それぞれの報告
レオンが勇者に選ばれた事を知る数日前の話
ロベルト・スクルテイラー王は神託が書き出された紙を読んで頭を抱えていた。
神託を下ったと言うアルクメリア教会最高神官フォルテニクスは、早朝に謁見を申し込んできた。彼は65歳であり、私が国王に即位する前から国内にある全ての教会を統括している。
報告の内容が特殊すぎるので、非公開に客室で報告してもらう事にして本当に良かったと思う。
もう一度読み直し、その紙を宰相に渡す。彼も読み込むうちに眉間にシワが寄っていく。
「この内容に間違いはないのだな?」
「一字一句、誤りはありませんぞ」
私の質問にも即答する。嘘をつく必要もないし、何かを企んでいるとも思っていないのだが、
「この紙1枚だけでは、判断する情報が足りなすぎるな」
「儂は御言葉を直接いただいたから心から信じておるが、陛下の立場からするとその考えは同意するしかないのぅ」
「とにかく西のココ村にレオンと人物が存在するか調査、東の辺境に帝国の状況を報告させる為に伝令を送って、あとは?開かずの扉など知らぬぞ?」
トントン
扉がノックされ、私が返事をする前に扉が開いた。
「よう!ロベルト!ここに居たか!探したぞ!」
「ウォルフォードか…今は非公開だが謁見中だ」
この馴れ馴れしく入って来たのはウォルフォード将軍、34歳で私の一つ歳上だ。私と彼の関係は今はどうでもいいとして、彼は帝国との国境、東の辺境を守っていたはずだが、
「突拍子もない報告すぎて、伝令じゃ信用してもらえないだろうから、俺がわざわざ王都まで来たんだ、どんな予定よりも優先してくれ!とにかくこれを見て欲しい」
そう言うと、肩に抱えていた白い布で覆われた塊を床に置いた。そしてその布を取ると中から緑の怪物の死体が現れた。
宰相は息を呑み、フォルテニクスは目を見開いている。
「ゴブリン…………」
「なんだ!?これを知っているのか!?」
「私の話は後だ!先にそちらの報告をしろ!」
ウォルフォードが私の呟きを聞き逃さず詰め寄って来たが私は報告の続きを促す。
「あぁ……まず1ヶ月程前になるのか?帝国に紫の隕石が落ちるのを確認した。状況を確認する為に帝国に向けて諜報兵10人ほど放った」
「そうか……」
「ん?何か気になるが続けるぞ?帝国はこの緑の怪物だらけになっていて、村を襲っていたみたいだ。数が多すぎて撤退したが戻って来れたのは3人だった。帝国から王国に入るにはナルメニア山脈の洞窟を抜けるしかないが、諜報兵が確認した村は山からだいぶ離れた帝都に近い場所だったそうだ。それでも洞窟の入り口には何体か通って来てるから、大群が洞窟に押し寄せてくるのも時間の問題かもしれん」
「……状況はわかった。アルバート、その紙をウォルフォードに見せてやれ」
宰相はウォルフォードに紙を渡した。