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第5話 『真実の調合と心の距離』

「咲、急ぎだ」

凛の声はいつもより低く、緊張が含まれていた。

「わかりました。何が起きたのですか?」

「宮廷内で、薬草の納入ルートが不正に操作されていた。子供たちの症状と関係している可能性が高い」


「つまり……意図的に病が広がっていた?」

「可能性としては否定できない」


咲は手を握りしめ、冷静を装う。

「まずは現場の証拠を確認します」


凛がうなずく。

「君の判断に従う。手順を間違えるな」


蓮と楓と共に宮廷の倉庫に向かう。

「薬草の箱が、普段の配置と違う……」

「開けてみて」


中には劣化した薬草や、混ぜ物が紛れ込んでいた。

「これは……確かに病を悪化させる成分が混ざっています」


「犯人は……内部にいる」

「ええ、でも証拠が必要です」


咲は慎重に調合を思い描く。

「ここから安全な薬を作り、被害を最小限に抑えつつ、犯人の手掛かりを探す」


その夜、薬局に戻ると凛が待っていた。

「君の判断を見ていた。驚くべき冷静さだ」

「ありがとうございます。でも、まだ油断はできません」

「その通りだ。しかし、君がいる限り、宮廷の病も、陰謀も少しは和らぐ」


咲は目を伏せる。

「凛……ありがとうございます」

「咲、君は薬だけで人を救うのではない。心も救っている」


二人の距離が少し縮まった気がした。

咲は薬瓶を手に取り、改めて決意する。

「私は、患者を守るだけじゃなく、宮廷の闇も明らかにする。そして……」


凛は静かに頷いた。

「君となら、できる気がする」


翌日、咲は宮廷に戻り、子供たちに安全な薬を配布する。

「これで体力を回復させる。落ち着いて飲んでね」

「ありがとう!」と子供たちが笑う。


凛はそばで静かに見守る。

「薬が効いている……君の力だ」


咲は少し照れた。

「私だけじゃなく、皆で協力した結果です」


凛は微かに笑みを浮かべ、そっと手を差し伸べた。

「では、次は真実を突き止める番だ」


咲は薬瓶を握り、心を決める。

「はい。現代の知識と、この手で。絶対に、誰も傷つけない」


その夜、薬局の明かりが揺れ、香る薬の匂いは、宮廷の闇を少しずつ解きほぐしていった。

咲の新たな戦いは、まだ始まったばかりだった。

お読みいただきありがとうございました。

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