しくなった。
「勇者スキルで【治療】を上位にすれば、おっぱいを…。あ、あれ? 勇者スキルって…。発動しない…。あれ? ギルドカード…。あっ。失くしちゃったのか…」
「うん? ギルドカード? 欲しいの? ここの家って、とある賢者様の家だったらしいんだ。この世界の魔道具が、ずらりと倉庫に保管されてて、街に行かなくても十分に世界を知ることが出来たよ。あっと、その中に冒険者ギルドとかで使われている…と思うギルドカードがあったような…」
ヒガシヤマさんは、水晶とギルドカードを倉庫から取り出し、ノアのギルドカードを作成してくれた。
□□□──────────────────────
●名前:−−−(人間・女性12歳)
●職業:−−−(ランク:−−−)、スキルポイント:3
●能力:体力E 筋力F 知力F 魔力G 運気E
●評価:−−−
●習得:看破D 特定C 従属A 暗視A 隠密A
念話C 検魔B 治魔C 回魔B 解魔E
呼魔B 巣魔B 強魔C 結界A 弓矢G
野営D 解除F 回避D 短剣G 方角C
採取B 鷹目B 狼鼻C 豹耳B 薬草B
●状態:欠損(左目、左腕、左胸)
骨折(肋骨×3、右足)
半霊
◎固有:炎術B 月術B
──────────────────────□□□




