表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

第1話 雨天の旅立ち

運のない、かわいそうな娘だ。

クレッシェンド家の執事長であるジェームズは、馬車に揺られながら正面に座る小柄な少女を憐れみを持って見つめた。長旅で疲れたのだろうか、少女は先ほどから馬車の窓から移りゆく景色をぼんやりと見つめている。窓の外の天気はあまりよくないため、窓には娘の小さな顔がうつっている。短い髪は可憐なライラック色。小さな花のような容姿の娘だ。これから少女は、今まで身を投じたことのない過酷な環境に身を置くのだ。そこから逃げ出したメイドはげっそりとやつれ、涙を流しあんなに怖い場所にはもう二度と行きたくないと言っていた。この少女がそのような苦境に耐えられるはずがないのに、執事にはもうどうすることもできないのだった。


「シオン」


話かけると少女はぴょんと子ウサギのようにその場で身を揺らした。


「は、はいっ」


ぱっちりとしたピンクダイアモンド色の瞳がじっと彼を見つめる。

この際立って可憐な容姿がシオンをこのいばらの道へ引きずり込んだと思うとジェームズは暗い気持ちになった。



「いいか、君がこれから仕えるクロエお嬢様は、クレッシェンド家の令嬢としての誇りに満ちたとても素晴らしいお方だ。ご病気をされて休学されて以来、少し不安定なところもあるが、誠実に仕えれば、必ず、お前のことも信頼してくださるはずだ。」


「もちろんです。ニーナ姉さんが、お嬢様に仕えたようにわたしも精一杯頑張ります!」



シオンの健気な言葉と、無邪気な笑顔に執事長は涙をこらえきれず、思わずぐっと唇を噛んだ。そして、少し顔を背け震える声で言った。


「1年、あと1年だけだ・・・すまない、シオン」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ