父の葛藤と使者の到着
「レオン!王都方向から豪華な馬車が来てるぞ!!」
見張り台から大きな声で呼ばれ、ついに来たか。と思った。村のみんなは一目見ようと仕事を一旦止めて村の入り口に集まっている。僕は全く歓迎できないのだが。
「僕は教会に居るから!そっちに案内して!」
僕はそう叫ぶ。村長が頷いたのを確認して教会へ歩きだした。
思い出すのは昨日の夜の事だ。
神官様に八つ当たり気味に叫び教会を出た後、サラと話す事で頭が冷えた。
罠にかかった猪を縛り上げ、他の罠を点検して帰る頃には日が暮れそうになっていた。
肉の解体場に猪を持って行くと周りにいた子供達は大喜びして。おばさんから畑の野菜を貰えた、それから家に帰るだけだったのだが、やはり神官様に謝ろうと教会へ向かった。
教会の扉を開けようと手を伸ばした時、中からすすり泣くような声が聞こえ手が止まった。
「女神様………なぜ………なぜレオンなのでしょうか!?私は教会の前で彼を拾ってから、本当の息子の様に育ててきました。神託と言われれば私は送り出すしかないではありませんか……真逆の事を考えながら突き放すしか方法がないではありませんか!!私から………私から息子を奪わないでください…………女神様……女神様…………」
僕は空を見上げ流れそうになる涙を必死に耐えていた。その間にも神官様の独白は続く。
信仰と家族の板挟みになった葛藤。それを聞いたレオンは扉を開けかけた手を引っ込め、ゆっくりと自宅へ歩き出した。
家の中に入った瞬間、我慢していたものが崩壊した。
「うわあああああああああああああああ」
手に持っていた野菜を落とし、膝をつき額を床につけ思いきり泣き叫んだ。
昨日の事を考えていると既に教会の前に着いていた。ゆっくりと扉を開き中へ入る。
「おはようございます。レオン」
そこには酷い隈に目を真っ赤に腫らした神官様が立っていた。
「おはようございます。神官様」
僕と同じような顔の状態の神官様を見て少し笑ってしまった。
長椅子に隣あって座っているが会話はない。しかし居心地が悪いわけではなかった。
外が騒がしくなり、扉がゆっくり開く、
神官様の青の法衣とは違う、真っ白な法衣に身を包んだ老人が入って来た。
「フォルテ……ニクス……さま?」
そう呟いた神官様は、ハッと我に返り老人の前で跪く。
神官様の出した名は最高神官のものだった。僕も慌てて神官様の後ろ続いて跪いた。
「フォルテニクス様、ようこそおいでくださいました」
「おぉ、イザークか、久しいのぅ。そして後ろの子がレオンかの?」
「はい、レオンと申します」
僕はガチガチになって挨拶をした。
「ホッホッホッ。そんな緊張せんでもよいぞ。さていきなりで悪いのだが、レオンと話をしても良いかの?声のなるべく漏れないような部屋が良いのじゃが」
「わかりました。それでしたら2階奥の会議室にご案内します」
神官様を先頭にフォルテニクス様、その後に僕と大きな袋を抱えた騎士が並んで2階へ上がって行った。