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第九話 飼い猫キナコ

 ワシは小田家の主、チャトラのキナコ様である。


 昨日の夕方、ワシの下僕兼猫ジャラシ係の美咲が泣きながら帰宅した。


 普段なら帰ってきた後はワシをなでなでしてしばらく遊ぶのだが、それすらせずに部屋にまっすぐ行ってしまった。そしてあろうことか、ワシを部屋から締め出したのだ。下僕のくせにまったくもってけしからん。


『こら美咲、早くワシをなでなでせんか。ブラシをさせてやってもよいぞ?』


 部屋の前でマオーンマオーンと呼んでみるが応答が無い。さてどうしたものか。


 しばらく思案しているとエサ係のママが慌てた様子で階段を上がってきて美咲の部屋に入っていく。ドアが開いた隙をついてワシも部屋に入ることができた。


 ベッドに座ってしくしく泣いていた美咲の足元で顔を見上げるといつものようにすりすりをしてやる。こうすると美咲が喜ぶからだ。


 どうだ、少しは気分が良くなったか? 美咲はちょっとだけワシの背中を撫でると再びしくしく泣くのを再開した。ふむ、これは困った。言葉が伝わらないのは意外ともどかしい。


 ママは何やら慰めるように美咲にたくさん話しかけ、『とにかく髪の毛を何とかしましょうね』と言って美咲の顔を上げさせた。なんじゃこりゃ、ワシのじゃれる為のおもちゃが短くなっているではないか! 誰だ、ワシのおもちゃを勝手に切ったのは。まったくもって許せん。


 何故かワシは美咲の膝の上で大人しくしているようにと命じられ、再び自由の身になった時には美咲の頭の毛は少なくなっていた。せっかくじゃれるのにちょうど良い長さになっていたのに残念なことだ。また伸びるまでは猫ジャラシで我慢するとしよう。


 そして次の日。


 普段ならカバンを持って出掛ける美咲が部屋から出て来ない。ママが電話で『今日は体調が悪いのでお休みさせます』と誰かに言っていた。あれが世に言う“ガッコウノセンセイ”ではないだろうか。


 そしてそれから一週間、美咲はガッコウに行くことなく家にいる。


 パパや誠は朝になると出ていくのでナツヤスミとかレンキュウではないようだ。美咲はママに「もうすぐ文化祭で部活でカレー作るんだよ」と言っていた。ブンカサイってなんだ、それには行かなくても良いのだろうか……そんなわけでワシは今日も出窓の特等席で我が小田家に不審者が来ないか監視中だ。


 美咲がガッコウに行かなくなってから見知らぬチビ共がチョロチョロと“ジュギョウノノート”とやらを届けにやってくるので何かと落ち着かない。


 まったく困ったものだ。それと家族が一人増えたような気がするんだが気のせいか? ママとパパ、誠と美咲、そして最近ワシにブラシをしてくれるこの男、誰なのだ、こいつは。

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