それぞれの指示
ウォルフォードが神託の写しを読んでいる間に、これからの事を考えていた。フォルテニクスとアルバートは静かに私の言葉を待っている。
「ウォルフォード…それを読み終わったらこの場で燃やせ、そしてフォルテニクス、今後女神の神託を書き出す事を禁止する」
フォルテニクスは渋々ながら頷き、ウォルフォードは紙にロウソクの火を移し神託の写しを燃やし尽くした。
「さてこれからの事を話そう。まずアルバート!お前は城の資料を徹底的に洗い出し神託にあった開かずの扉を探せ!」
「ハッ!」
「そして、フォルテニクスとウォルフォードは西の村へ行ってもらう。先に伝令を走らせ使者が行くように伝えておく」
「なぁロベルト?このゴブリンの死体も村に持って行っていいか?これが有るのと無いのじゃ話を信用する可能性が段違いなんだが?」
(私も現物を見るまで決断が下せなかったからな…)
「そうだな……わかった!その死体を包み直して持っていけ、しかし勇者レオンのみに見せる事を許可する。それと東の国境の防衛はお前が居なくて大丈夫なのか?」
「大丈夫だ!指揮系統は副隊長が優秀だからな!あぁそれと、報告にあった数のゴブリンが居たとしたら辺境にいる兵だけじゃ足りない。数部隊、貸してくれないか?」
「王都の護りもあるからな……わかった、お前らが村から帰ってくるまでにはなんとかしよう。あぁ…これから緊急会議だ……アルバートは今から作業とりかかれ、村へは明日の朝出発とする。以上だ!」
私の言葉を聞き、3人は礼をとった。
アルバートとフォルテニクスは退出し、
ウォルフォードと2人きりになった。
「アル坊や………ちょっと待ってくれんかのぅ」
そう呼び止められ振り向くと案の定フォルテニクス様が立っていた。
「フォルテニクス様、城内ではアルバートとお呼びください。で?何でしょうか」
「すまんのぅ、今の陛下が子供の頃一緒に城内を走りまわっていたお前さんの記憶が抜けないのじゃ。悪さを儂に見つかって泣きながら誰にも言わないでと言われた事は、未だに黙っておるというのに……」
「わかりました!わかりましたから!もうアル坊でいいので、用件を言ってください!」
フォルテニクス様は私の父が宰相をしている時から最高神官という役職についている。その選定方法は教会上層部だけの秘匿とされており王族でも知らないようだ。
今回の件で女神の神託によって任命されたと言われても今の私なら信じるだろう。
しかし、子供の頃の事を知っているからといって会う度にいじられるのは何か悔しい。
そんな事を心の中で思っている私を優しい表情に変わったフォルテニクス様が話だした。
「用件なんじゃが、開かずの扉に関する資料を教会から持って来ておってのぅ、女神の神託の内容から必要だと思っての」
「それは本当ですか!?図書館の文献を端から読んでいく事になりそうだったので助かります」
「それとな、教会の上層部しか知らん口頭で受け継がれる言葉もここに書き出しておいた。読んで覚えたら誰にも見せず自分の手で燃やして処分しろ。よいな?」
「わかりました!…しかし良いのですか?そんな貴重な資料を私に」
「お前さんの事は小さい頃、しかも母のお腹の中にいる時から知っておるのじゃ、信頼しておる」
「ありがとう……フォル爺……」
「ふむ。城内ではフォルテニクスと呼んでもらいたいものだのぅ!この資料と昔の城の図面があれば解読できるじゃろう。儂は明日の準備があるからこれでの」
フォルテニクスは機嫌良く笑いながら去って行きました。
「私も頑張らなければ!」
両頬を自分で叩き気合を入れ、図書館の方へ向かった。