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花言葉シリーズ

アジアンタムのような恋がしたい

作者: 尚文産商堂
掲載日:2009/04/02

プロローグ


私が彼の家に行ったとき、彼はある鉢植えを見せた。

「ほら、これを見て」

単なるシダにしか見えなかったそれは、アジアンタムって言うらしい。

「こいつは、花じゃないけど、花言葉がついてるんだ」

だけど、その言葉を忘れてしまった。

忘れると言うことは、どうでもよかったのかもしれない。

彼とはその後うまく行かなくなり、そのまま別れた。


第1章 出会いは常に偶然を装って


私は、大学に入っても、そのときの彼ほどの恋に燃え上がることはなかった。

ゆっくりとした時間が過ぎていく。

その中で取り残されたような感覚に陥る。


次の講義まで、あと3分ぐらいと言うとき、私はその教室のすぐ近くの角を曲がった。

そのとき、誰かにぶつかった。

「ああ、すいません。大丈夫ですか?」

私は、持っていた本を抱え込みながら倒れた。

「あてて…ああ、大丈夫です。すいませ…ん…」

ぶつかった相手の顔を見た。

「あれ…」

「ここに入ってたんだ…」

私たちは、2年前に別れたのにもかかわらず、互いの顔をはっきりと覚えていた。

それほどまでに、私たちは恋をしていたのだろう。

「ごめん、また今度ね」

そういって私は彼を置いて、教室へ入った。


授業は身に入らず、その後のお昼ご飯も味が分からない。

―彼が同じ大学に入っている―

その事実だけが私の頭を駆け巡っていた。


「ここ、いいかな」

私が帰ろうとバスに座っていたとき、彼が私の横に座った。

「ええ、どうぞ」

すこし奥につめて、彼が座れるようにした。

バスは、ゆっくりとスピードを上げて、出発した。


「あの時は…ごめん」

突然、彼が謝った。

つっけんどんに聞く。

「いつのこと?」

いやな沈黙が、バスを包んだ。

周りは山の景色になっている。

もう少しすると、川を渡る。

「…別れたこと」

一言、彼の手を見ながらつぶやいた。

周りの乗客は、黙っている。

こちらの様子を伺っているかもしれない。

でも、私は気にならなかった。

「それだけ?」

私は言った。

「あのときから、ずっと考えていた…」

彼は続けた。

「本当にあの時別れて正解だったのかって。でも、答えは出なかった」

彼に言った。

「あの時は本当にそう思っていたのよ。だから正解。でも、今は違う」

私は彼の手を取ろうとし、

「私は、いつでもあなたを待ってる。私の横は、あなただけなんだからね」

そう言おうとした。

しかし、しなかった。


第2章 恋の告白は不自然なほど自然


川を渡るとき、橋を通ることになる。

ガタゴトと、きしみながらバスは通っていく。

「それは分かってる。でも…」

彼は、どうしようかわからないようだった。

それは私も同じだ。

突然であった彼と、こんな風にバスに乗って帰る。

だれが予想できただろうか。

私は言った。

「私も分からないの。あなたともう一度、付き合ってもいいのかって…」

私が言うと、彼ははじめて私の目を見た。

「そうなのか…」

その目は、安堵の表情を見せている。

徐々に減っていく乗客たち。

道は、まだ続いている。


「……そういえば、覚えてるか?」

「…何を」

私は、突然の彼の質問にたじろいでいた。

「昔、一番最初に俺の部屋に来たとき、お前が言っていたこと」

「…アジアンタムの話?」

彼は笑っていた。

「そう。何この葉、何が楽しいのって。そういっていたのを思い出してな」

「そんな昔のことを思い出さなくてもいいでしょ。それに、今はバスの中だよ」

彼に言った。

すぐに答える。

「その花言葉、覚えてるか?」

私は覚えていない。

「…アジアンタムの花言葉は、天真爛漫とか無垢って言う意味なんだ。無邪気って紹介しているサイトさんもいるな」

彼の話が読めなかった。

「何が言いたいの」

「…俺は、お前がずっと好きだった。その気持ちは、今も変わらない。ただ、お前が幸せだったら、いつでもいいって言っているんだよ。あのときには、もう戻れない。俺達が無邪気に恋していたあのときにはな…」

一息入れてから続けた。

「昔のお前は、俺と一緒にいつでもいたがった。悪く言えば天然だったところもあったが、俺はそれでもよかった」

「何よ、突然。そんな昔の回顧録なんて聞きたくない」

私は彼に言ったが、彼は続けた。

「お前には、いつまでも幸せになって欲しいんだ。だから、もう一度聞いてもいいか?」

彼が言った言葉を、前にも聞いた言葉をもう一度聞いた。

「俺と一緒に、一生を過ごしてくれないか?」

私はどう答えたか覚えていない。

ただ、肯定の意を表明したことだけは確かだと思う。


エピローグ


それから、私たちは変わった。

昔のように二人で遊びに出かけることが多くなり、あちこちに出かけた。

私は、アジアンタムの花言葉のような天真爛漫に戻ることはないだろう。

でも、もう一度そんな恋をしてみたいと思う。

それも私の夢だったから。

"http://www.hanakotoba.name/archives/2005/09/post_353.html"→アジアンタム

ここからねたをとりました。

ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 拝読いたしました。 全体的に流れがはやかったせいか主人公や相手の心情が読み取りづらい部分がありました。 バスの中ということもあり、景色の移り変わりがいくつかありましたがそれがどこか説明文に感…
[一言] こんにちは。3作目、拝読しました。執筆、お疲れ様です。 赤面しますね。純愛なので(笑)。これぐらい堂々とやってくれた方が逆に清々しくなります。 しかし、他の方が仰っています通りに、ちょっと心…
[一言] こんにちは、桐谷です。 一言で純愛だなっという印象を受けました。きっと何らかの訳があって別れたのでしょうが、そこが少々弱くて、二人がよりを戻してよかったね、ぐらいにしか受けませんでした。バス…
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