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宙ぶらりんの部屋

作者: たぶんそれ

「先生、僕は最低な人間に育ったよ」

僕はそう言って黒い部屋の中で横たわる。

この情景を文才のある人ならなんて表すのだろう。

知るわけもない。

僕に才能などあるわけもないのだから。

先生に見られたらきっと後悔で死んでしまう。

僕は黒い部屋から飛び出した。

二輪車を漕いで必死に光に向かおうとした。


「何もなかったよ」

また、僕はそう言って黒い部屋の中で横たわっていた。

手の中の小さな世界では僕よりも幸福な人たちが和気藹々と死にたいと叫んでいる。

反吐が出る。

有象無象がこの世を支配している。

嘘もほんともあったものじゃない。

僕は筆を取った。


「気持ち悪い絵だな」

僕は黒い部屋の中で座り込んでいた。

とうとう自分が生きた意味にすらバツをつけてしまった。

まぁそんな事はどうでもいいと思いながら僕は息を吐く。

吐いた息が重く痛くのしかかる。

きっとハリネズミのようにトゲにまみれているのだろう。

僕は空を仰ぐ。


「そんな顔で見ないでくれよ」

僕は黒い部屋の中で外を眺めていた。

空が僕を嘲笑っている。

突き抜けるような晴天がまるで僕を置いていくかのように街の人々と走っていく。

僕は51秒数えた。

待てと言われたから待ってやったのだ。

でも彼らもうは居ない。

僕を置いていって何処かへ行ってしまった。

僕は笑顔を作った。


「きみの悪い顔だ」

僕は黒い部屋の中で鏡を見ていた。

鏡に映ったそれは汚らしいなにかだった。

僕は息を吸った。

灰色の空気を肺に溜め込んだ。

そうして音を立てて逃げた。

どこかへどこかへ何かを求めて走った、まともに動かない足を引きずりながら走った。

僕は


「動かなかった」

僕は黒い部屋の中で死んでしまった。

何も無い。

本当に永遠の孤独にたどり着いてしまった。

どうしよう、このままじゃ狂ってしまう、いや元々狂っているか。

そんなことを考える時間が有り余るほどの永遠に囚われた。

声を出してもその音はどこかへ消えていってしまう。

歩いたとてどこまで言っても暗闇だ。

僕は目を閉じた。


「…そんなことか」

僕は黒い部屋で目覚めた。


僕は、

僕はどこまで続いてゆくのだろう

読んでくださってありがとうございます。


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