第20話 訪問者1
翔太との話も終わり今日の夜中の散歩に行くかどうか考える。昨日のこともあるし今日は家に籠っていた方がいいのかも、でも散歩に行かないと気分が晴れないといいうのもある。自分じゃ決められないから翔太に委ねた。
「翔太は今日散歩に行きたい?」
「うーん、昨日もこともあるから本当はあんまり行きたくはないんだけどでも行こうかな。兄ちゃんもその方が息抜きできるだろうし」
「確かにそうだな、じゃあ今日も散歩に行こうか」
「うん」
翔太が俺のことを思って散歩に行くと言ってくれたのは嬉しいが、俺のことより翔太自身のことを一番に考えて欲しい。それが俺への為にもなるから。まぁ気持ちは受けとって行くことにしたが今日はいつも以上に警戒して行かないといけない。どこであの警察官が見張っているかもわからないからだ。
とにかく今日も行くことに決まり、出掛ける時間八時過ぎくらいまで互いに休憩をする。俺はスマホで好きな動画クリエイターの動画を観る。翔太は食器を片付け終わった後はテレビで某クイズ番組を観てクイズの答えを考えていた。
八時まで互いの余暇な時間を過ごし俺は少し早めに散歩に出掛ける準備を行う。準備と言っても着替えて髪を少しセットする位で別段特別な準備をするわけではない。俺が着替えるのを見て翔太もテレビ画面から離れ外服のパーカーに着替える。翔太の着替え終わりに合わせ翔太お気に入りの俺が昔使っていたキャップ帽子を翔太に渡す。翔太には少し大きめなそのキャップ帽子を深めに被らせ出掛ける準備は完了だ。太陽が昇っている昼夕時はマスクも被らせていたが、夜は暗く顔も見えないことでマスクは外した。しかし、もしもってことがあるかもしれないからマスクは一応持ってってはいる。
支度も終わって出掛けるのに丁度良い時間になり夜間の散歩に出る。いつも適当に時間をバラつかせ散歩に出る。時間をバラつかせることで帰り際のサラリーマンと同じ時間に何度も出会わないようにだ。ちなみに今日は昨日よりも遅い。昨日に比べ今日は人も少なく比較的に安心して外を出歩けそうだ。それに個人家ようの街灯もこの時間なら消されていることが多い。だが時間が遅ければ遅い程警察に補導される確率も高くなるし、人に見られたときに不審者であるという先入観の強さが変わってくる。だから毎回深い時間というわけにはいかない。
昨日行った公園の近くやその方向に行くは止めることにした。また昨日の連中に出くわすのは危険だし、その警察に通報した近隣の住人の人にも見られるのも嫌な感じもするからだ。だから今日はその反対の方向に行くことにした。こっちには昨日とは別の大きな公園がある。例えこっちにも変な不良がたむろしていたとして広さがあるから避けて進むことも出来るし、広い分もしもの時に翔太を隠す場所も多い。そういう連中に出くわさないことが一番良いんだけど。
そう思いながら公園を訪れたのだが予想外に公園内には思ったより人が多くたむろしていた。その多くがヤンキーなのだが、中にはカップルが複数ペアいる。今にもおっぱじめてしまいそうな雰囲気を醸し出している。ヤンキーがたむろしている公園でよくそういうことを始めようとするなと思いながら、それを翔太には見せないように気を逸らせながら静かに公園を出た。
「兄ちゃんもう出るの?」
「そうだな……。思ったより人いたし、教育上良くないからな」
「教育上?」
「あー、いや何でもない」
俺の曖昧な回答に翔太は頭に『?』を浮かべていた。それに俺はさらにの回答として苦笑いで返す。そこから別に普通な会話をしながら目的なく散歩を行う。今日の目的として夜間の公園で翔太と遊ぶことを考えていたのだが、それが出来ず今日は思ったより早く家に帰ることになりそうだった。適当に道を選んでいても産まれてからずっとこの町に住んでいて行ったことのない道は無かった。俺は懐かしく思い、翔太は初めての道に少し怯えながらもワクワクと好奇心を持ちながら歩いている。
特に行くところもなくゆったりと歩き、宛ての無い散歩をしていると喉が渇いてきた。丁度近くに自販機があり飲み物を買う事にした。
「お、懐かしいこのリンゴジュース。昔よく陽太と分け合って飲んでてなぁ……。よし俺はこれにしよう。翔太は何飲む?」
「僕は炭酸系がいいかな。だからこの桃サイダーがいい」
「オッケー。翔太って炭酸好きだよな。俺喉に来るのが苦手なんだよな」
「え、あれが気持ちいのに喉にガッとくる感じが」
「翔太は大人になったらビールにハマりそうだな」
「兄ちゃんもビールとか飲むの?」
「喉に来るのが苦手だから飲まないよ。サワーとかならたまに飲むけど」
「サワー?」
「まぁ大人になれば飲めるよ。そん時は一緒に飲もうな」
「うん」
翔太が今十代でまだまだこれからの話だが、いつか翔太とお酒を一緒に飲むのが楽しみになった。いつか一緒にお酒を飲みたいなんてこれじゃあ翔太の兄ちゃんというよりか父親みたいな感じだな。でもそれを叶えるにはそれまで翔太を守り続けなければならない。それまで頑張って守り切ってやる。
そう俺は決意を新たに行い飲み終わったペットボトルを捨てる。翔太は飲み切れずにそのまま持って、帰ることにした。以外にも時間は当初予定してた公園で少し遊んで帰るという予定と大差ない時間だった。家の方に歩き向かった。
角を曲がり家までの横一線の道を歩いて行く。その時はその街灯も無く翔太の方を向き話ながら歩いていて気が付いていなかった。その二人の訪問者の存在に……。
その訪問者に気が付いたのは俺とその訪問者の距離がほんの数十メートル位の時だった。もっと早く気が付いていればどうにかなったかも知れないが、その予期はしていた最悪な訪問者の二人は既に俺と翔太の存在に気が付いていた。もう既に手遅れだった。
「やぁ。真人君と君は行方不明の少年柳場翔太君だね。君たちの帰りを待ってたよ」
「話を訊かせてもう」
田所さんと昨日の警察官が俺と翔太の帰りを家の前で待ち構えていた。翔太は持っていたペットボトルを地面に落とし絶句の表情を浮かべている。正直俺も動揺と焦りを顔一面に広げていた。足が震えだし鼓動が早くなり息がしにくくなってくる。一体どうすれば……。
地面にまた何か落ちた……。
いや、翔太が倒れた……。




