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No.0 それを儀式として

第0話です。初めまして、こんにちは。宜しくお願いします。

 陽は落ち、夜の帳が辺りを覆う。辺りに人の照らす光は無く、夜間光る天の月は厚い雲に隠され、一切の光をも漏らしていない。

 そんな暗闇の中でも分かるほどに黒く、その場所は一点だけ黒く崩れ果てていた。

 その黒の瓦礫の上に佇む一人の女。シャツ、スカート、コート、ブーツに至るまですべて黒を基調とした衣服を着た彼女は闇夜に溶けるかのようで、しかしその手に握られた一振りの剣はその暗闇の中でも輝くほどに白銀に輝いている。


「ああ、やっと、やっと見つけたのよ。愛しき子」


 黒服の女は優しさを籠めて誰もいなくなった瓦礫に向かって呟く。

 その彼女を複数人の男たち包囲していた。男たちは素性のしれない彼女に剣の先を向け、訝し気に警告を発する。

 だが、男たちが周囲を取り囲んでいることも、何か警告のような言葉を発していることも、彼女にとってはどうでもいい事だった。重要なのは、男たちが自分に剣を向けていること。そして男たちの目的が瓦礫の下の『彼女』であるということ。

 それすなわち、彼女にとって間違いもなく【邪魔者てき】であるということである。


 剣先を向けながら円を縮めるようにジリジリと包囲を縮めていく男たち。と、彼女は俯けていたその顔を上げる。一瞬、空を覆う雲の隙間から月光が差し込んだ。その光から僅かに照らされた彼女の顔は端正なつくりをしており、まさに美女であった。思わず彼女の正面に位置取る男数人が一瞬息をのむ。


「邪魔、しないで」


 呟くように発せられた一言。そして空中に環状の一閃。一回転した彼女の体に遅れて黒のロングコートがヒラリと舞う。

 羽虫を払うように振るわれた一撃は、それだけで周りを取り囲んでいた男たちの体を切り裂いた。頑丈なはずの鉄の鎧は紙のように切り裂かれ、皮膚が裂け、肉が切れ、骨が絶たれ、血飛沫が飛び散る。

 男たちは何が起こったのかわからず、気が付いたときは自身から噴き出た血の海に倒れ伏していた。血は地面を這うように赤黒く染め上げていく。とめどなく溢れる血液は広がり、互いに混ざり、瓦礫を中心として円を描くように繋がっていく。


「あぁでも、丁度よかったかしら」


 フッと小さく笑った彼女は次いで剣先を己の胸の中心部に当てなおし、力を籠め、押し貫く。心臓を貫き通した白銀の剣の刀身は彼女の背中から生えるように突き出した。そして自身を貫いた剣をその身から強引に抜き取る。

 大きく空いた胸の傷口から大量の血液が溢れ、黒の服を濡らし、瓦礫の上に水の入ったバケツを逆さにしたように血がドバドバと流れ落ちる。

 

「これ、で、きっと・・・・・・」


 瓦礫の上に崩れ落ちる身体。

 夜天を隠す黒雲は、まだ晴れない。



1時間後にもう1話投稿します。

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