巨大ロボットSF主人公 セイル・ファンバー2
「お前戦場で育ったって本当か?」
放課後の教室で質問をしてきたのはクラスメイトの中で妙に偉そうな態度を取る金髪の男子で、名前をロバスという、周囲には取り巻きの連中が何人もいた。
傭兵集団ブレイブはどこの国にも属さないが、親密にしている程度の国はある。
ここはその国の軍事学校らしい。
「お前その年で字の読み書きも満足にできない上に数も一〇〇までしか数えられないって幼稚園児かよ」
セイルを嘲笑し、見下し、笑い物にするロバスは親が貴族で代々軍隊の高官を輩出してきた、という自慢話を朝から延々としていた。
だがそんなクラスメイトにもセイルは無感動だった。
「字が読めなくても引き金は引けるし、一〇〇まで数えられれば弾数数えるのにも苦労しないからな」
「んだとテメ……!?」
その態度が気に喰わなかったらしい、ロバスはセイルの髪を掴もうと手を伸ばすが、それより先にセイルの手で床に叩き伏せられ、仰向けになった顔の両目には二本の指が向けられていた。
「先に手を出したのはお前だからな」
セイルの顔には表情が無かった。
金属から削り出したような顔は生きているだけに生々しくて、言い知れぬ不気味さを感じさせる。
「や、やめっ……」
エリートの威厳を失った。否、ロバスにエリートの威厳を失わせるほどの転校生セイルに取り巻き連中も恐怖で動けずロバスを助けようとする者はいない。
所詮は軍人の息子というだけで軍事学校に通い、教科書や画面越しの映像でしか戦争を知らない素人のクソガキであり、物心ついた頃から銃を手に人殺しに明け暮れていたセイルとは比べるべくもなかったのだ。
「アホッ!」
スパンッ! といい音を立ててセイルの後頭部を誰かが叩いた。
殺気も何も無い一撃にセイルが振り向くと釣り目でショートカットの気の強そうな女の子が立っていた。
「アンタはクラスメイトに何しくさってんのよ! ちょっとは常識ってもんを持ちなさいよね!」
「お前達の常識ってなんだ? そこの他人の威を借りるしかできないクズを敬う事か?」
「ロバスなんていう親の七光りのマザコンチキン野郎なんて敬う必要ないわ!」
「な! アルアてめぶげらっ!!」
「いいからアンタは寝てろ!!」
今セイルの暴力を注意したのはどこの誰だったか、きっとアルアの頭には入ってないだろう。
「じゃあセイル! アンタには学級委員長のアタシが骨の髄まで常識って奴を叩きこんであげるわ、さあ授業も終わった事だしついてきなさい!」
アルアはセイルの頭をむんずと掴むとそのままズルズルと引きずりながら教室を出て行った。
あまりの理不尽さと迫力に哀れセイルは抵抗もできずに拉致されていった。




