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四天王を亀甲縛り

 凛一の頭はかつてない速度で回転し、エリスを論破しようと画策した。


「ほら! 四天王なら残りのエグゾディアスの欠片の詳しい場所だって知っているだろうしそもそも四天王は一番魔王に近い存在、なら魔王の情報だって手に入る。

 取り調べもしないでさっさと殺しちゃうなんて軍事的見地から言っても間違っていると思うぞ」


「でもこいつらの強さ知っているでしょ? 暴れたらどうするのよ?」


 かかった! と凛一は胸の内で笑った。


「その時は美少女勇者天使のエリス・グランベールがぱぱっと倒しちゃうだろ?」

「えっ?」


 エリスの肩がピクッと反応した。


「なんせエリスは先代魔王を見事倒した伝説の超勇者ロトギスとその大守護天使エリエルの一人娘だもんな、四天王ごとき雑魚なんて片手でちょちょいのちょいだよな?」

「え、えーっと」


「ましてこいつらは先代四天王の跡を娘だから継いだだけの未熟者、両親から勇者の戦いを手ほどきされたエリス様が本気を出せば楽勝だろ? それを前回や今回も手え抜いちゃって、瞬殺じゃ敵がかわいそうっていう慈悲の心だよな、敵にも情けをかけるなんてエリスちゃんサイコー、さっすが最強の勇者天使様! ひゅーひゅー♪」


 エリスは無言のままに剣を収め、


「あったりまえじゃーん♪」


 満開の笑みでぐっと親指を立てた。


「いいわ、こいつらが暴れたらこの地上最強の勇者天使エリス様がぱぱーっとやっつけてやるわ、じゃあこいつら連行するから今は殺さないでおきましょう」

「いやぁ、流石勇者様は話しがわかりますなぁ(計画通り)」


 こうしておバカ勇者エリスは一介の学生の計略にまんまとはまり、魔族四天王の命を助けた。


 もしも本当にRPGゲームのようにパラメーターがあったならエリスの知力は5しかないだろう。


「話はついたな、では動けないよう両手足の骨を折っておくか?」

「ヘイ竜輝! 武人の心はどこに捨てた!!」


 凛一の鋭いツッコミに、だが竜輝は眉根をよせた。


「当然意識の無い少女を手にかけるのは武の道に反するが、これは戦争であり軍事的活動というのであれば捕虜が逃げられぬよう手足を傷つけ国の牢屋まで運ぶのはそう悪い事ではないだろう、それに何も命を奪うわけではない」


「動けないようにすればいいんだろ? そんなの簡単だ、エリス、ロープ貸してくれ」


 エリスは「いいけどどうするの?」と首を傾げながら腰のアイテム袋からロープを取りだす。


 エリスのアイテム袋は特別な術式が組み込まれていて中には蔵一つ分ほどのアイテムを収容できるらしく、ロープは何かと便利だからと城を旅立つ前に凛一が入れておいた。


「奥義! 亀甲縛りバージョンスリー!!」


 三本のロープを持つ凛一の手が眼にも止まらぬ速度で動き、彼の手が通り過ぎた場所は漏れなくロープの縛りが完成してた。


 三秒もかからず凛一の手が止まった時、四天王三人娘の体には完璧な亀甲縛りが完成されていてなんとも言えぬ淫猥(いんわい)な雰囲気を醸し出している。


 正常な男ならば誰もが一目でイケナイ気持ちになってしまうだろう。


 元からビキニ並の露出度だったマリはロープがやわ肌に食い込み、グラマーなレーネは巨乳が際立ちセクシーな格好になって、幼女のカイナからは言いようのない背徳感が感じられる。



 桜崎凛一の四八の主人公補正(スキル)

 亀甲縛り師:凛一は八種類の亀甲縛りを使いわけ、縛るのには一秒もかからないのだ。



『凛一!! なんだその縛り方は!!? 軍事訓練であらゆる捕縛術を知っているがオレ様はそんなもの知らねーぞ!!?』


 アークの中でセイルが叫ぶ、その危機迫る勢いはマイク越しでも十二分に伝わってきた。


「これはオレの母国に古来より伝わる秘儀にオレが改良を加えたものだ、ほら起きろ」


 凛一が三人の肩を揺すると三人は目を覚まし、そして自分達の体に驚く。


「何よこれ!?」

「な、縄で縛ってるみたいだけどボクこんなの知らないよ」

「それになんでしょう、この胸の奥から湧き上がる感情は……」

「ふふふ、それはオレが施した最強の緊縛術(きんばくじゅつ)、これでもう逃げられないぜ」


 凛一の説明に三人は理解不能の表情を示して息をつく。


「あのねえ、こんななんの術式も施されていないただの縄で魔族を縛っておけるわけがないで……ァ」


 自由を奪われる四肢に力を入れた途端、マリの顔が赤くなり、小さな声が漏れた。


「アンタこれ……」


「その通り、この亀甲縛りバージョンスリーは相手の四肢の自由を奪うだけではなく少しでも力を入れると縄がイケナイ場所に食い込み全身の筋肉が弛緩してしまうのだ。まして縄が切れるほどの力を出すなんて絶対に無理無理」


「ば、馬鹿にするな! こんなの魔族最強戦士の精神力なら……」


 首を振って否定する凛一を悔しそうに睨みつけて、今度はレーネがチャレンジして、丈夫な縄が切れるそうなほどの力で縄がレーネに食い込んだ。


「~~~~~~~ッッッッッ!!!??」


 レーネが声にならない悲鳴を上げて痙攣する。


 顔はゆでダコのように赤く額からは汗をかいている。目にいっぱいの涙を溜めて、迷子の子供のような表情で凛一を見上げる。


「(か、かわいい!)」


「お兄さま、できればこの縛り方を伝授していただきだいのですが」


 研究熱心なカイナの言葉でマリとレーネもハッとして妄想を膨らませる。


「凛一! アタシにもこの縛り方教えなさい!」

「ボクにも是非!」

「レーネはノーマルじゃなかったのですか?」

「いや、妹のマリは別腹だからさ」


 四天王の世界は奥が深かった。


「じゃあオレらはルビさんの後追うからみんなはここで待っててくれ、大丈夫、悪いようにはしないからさ」


 そう優しく微笑みかけてから凛一は走り、エリスと竜輝も急いで後を追った。


 だが、アークに乗ったセイルだけはすぐには追わず、亀甲縛り姿の美少女三人を眺めながら気を失っている間の出来事を簡潔に話した。


 土埃を立てないようにゆっくりと歩いて離れてから走っていくアークが見えなくなると、三人は今まで以上に顔を赤くしながら凛一の顔を思い出していた。


「凛一ってズルイわよね」

「ズルイのです」

「でもボクはそこが好き」


 三人は亀甲縛り姿のまま顔を突き合わせ、うんうんと頷いた。

 フラグ生産量世界一、それこそがハーレム系ラブコメ主人公の実力であった。


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