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信仰心の影





「こんな可愛い寝顔する子を王国を救う為とはいえ、生まれ育った村から引き離すような事をするのは気が引けるな」

「お主も言っておったじゃろ。王国が崩壊すればこの者の生まれ育った村も無くなるのじゃ」



 初めて乗る馬車に興奮しながら話していたレオンだったが、ここ数日まともに寝ていなかったのもあり、睡魔に勝てず寝てしまっていた。

 そんな彼を優しく見つめながらフォルテニクスは話を続けた。



「さて、城の方はどうなっとるかのぅ」

「なぁじいさん?実際に聖剣は存在すると思うか?」


 フォルテニクスは顎髭をさすりながら思案し答えた。



「儂が教会の資料をアル坊に持たせておる。問題はないじゃろう。しかし、聖剣はまだ見つかってないじゃろう」

「それはなんでだ?」

「神託によると聖剣は開かずの扉の奥にあるのじゃ、儂は先代国王の頃から城を知っておるがその様な場所は聞いたことがない。おそらく見つける事ができるがレオンという事だろう」

「なんかパッとしないな」

「全ては儂の予想だからの……儂は女神様の声を直接聞いておるからな…全く疑っておらんのじゃよ」









 フォルテニクスの父親は神官だった。

 小さな頃に父親から聞かされた話は、童話や昔話よりも教会の教義と女神様への信仰だった。


 父親がなぜ熱心な信者になったかというと、父親の父親、フォルテニクスにとって祖父になる人物が女神の神託を受けたからだ。


 祖父は王都より南にある小さな街の教会に住んでいた。そこよりもっと南にある村が謎の病気により壊滅した。

 その病気が少しずつ北へ移動して来た時、女神の神託が下ったのだ。

祖父は病気の原因と対策を授かり街を救った。病気を王都に行く前に食い止めた事により、王のお言葉を貰い王都の教会に移り住む事になった。


 そんな偉業を成した姿を見て育った父親の信仰心は誰にも負けないものだった。勝ち負けではないのだが、父親には勝てないと周りに思わせる程の信者だったのだ。

 自分も神託を授かりたいと思う一心で。


 父親が不運だったのは、皮肉にもその時代は平和だった事だ。謎の病気が流行ったり、謎の強敵が現れたりすれば確実に神託が下った事だろう。

 その熱すぎる信仰心と焦りから、息子のフォルテニクスに極端な教育を施していたのである。


 しかしフォルテニクスは達観した子供だった。

 祖父と父親の関係を正しく理解し父親の気持ちを受けとめたのである。




 フォルテニクスは女神の神託を下った時、身も心も震え上がっていた。

 それは父親の教育によって高められた信仰心からと、祖父が神託を授った事で人々を救った実績があることからである。



 どんな状態になっても女神の神託を信じれば救われる。

 フォルテニクスは本気で信じているのだ。

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