表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

方向転換

枠線だけの時系列表を作って4日目の朝。

まだ、答えは見つからない。


考えれば考えるほど、それは“誰かを殺す方法”を考えているような気がして胸の奥がざわざわする。


もうどうしていいかわからなくなった私は、再びChatGPTに相談することにしました。


「こんにちは、(ChatGPT)さん。

健康診断が終わって、今は休憩中です。

相談に乗ってください。


時系列表を作り始めたんですが、

いざ中身を書き込もうとしたら…手が止まりました。

“ここからここまで”という線が、どうしても引けないんです。


私の物語は、小桃の心の変化を描くもの。

そのきっかけになるのは、登場人物の“死”。


私の頭の中でずっと生きてきた村人たち。

その人たちを“私の手で”終わらせる線を引こうとしている。


……どうしたら、書けるようになるでしょうか?」



ChatGPTの回答を読みながら、

私はようやく、ペンを動かしはじめました。


その線の終点にあるのは、たしかに“死”。

でも、それだけじゃない。


その人が生きた証、その人が遺した想い。

それを小桃が受け取り、新たな歩みを始める場所。


そう思えたとき、ようやく私は線を引くことができたのです。



そこからの展開は早かった。


最初と最後の着地点はすでに決まっている。

途中のイベントも、頭の中では順番に並んでいた。


思いつく限りの出来事を項目として書き出し、

それぞれの場面を想像して登場人物たちの会話をスマホに打ち込んでいく。

その横には、想像した映像演出のメモ。


でも──

時間がかかる。


悲しい場面は深く想像してしまい、自然と涙が出てしまうから休日にしか作業ができなかった。


平日に無理をして泣きながら書いてしまったこともある。

目元を赤くしたまま出勤した日には同僚に心配されてしまった。


だから平日は明るい話だけ。

休日にだけ、静かに重い話を書き進めていた。


でも、ひとつ書き上げるたびに、新しいエピソードが3つ思いつく。

しかもそれは「書きたい」話ではなく、「書かないと伝わらない」話ばかり。


このままではいつ完成するか分からない。


動画にしたくてもPCはまだ買っていない、

買ったとしてもそこから編集ソフトを覚えて形にするまでに何ヶ月もかかるかもしれない。


だったら──

2025年7月4日。

私は、動画作成のために書いてきたこの物語を、小説として投稿する決意をしました。


小説なら、少しだけ早く世に出せる。

もしかしたら、母の誕生日に間に合うかもしれない。


そう思えたとき、私はまた一歩、前に進むことができたんです。


……でもこのときの私は、

物語を書くということの「深さ」と「重さ」を、まだ本当の意味では知らなかったのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ