表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

ある、二年兵の話。

我が連隊は友軍とは離れた平地の丘に野営地を置いた。


連隊の集合に手間を喰い、即席のタコツボ特火点トーチカ、対人障害を設えた即席陣地を設営。

水、薪、便所を確保すると隠蔽した穴で飯を焚き。缶詰メと乾燥味噌で遅い夕食を取ると。もはや深夜と呼べる時間となってしまった。

それでも歩哨を立て、落伍兵の帰還用の目印、篝火を焚いた、十字火線上なので、敵敗残兵の夜襲が在っても”飛んで火に入る夏の虫”である。



歩哨に立つ二年兵は一人、暗闇の中に敵を見つけ出さんと荒野に立っていた。


うちの小隊が飯炊き、タコツボ作りを免除されたので一年兵が『こりゃ楽だ』笑っていたが、もしやと思っていたらうちの小隊が夜番だった。

『日の落ちる前に装備の点検整備せよ』と命令を受けた時点で貧乏くじ決定だったが命令は絶対である。

手際のよい古参は素早く整備を終わらせ、タコツボ掘る兵を尻目に昼寝を決め込んでいた、こうなる事は解っていたのである。

今頃、他の小隊連中は毛布に包まり高いびきだろう。他の夜番小隊と共に交代時間まで不眠の番だ。


無論、一人ではないのだがお互いの視界に入っていると言うだけで、敵が何処を攻撃しようと運の無いヤツは戦死公報一枚で終わりである。

一人で歩哨に立つと、何時もは憎い”お犬様(伍長待遇)”のありがたみが解る。

軍用犬殿は気難しいのも居たが頼りになる、同じ伍長殿にんげんに比べれば幾分話の解るヤツで愛嬌もある。


ぼんやりと暗闇を見つめていると何か動くものがあった。

「タレカ!!」

低い声で誰何すると返答は無い。ゆっくりこちらに向かってくる様だ、

「竹!。竹!」

あらかじめ決められていた合言葉ふちょうにも反応しない。銃剣の装着済みの歩兵銃の遊底を操作し弾を装填、構える。

周囲を警戒するが、他の歩哨もこちらの異常に気がつたのか周囲を警戒しながら装備の点検を始めたようだ。

影から、かなり大きい人型である。万が一、友軍かも知れないと警告射撃を思い立つ。足元を狙おうとしたところ。


ゆっくり進む人影は篝火に照らされ、敵兵の姿が現れた。

「敵!敗残兵!!止まれ!!動くな!!」

負傷して投降しようとしているのか不明だがこちらの呼びかけに応じようとしない。何事も無いように歩いてくる。

「くそっ!!」

銃把を握り発砲。足に当たり血飛沫が飛ぶが構わず歩いてくる。

「動くな!!撃つぞ!両手を上げて投降せよ」

遊底を操作しながら叫ぶが、聞こえない様子なので意を決して頭部に発砲。

敵兵は脳漿が飛び散り後ろに倒れた。


「くそっ!何考えてやがる!!」

悪態をついて周囲を見渡すと他の歩哨の動きがおかしい。

前方に複数の何かが居るようだ。


発砲音を聞きつけ後ろの壕の中が騒がしくなる。


「敵襲!!敵襲!!」

「照明弾上げろ!」

「総員起し!!ラッパ兵!総員起し!!」


一瞬で明るくなった平野で二年兵が見たものは。

荒野の敵兵の骸が起き出し。ぞろぞろとコチラに向かってゆっくりと進攻してくる光景であった。


次回、(´・ω・`)ウホッ!イイ歩哨!もう、おっさんだけでイイよね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ