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第二形態

「ドラグーンフレア!!」


 ルビの目の前に現れた魔法陣から龍の形を模した炎が噴き上がり小太陽を補助、いや、融合して形勢を崩す。

ルビは同時に複数の呪文を使いこなしていた。


「(一ターン二回攻撃かよ)」


 四つの熱攻撃が入り乱れた空間は爆破炎上、体を焼かれながらも竜輝が担ぎ助けてくれなかったら凛一は即死だったかもしれないが、竜輝が凛一を助けるのもルビの計算通りだった。


「悪いわね竜輝、でも貴方のスピードなら凛ちゃんを助けられるのは分かってたわ」


 あまりの熱量で床も天井も溶けて部屋の上下に同じクレーターが出来た事に眉一つ動かさないルビに竜輝は皮肉を言う気も起きず、凛一は甘かったと自省した。


 最強の四天王ルビナードといえどこの部屋までの扉を破壊し、自分達を回復して消耗しこちらは万全の状態の四人、それならば勝てると思ったが、第二形態がここまで強いとは思ってもみなかった。


 と、そこまで思ったところで気付いた。


「炎が……大きくなっている?」


 ルビナードの両肩と背中の炎が今は人一人を包みそうなほど大きく、強く燃えている。


「さすが凛ちゃん、気付いたようね、私達の二つ名には由来があってね、水のカイナちゃんは湯水のように召喚する事から、風のマリちゃんは風のように空を舞いながら戦う事から、土のレーネちゃんは地面から武器を召喚したり地面と一体化したような力強い攻撃をする事から、そして私が炎のと呼ばれるのは炎属性の呪文を使うからではなく、炎が燃えるように徐々に第二形態になる事がその由来よ、時間がかかる代わりに完成した時の力は凄いのよ、だけどもう十分」


 瞬きをする間にルビがエリスに近づき蹴り飛ばしていた。


『くそ!』

「テラブリザード! テラクエイク!」


 吹雪を含んだ青白い光に飲み込まれて凍りついたアークを床から飛び出した岩が衝突しながら絡みつき、アークを完全に拘束した。


「炎属性しか使えないなんて誰も言ってないでしょ?」


 楽しそうに笑うルビに竜輝とエリスが攻めかかりルビは右手で操る剣と左手で二人の攻撃をさばいて互角に戦い、それでも徐々にルビが優勢になっていく。


「ほらほら、早く倒さないとどんどん強くなるわよ」


 肩と背中の炎がさらに大きくなり、ついにルビは二人を壁まで弾き飛ばしてしまった。


 アークが一切動けない今、凛一にできる事は一つだった。


「ルビさん、少し確認したいことがあるんですけどいいですか?」

「あら何? 凛ちゃんなら時間稼ぎに付き合ってあげるわよ」


「(バレバレかよ)オレこっちの世界に飛ばされてからリンドバルムの王様から魔族の事聞いたんですけど、ルビさんが攻めてくる兵士は一人だけ残してあとは全員皆殺し、そして殺した兵士の骨を町にバラまいているって本当ですか?」


「本当よ」


「なんでそんな事するんですか?」


「だって魔族の恐ろしさを伝えるのには語り部が必要でしょ? 人間達には私達魔族と戦う事の無意味さを知ってもらわないと、いつまでも勘違いした人間達が攻めてくると鬱陶しいのよ、骨をバラまくのも同じ、まったく、どこかの誰かさんが先代魔王様を殺したせいで人間でも頑張れば魔族に勝てるなんていう幻想を抱く(やから)が増えて困るわ」


「(そうか……やっぱりこの人…………)」


 心の中の違和感が晴れて、凛一は胸を撫で下ろした。


「時間稼ぎは終わり? ならそろそろトドメを――」


 背後からの崩壊音にルビが振りかえると、竜輝は拳でアークを飲み込む岩を砕き、エリスは炎の呪文で凍った機体を解凍している。


 凛一は恐れる事なくルビの真横を通り過ぎて三人の下に駆けより作戦を伝える。


『「「了解!」」』


「作戦タイムは終わったかしら?」


「ああ、そして俺が相手だ!」


 一人で飛び出した竜輝とルビが超高速の近接戦闘を繰り広げるが竜輝はルビの攻撃をかわし続けるばかりで攻撃は決定打に欠ける速いだけの小技だけ、ルビの攻撃を感じて避ける事に神経を集中させた防戦は成功し、エリスが構えるセラフブレードにはみるみる魔力が溜まっていく。


 解凍が完全でないアークもなんとか背中の弾薬射出口を開き、発射の準備を整えられた。


『準備完了だ』


「あたしもいつでもいけるわよ」


「跳べ竜輝!!」


「承知した!」


 今までルビの攻撃にかわすことに専念してきた竜輝が突然天井に向かって跳び上がり、その前にアークから放たれた煙幕弾がルビの足元に直撃、ルビと竜輝は黒煙に包まれて二人は視界を失い、それでもルビは竜輝のいる天井へと跳び上がる。


 今や接近戦でも竜輝に負ける気がしない自信から視界が利かない状態でも迷わず竜輝を追ったのだが、全ては凛一の読み通りだった。


「!!!」


 煙から抜けだした瞬間、ルビは莫大な魔力の気配にエリスのほうを向くとそこには、


「シャイニング・カリバーッ!!!」


 エリスが振り下ろした魔王殺しの剣が生み出した極大の光の束がルビ目掛けて一直線に飛んで行く。


 天井まで跳んだ竜輝は天井を使った三角跳びで危険区域から離脱するがルビは間に合わない、すぐに込められるだけの魔力を剣に込めて迎え撃つが魔力を込める時間が短すぎて勇者の放った莫大な閃光に飲み込まれ四天王リーダーは悲鳴をあげた。


「やべ」


 凛一は慌てて走り、天井から無抵抗に落下するルビをキャッチ、ちゃんと生きている事を確認してから凛一は座り込む。


「よかったー」


 薄目を開けてその安堵の表情を見たルビは安心して気を失った。

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