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第五話『街並み』


 それからしばらくフェイルを背に乗せて街道を駆けるマクシムの尻尾を追いかけて走り続けた。


 走り続けるうちに景色は変わり、俺は今とても大きな壁を見上げている。


 外壁の外側には底が見えないくらいに深さがある川が流れて居るようで、川の水を水路で引き入れた畑が続いている。


 のどかな農地を川に沿って進むと、外界と内部を繋ぐ門が見えてきた。


 頑丈そうな木製の橋が川にかけられており、行商人の馬車や街への入場手続きを待つ人々の列が続いている。


「うげっーあれに並ぶのか?マクシム……」


「安心しろ俺たちにはフェイルが付いてる」


 不満を漏らした俺にマクシムは誇るように告げると、長い長い列の順番を飛ばして門を守る兵士の近くへ進んでいった。


 フェイルの姿を確認するやいなや、兵士が走り寄ってきて列の門とは違う扉からマクシムを通してしまったのだ。


「まじかよ」


「早く来いよ、置いてくぞ?」


 権力者なのは知っていたが、兵士が入場検査もせずに門を通すほどだとは思っていなかったので驚きしかない。


「俺が考えているよりもフェイルは偉いやつなんだろうか……」


 そんなことをぼんやりと考えながら、マクシムのでかい尻の後ろに続いて門をくぐり抜けると、そこには前世で好きだったファンタジー感溢れる街並みが広がっていた。


 レンガと木材を組み合わせた歴史を感じさせる独特な建築物をみれば、この街は地震等の災害に見舞われる事が少ないのかもしれない。


 建物と建物の間には十分な広さが確保されており、もし火災が起きても隣に面した家に燃え移るまでには時間が稼げそうだ。


 流石に道は土のままだが、ある程度の道幅と雨水を排水するための側溝が道の両脇に整備されているようで、これならば雨の日でも多少走りやすいかもしれない。


 まぁ、馬車の車輪で出来た溝に足を取られないようにすればの話だが、どうせなら地面にもレンガを敷き詰めて欲しいと感じてしまう。


 きっとアスファルトに覆われた道路を知っているからだろうな。


 どうやら外壁の外側から見えていた景色以上に、この街は賑わっているらしい。


 門の入り口付近は商人などが多いのか、街から街へ、国すら越えて商売する旅商人の馬車や買い付けの街商人の店主らで賑わいを見せている。


 門を離れるにつれて次第に子どもたちが増えていく。


 マキシムやフェイルを見知っているのか、ちぎれるんじゃないかと心配になるほど両手を振り回し、フェイルが軽く手を上げると嬉しそうに駆け出していった。


 どうやらこの街は門の近くに商家、外壁沿いに職人街が纏められているらしく、中心に向かうにつれて住人達の棲家が建設されているようだ。


 待ちの面積に対して住人達が多いような気がしていたが、どうやら3階建ての集合住宅のような建物で暮らしているようだ。


 何棟かの集合住宅の住人達で共用するのか、その中央には屋根が掛かった井戸が設置されているらしく、水を汲みながら楽しげに談笑する女性達の姿が遠目に確認できる。


 建物と建物を繋ぐように幾重にも張り巡らされたロープには、井戸から少し離れた場所で行われた洗濯物がまるで旗のように吊るされて風にはためいている。

 

 住宅地を更に奥に進むと建物の外観が一層華やかになっていった。


 集合住宅はよく言えば質素堅実だったが、こちらは同じ三階建でも柱や扉などに彫刻か施されていたり、壁や屋根に色が付いてカラフルだ。


 窓辺には造り付けの花壇があり、季節の花が植えられているのが綺麗に咲き誇っている。


 付近の住人達が着ている服や旅商人たちの馬車とは違う箱馬車を見れば、このあたりに住んでいるのは高所得者層であろうことが容易に推測できるってもんだ。


 周りからマキシムに向けられる熱い牝馬の視線をものともせずに、迷いなくマキシマが奥へ奥へと進んでいく。


「さぁ見えてきたぞ! あれがフェイルの巣だ」


 マキシマに教えられて視線を向ければ、これまで 見てきた住宅とは比べものにならない豪奢な邸宅が姿を現した。


 敷地内に侵入できないようにレンガと金属で出来た外壁が設置されており、門番が守る重そうな扉が目の前に現れた。


「うわぁ~、大きいなぁ」


「このあたりの巣の中じゃわりとでかい巣だよ。まぁ奥の巣に比べればまだ小さいけどな」


「奥の巣?」


「あぁ、アレだアレ」


 顎で促され視線を向ければ、そこには歴史を感じさせる西洋風の城が聳え建っている。


「アレがフェイル達のボスの巣だな、何度かフェイルの伴で行ったことがあるが、寝床は綺麗だぞ? ちっとばかし狭いがな」


「いやそれは単にマキシ厶がでかいだけだと思うよ?」


 ここまで来る間にすれ違った馬たちはマキシマに比べて雄でもかなり小柄と言うしかない体格だった。


 多分黒虹馬ではない種類の馬なのだろう。


 門番が扉を開けてフェイルを敷地内へ通すとまたしばらく道が続き、整然と管理させた庭園を抜けていく。


 屋敷の玄関の前にずらりと並んだ揃いのお仕着せに出迎えられ、鞍から降りたフェイルがマキシムを労うように撫でる。


 マキシムはマキシムで、慣れた様子でフェイルの肩に顔を寄せると、マキシマの手綱がフェイルの側へと歩み寄っていた壮年の男に手渡された。


『ランゴ、事前に連絡しておいた黒虹馬の仔馬だ、世話を頼む』


『お任せください』 


「さて、仕事終わりだ! これでしばらく休めるな」


『さぁマキシム、それと仔馬よ。こっちだ』


 清潔な藁が敷き詰められて、美味しそうな水と新鮮な生草が準備された広く快適な馬房に入れられる。


 どうやらマキシムの隣にしてもらえたらしく、慣れない場所に不安を感じていた俺は安堵の息をついた。


『今日は農村から立派なニンジンを仕入れてあるから持ってくるから少し休んでおきなさい』


 何かを告げて去っていく世話人を見送れば、ドサリとマキシムが床へと座り大きな欠伸をして伸びていた。


「ほらほら俺が近くにいるんだ、少し寝ておけ、仔馬の身体で俺に付いてきたんだ疲れただろう?」


「そうですね、少し疲れました」


 気を張っていたのだろうか、マキシムの他に馬の姿も無く、心地よい風と街の小さな喧騒、干し藁のいい香りに強張りが抜けていく。


 床に座り込めば瞼が重くてもう駄目だった。


「おやすまボウズ」


 


 


 


 

  

  

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