第31話 少年の目覚め5
ここはどこなんだろう……。
見たことはあるが、知らない部屋だった
そこにはスーツ姿の男に殴られ続ける僕と同い年くらいの目が茶色い髪で隠れた男の子の姿があった。それを止めることなく、横には少しお化粧の濃い女の人が更に化粧を重ねていた。スーツの男の暴行は更に激しくなり、男の子をタンスに追いやり、強く突き飛ばした。
背中を打ちうずくまる。その男の子にスーツの男は追い打って腹部を蹴りあげた。男の子はそのままうずくまり泣きわめいていた。
その泣き声に心が苦しく辛くなる。
それを観るたびに思いだしてくる。それが自分の過去だったことに…。辛い記憶、その時の感情、それらが止まることなく頭に蘇ってきた。
それから、どのくらいの時間が経っただろう……。もう何も考えられない。それでも映像は止まることなく続いた。絶望感が僕の身体から溢れ、希望を失っていると、ある映像が観えてきた。
炎天下の中、自動販売機横の夏の暑さで熱くなったコンクリートの上で座り込む僕。それを無視する、おじさん、おばさん、男の人、女の人達。そんな中に一人だけ声をかけてくれた一人男の人。声をかけてくれて、本当は嬉しく、助けて欲しかった。でも迷惑になると距離をおこうとした。それでもその人は来てくれて僕が倒れた時に家に連れ帰り介抱してくれた。
それからは僕であって本当の僕じゃない翔太だったけど、翔太が消えてもその時の記憶は僕の中にちゃんとある。本当気持ちが弱い部分もある、だけどそれでも助けてくれる兄ちゃん!
何があっても兄ちゃんが僕を守り、兄ちゃんは僕が守るんだ。僕もしっかりしなきゃ、兄ちゃんと一緒に生きていけない。




