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明かりが灯る  作者: Spark
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第十話 透視をする意味

 警察署は陰気さを増していた。いつ来てもここは警官の怒鳴り声が耳につく。

「お待ちしていました」

私達を見つけたウィルが背後から現れた。突然の声に驚いた私達はものすごい形相だったのか、ウィルは少し後ずさりをした。

「あっウィル・・・おはよう」

レベッカがなんとか平静を装い、挨拶を返す。

「こちらへ」

少しの世間話もなく彼は私達を背に歩き出した。もう慣れたことだったが、冷たい印象は消えない。私達は彼の後ろ姿を無言でついていった。



 小さな部屋へ案内された私達はテーブルに置かれたナイフを見つめた。見たことがある、それは間違いなくス

ティーブの命を奪った代物だった。

「指紋の鑑定が終わったので、その報告をと思いまして」

「報告?」

「はい」

私達を呼びつけた理由はこれなのだろうか。あの時ナイフを持っていたのはエディなのだから、指紋は彼のものに間違いなんてない。

「エディ・テーラーのものと一致しました」

それを聞いたレベッカがナイフを恨めしそうに睨んだのを私は見てしまった。わかっていたことだったが、改めて言われると辛いものがある。

「それで・・・透視をお願いしたいのですが」

「え?このナイフを?」

「いえ、これではなく・・・」

そう言ったウィルは、胸ポケットから小さな星がいくつもちりばめられたキーホルダーを取り出した。

「こちらを」

「何これ、キーホルダー?」

それが何を意味するのか、私にわかるはずがなかった。

「5年前スティーブ・ブラウンが事故を起こしたとき、被害者の女性が身につけていた物です」

「その事故って、もう解決しているんでしょう?今回の事件と何か関係があるの?」

キーホルダーをテーブルへ置いたウィルは、またも胸ポケットへ手を入れ、手帳を取り出した。

「もしもエディ・テーラーが事故を起こした張本人だとしたら、今回の事件はやはり彼の犯行だったという立証につながるでしょう」

ウィルは全てを見透かしているかのような表情を見せた。エディが事故を起こした本人だとして、それを脅迫しようと企んだスティーブを殺した、筋は通っている。

「スティーブ・ブラウンが出所した後、脅迫を考えた彼はエディ・テーラーと連絡をとり、彼の店へ行くも殺害された・・・」

やはりそう考えるのは妥当だろう。そこで一旦彼は言葉を止めた。


 エディは今何を考えて警察署に留置されているのだろうか。私はふと彼の様子を知りたくなった。

「エディは何も話していないの?」

「・・・黙秘をしています」

それは自分の犯行だと証言しているのと同じだと言わんばかりに、ウィルは小さな溜め息を漏らした。

「透視を、お願いできますか」

正直言うと透視をしたいと思わなかった。何を見てしまうのか、想像もできない。

「どうしました?」

キーホルダーをじっと見ているだけの私に何を思ったのか、ウィルは手帳を持ったまま質問をしてきた。レベッカは私の方は見ずに窓の外を見ている。

「やっぱりしなくちゃいけないの?」

「できませんか」

「いえ、そういうわけじゃ」

「お願いします」

ものは考えようかもしれない。事故を起こしたのがエディでないとすれば、この事件の犯人は彼ではない、エディに動機はなくなる。

「やるわ」

私はキーホルダーに手を伸ばした。




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