第100話
船内は研究者や警備兵などでごった返していた。白浮霊のフェールケティルが適切な経路を、灰刃狼のアウギュスタに伝え、甲板まで到達した。
しかし、甲板で待ち構えていたのは、ヴァルプルギスの夜会、メンディサバル帝国、異端審問官、古代教会、そして、アンブロス王国と、各組織の重要な者たちであった。
各組織は、互いに牽制し合いながらも、ノア確保に向けて行動を起こす。
「聖女サトゥルニナ・レーヴェンヒェルム!! 貴様っ!? ヴァルプルギスの夜会を裏切るのか!?」
「裏切る? いいえ。最後にはノアを提供します。貴方方が欲しいのは勇者スキル。しかし、その奪い方一つで、ノアの命は消え去ります。そうでしょう? ヨハネス・ケルヒェンシュタイナー?」
「その娘の命など、どうでも良い。重要なのは勇者スキル!! 我らアンブロス王国が! そして我が王が!! 世界を手にするために必用なのだ!! 12年前の失態をここで取り返す!!」
「貴様らアンブロス王国が世界を? 笑わせるな!! メンディサバル帝国こそ世界の覇者に相応しい!!」
「ゴミどもが…。兵力のない戦いこの場で、ヴァルプルギスの夜会に勝てると思っているのか!?」
魔法都市ヴェラゼンに聳える十一塔の呪術塔の主アーク・ノルドクヴィストが、呪詛の光線を放つ。
甲板で大爆発が発生し、その衝撃で空飛ぶ船は傾く。
「流石に容赦ないわね」聖女サトゥルニナ・レーヴェンヒェルムでも結界越しにダメージを受けてしまった。
その隙にノアに近づく、メンディサバル帝国の騎士団と、ヨハネス・ケルヒェンシュタイナー率いるアンブロス王国の騎士団。
火蜥蜴のテッレルヴォと、月妖精のドーグラスが、それぞれの騎士団を相手する。その隙を狙って、さらにヴァルプルギスの夜会のメンバーであるセレスティーヌ・ヴェラーにより、白姫狐のカルメンシータと灰刃狼のアウギュスタが無効化されてしまう。
銀溶液のペルペトゥアは、ノアと灰刃狼のアウギュスタを固定しているため参戦できず、最後は白浮霊のフェールケティルのみとなる。
しかし、聖女サトゥルニナ・レーヴェンヒェルムの前では、白浮霊のフェールケティルは、相性が悪すぎた。
もう誰がノアを捕まえても不思議ではない状況に、異端審問官のリオニーが立ち塞がる。
「ノアは…渡さない!!」
「異端審問官のガキが!!」
魔法都市ヴェラゼンに聳える十一塔の呪術塔の主アーク・ノルドクヴィストの髑髏の杖と、タムリン譲りの死を連想させる巨大な死神の鎌が、ぶつかり合う。
「はっ! 貰ったぜ!! |スキル強制強奪《リリーススティール!!》!!!!」
集団を抜け出したヨハネス・ケルヒェンシュタイナーが、ノアの右手を掴み、魔道具に封印された最上位スキルを発動させた。




