プロローグ
「先輩方、ご卒業おめでとうございます」
わたし、岡本千夏は、文芸部の一員として、卒業していく先輩達に花束を送った。
「千夏っちゃん、四月から一人になるけど大丈夫?」
「大丈夫です、先輩。わたしがこの文芸部の伝統を守っていきます」
わたしは胸を張ってそう応えた。折角の先輩達の卒業に、水を差したくなかったからだ。本当は、一人ぼっちでどうやって部活をやっていこうか、物凄く不安だったのだ。
「でも、四月からは千夏が部長だな」
「新部長、ガンバレ」
先輩達が励ましてくれた。
「それじゃぁ、あたし達、クラスの皆とちょっとお茶して帰るから。後、っていうか、今後のことは、お願いね」
「大丈夫です。安心して下さい」
わたしは、精一杯の虚勢を張って、先輩達を送り出した。
「ふぅー」
彼女達を送り出して、わたしは一息ついていた。そこへ、顧問の藤岡先生がやってきた。
「千夏っちゃん、ご苦労さま。今日は頑張ったわね」
卒業式だったので、今日は濃紺のスーツを纏っている。膝丈のタイトスカートがよく似合う。これで口を開かなければ、満点の美女なんだけれどな。
「長いようで短かったわね。……そういや、来年度から文芸部の部員、千夏っちゃんだけかぁ。……知ってる? 部員、五人以上いないと、同好会に格下げになるのよ」
いきなり顧問の先生からの重大発言で、わたしは一瞬何のことか分からなかった。
「へ? 同好会に格下げって……。部と同好会って、そんなに違うんですか?」
わたしは何のことか、全然分からなかったので、先生に問い返した。
「んーとね、同好会だと、部費が下りなくなるわ。後、校外活動への参加が認められないし。文化祭でも、発言力がなくなるわね。まぁ、尤も部員一人じゃ、文集を出すのも一苦労だよねぇ」
先生は、さも他人事のように、わたしに説明してくれた。
「そんなぁ。何とかならないんですかぁ」
わたしは、そんな情けない事を口にしていた。しかし、
「何とかも何も、部員集めは千夏っちゃんの仕事でしょう。部長なんだから。まぁ、私も顧問だから、少しは手伝ってやるけどね。今のまんまじゃ、基本一人だぞ。嫌なら、頑張って部員、集めるんだな」
と、彼女の返事は冷たかった。
ひえぇぇぇんん、どしよう。わたし一人で新入生の勧誘なんて出来ないよぉ。
これは、今から部員集めをしなけりゃ間に合わないぞ。
うん。よし、頑張らなきゃ。新生文芸部のために頑張るぞ。
こうして、わたしの文芸部員集めが始まった。