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明かりが灯る  作者: Spark
15/18

第十五話 私に見えたもの

 私は車である場所へ向かっていた。その場所は先ほど警察へ連絡をし、無理矢理聞いた場所だった。

 レベッカの元へ向かっていたのだ。私は鼓動が激しくなるのを必死に押さえつつシートベルトを握り締める。うちある車で行きましょうと言ってくれたランディを横目に、私は窓の外をジッと見据えていた。

「・・・ケビンに一体何があったんでしょうか」

ランディが不意に口走る。私は彼に顔を向けることなく「ええ」とだけ答えた。


 サイドボードに手を触れた瞬間、頭に激痛が走ったのを覚えている。

 さっきまでいたブラウン家の居間で男性が一人手紙を読んでいる、と突然彼はそれを握りつぶした。ものすごい形相で辺りを見回している。

「誰が・・・誰が!」

それから彼はソファに拳を思い切り、何度もうちつけていた。


 「ケビンは何か隠しているわ、それは間違いないの」

「ちょっと、まだ意味が理解できないのですが・・・」

私は透視を終えると、真っ先に2階へ駆け上がった。そして刑事に病院へ行くと伝え、ランディを連れ出して家を飛び出し現在に至る。今の現状を理解できていない彼だったが、私の手が震えているのを見ると、「僕が運転をしますから」と運転席へ乗り込んでくれた。

「もしかしたら、ケビンがスーザンと、ウィルさんを撃った?」

「かもしれないってだけだけど」

私はそれだけ言うと、無言を貫いた。なぜ私がランディを連れて来たのか、正直自分でもわからない。ただ、なんとなく。そうなんとなく。

 レベッカのいるホテルへもうすぐ到着ますと言われた頃、ランディの携帯電話が鳴った。彼は「すいません」と言うと、車を路肩へ止めた。できれば急いでもらいたいが、彼女のいるホテルまでの地図が頭に入っていない私は、待っていることしかできない。ランディが車を降り、電話に出た。

 いちいち車を降りなくてもと思ったが、神経質そうな彼のことだ、仕方のないことかもしれない。私は暇を持て余し、おもむろにダッシュボードを開けた。サングラスが一つ入っている。そしてそれを手に取った。


 「うわぁぁあ!」

男性の叫び声が聞こえてきた。そして急ブレーキ音。車の外で女性が倒れている、全く動く素振りを見せない。後部座席からエディが叫ぶ。

「何を・・・おい!大丈夫か!」

そう言いながら車を降りたエディは、女性の肩を揺さぶる・・・が彼女は首のすわっていない赤ん坊のようにされるがままになっていた。

「なんてことだ・・・」

女性を地面にゆっくりと置いたエディが車へ戻った。

「なんてことを・・・け、ケビン!?お前が、お前が運転してたのか!」

エディの視線の先には、私が今握り締めているサングラスをかけたケビンが目を泳がせていた。


 「ランディ!!」

私は助手席から大声を張り上げた。驚いた彼は急いで運転席のドアを開ける。

「どうし、どうしました!?」

「乗って!」

「え?」

「いいから早く!」

「はい!?」

ランディは私の凄みに負けたのか、車に乗り込みエンジンを掛け走り出した。私は真っ直ぐ前だけを見ていた。

「何かあったんですか?」

「このサングラス、ケビンの物よね?」

運転中のランディが横目でチラリとそれを見た。そして軽く頷く。

「ええ、彼の気に入っているものですけど・・・」

なぜ今こんな話を始めたのか疑問に思っているだろう。だが、これはとても重要なことだ。

「5年前、事故を起こしたのはケビンよ」

「え?」

唐突にそんな話をされたランディは急ブレーキをかった。私は前に思い切り仰け反る。胸にめり込んだシートベルトを掴み、私は彼の方へ視線を送った。

「事故?事故っていうのは・・・お義父さんが起こした、あの?」

「スティーブじゃなかったの。ケビンなのよ。・・・車、出してもらえる?」

ああとランディはアクセルを踏み込む。

「さっきの電話、警察から?」

突然話題を変えた私に怪訝な顔を浮かばせた彼だが、少し考えた後にこう切り出した。

「実は、ケビンからだったんです」

「ケビン!?ちょっと、あいつ今どこにいるのよ!」

私は運転している彼の肩を勢いよく揺すぶる。それと同時に車も蛇行運転を開始した。

「あの、それが、あなたの、声に驚いて切ってしまって」

「な?!」

なんですって!?と言おうとして私は口をつぐんだ。私のせいだ、彼を責めることはできない。

「なんて言ってたの?」

「ケビン、スーザンが死んだのを知っていたんです。それで、『もう引き返せない』って言った後・・・」

「私が怒鳴り声を上げた・・・わけ?」

「え、ええ・・・すいません」

彼が何度も頭を下げた。怒れる立場ではない私も何度も首を横に振る。そんなことをしているうち、またもランディの携帯が鳴った。

「あっケビンからです・・・」

「えっちょっと、貸して。あなたは運転に集中して」

「え?」

強引に彼から携帯電話を引ったくった私は、電話に出た。

「もしもし?」

「あ?お前、誰だ?」

「アスリーン・バルドーよ。さっきはどうも」

ハッと鼻で笑った声が聞こえる。

「よくもスーザンを殺してくれたなぁ」

「何を言っているの?」

「お前らがスーザンを殺したんだろう!!絶対に許せねぇ!」

ものすごい剣幕でそう怒鳴り散らすケビンを、私はもしかしたらスーザンが死んだせいで気でも触れてしまったのかと少し、ほんの少しだが心配してしまったが・・・今、彼はなんと言った?「お前ら」?

「ちょっと、お前らってどういう事よ!?まさかあなた!」

「あすりー・・・!」

「うるせぇ!」

鈍い音が耳に突き刺さる。今の声は、レベッカだ!

「レベッカに何かしたら承知しないわよ!」

私は電話に向かってそう叫ぶ。叫ぶことしかできない自分がとてももどかしく、憎らしかった。

「先にしてきたのはお前らだろうが!あぁいや、違うか。先にやったのはレベッカの親父だったな」

「なん、なんですって!?」

「俺はお前も許さねぇからな・・・こんな女をかばいやがって。お前も同罪だ!」

「ちょ・・・」

そして電話は切られてしまった。どうしたらいい、今いる場所を聞き出せずに切れてしまった。早くレベッカを助けないと、彼女は死んでしまうかもしれない。

「何が、どうしたんですか?」

運転しながらもランディが大声で私に質問を投げかける。

「ホテルには行かないわ!ねぇ、あなたケビンが行きそうな所、どこか知らない?」

「え・・・行きそうな所、ですか?」

ランディがう〜んと唸る。今は彼に頼るしか道はない。

「もしかしたら」

「心当たりあるの?」

「え、ええ。確信はありませんが」

「お願い!急いで!」


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