兵の本分。
手榴弾は”てりゅうだん”では無く、”しゅりゅうだん”で行きます。
理由、近所の元帝国在郷軍人が”しゅりゅうだん”と言っていたから。
なお、元帝国陸軍准将の人の話では、地域師団制の為、連隊ごとの方言が強くて新品少尉の頃は兵に馴染むのに大変だったって話。
人間共の寝る丘に群がる死霊兵を望み、あわてる人間共を眺めて居ると自然と笑みがこぼれる。
魔力が尽きれば、死体に戻るだけだ。
完全に破壊されない限り、魔力を送り続ければ何度でも起き上がる。
疲れず、恐れず、前に進む、まさに理想的なカワイイ兵たちだ。
この丘に書いた巨大な魔法陣や、魔力の量、使用するのには条件があるのは仕方ない。この私にしか出来ないコトだ。
さあ。偉大なる魔王様に楯突く小癪な人間共、この魔王様一番の家臣たる私が引導を渡してくれる。
口からこぼれ出た笑いがいつしか不気味な高笑いとなって夜の丘に響いた。
その瞬間、高笑いを掻き消すように目の前に闇を切り裂き土の柱が立った。
「は?」
ヒュルヒュルと風を切る音が頭上から聞こえ上を見上げると。
そのまま意識を失い二度と戻らなかった。
「だんちゃ~く。今!一番!近、二番!遠、三番!着弾!!四番も着弾!!」
「よ~し!どんどん撃て」
連隊の守り神たる山砲は暗闇を切り裂き、日夜の猛訓練の成果を示す為、機敏に動く砲兵たち。
昼間は歩兵の機動戦に参加できずに出発地点で各門、数発撃っただけ。
曲射の連中は昼間は歩兵支援、夜は照明弾と大忙しなのに、あんな玩具にデカイ顔されるわけにはいかない。
最近は迫なんてブリキ缶まで出てくる、あんな土管は砲とは呼べない。
さあ行け砲兵!大砲は軍の中枢、陸軍の背骨!敵に連隊砲兵ココにありと思い知らしてやれ!
塹壕で不眠で戦う兵たちにも限界が近づいてきた。
「タマ!タマ!」
「弾薬ナシ!!」
「くそ!敵兵の動きが明らかに悪くなってきた、だが弾が無いとは、輜重の連中何やってんだ。」
「手榴弾~!!」
小隊の三名が叫ぶと目の前に小隊最後の手榴弾を投擲する。壕に伏せると順次爆発音が三回。
数え終わると壕から身を乗り出し。
手榴弾に耐えて立っている敵兵に射撃を加える。連射の間隔を長めに取り。弾の消費を抑えるのは情けない。
「だ~い二小隊!第二小隊!小隊長殿~!!」
「おう!ココだ!!」
「弾薬を持ってきました!!」
四人の輜重兵が木箱を引っ張って走ってきた。
「おう!!良く着た。軍曹、兵に配れ」
「それと、コレを使って下さい」
「何だサイダーか、気が利くな」
「いえ!火炎瓶です、照明弾の変わりに使用せよ!とのコトです。ソレと弾薬補給は後一回有るか無いか解りません。」
「何だと!手榴弾の補給は無いのか?」
「ありません。」
「解った戻れ!!」
別の壕で火炎瓶を使用したのか
敵兵が松明の様に燃え上がる。その火が他の敵兵にも引火しているようだった。
火炎瓶の炎により敵兵の前進が滞り、火炎の隙間の進む敵兵の姿を晒した。
こりゃあいい、弾も限りが在るこの状況で、敵の正面を減らしてくれる。
これならマダやれる。
弾が無くなった時は、いよいよ覚悟を決めるか。
出征記念に父からもらった先祖伝来の刀を設えた軍刀を見た。
次回、(´・ω・`)実はこんなに長い話になると思ってなかったので終わらせるよ。