第102話
「やぁ、気分はどうかな?」
目覚めたノアを見下ろすように、短髪の青年が声をかけてきた。
「ノ、ノア…。生きているの?」
実際のところ、何がどうなったか覚えていない。ただ、死ぬほどの苦しみを味わったことだけは確かなのだ。
「ノア! 君は、ノアちゃんって言うんだね! そうだ! お水! お水を飲むかい!?」
ノアはコクリと頷く。何で? 何がそんなに嬉しいのだろうか?
ノアにかけていた布団どかし、背中を支えながら起こしえくれる。
あっ…。
「あの…。助けてくれたことは感謝します。でも…。やっぱり…裸…見ましたよね?」
全身に包帯が巻かれている。左腕が無いのも、左目が見えないのも、わかってしまった。でも、現実を受け入れたくなくて、誤魔化すように…助けてくれた青年に意地悪をした。
「ご、ごめん!! で、でも…。そうしないと…」
「あの。う、嘘です! ちょっと…からかいたくなっただけです。私の…体ってどうなっているのか、知ってたら教えてください。それと…名前も」
右手でポリポリと頬をかく青年。
「ははっ。な、名前言い忘れてた。僕は…ヒガシヤマだ。えっと…。言い難いけど、いずれ知ることになるからね。上から順番に説明するね。左目は…眼球が無かった。左腕も無い。それと…左胸に大きな穴が空いたような傷が胸と背中にある。女の子にはショックだから…言いたくないけど。左の乳房が削れてしまっている…。あとは、肋骨が数本と右足が骨折している」
ノアは言われた箇所を右手で触り確かめる。自分が一体何をしてのか? 何故ここまで酷い仕打ちをされなければならないのか? 悔しくて、悲しくて、大声で泣いた。
「ぐっすん…。うるさくて…ごめんな…さい…」
泣き止んだノアの頭にポンと手を乗せるヒガシヤマさん。
「泣くことは大切だ。頭や心で整理できない負の感情をストレスを発散させる」
「うん…。あの…ノアは、どうして…ここに? ハッ!? 使い魔達!!」
銀溶液のペルペトゥア、白姫狐のカルメンシータ、灰刃狼のアウギュスタ、白浮霊のフェールケティル、火蜥蜴のテッレルヴォ、月妖精のドーグラスを呼び出すが、火蜥蜴のテッレルヴォと月妖精のドーグラスの姿はなかった。
「何で? テッレルヴォとドーグラスがいないの!?」
慌てるノアに、使い魔たちが何かを訴えようとしているが、完全に会話できる訳ではないので、理由は理解らない。
突然現れた魔物たちに驚く様子もないヒガシヤマさんは、腕を組み黙って様子をうかがっていたが、ノアへ通訳するように語りだした。
「融合して…不死鳥になった!? そして、空から落ちて、バラバラになったノアの体を地上で集めて…蘇生して……足りない心臓に姿を変えて消えた!?」
白浮霊のフェールケティルと会話するヒガシヤマさんにノアは驚く。