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女勇者VS武芸者

「………………」


 桜崎鈴一は茫然とした。

 これは白昼夢だろうか?

 目の前の光景からは少しも日常の現実(リアル)を感じない。

 ビデオの早回しよりもなお速い、あまりに速過ぎる超高速の戦いがソコにはあった。

 片や金髪のコスプレ美少女、片や和装の筋肉野郎、だがこの戦いの凄まじさは一体なんだろうか?


「ハァアアアアアアアアアアアアア!!」

雄雄雄雄雄雄雄雄雄(おおおおおおおおお)ぉおおおおお!!」


 エリスの剣が空ぶった一撃で何故か遠くの大木が薙ぎ倒される。


 竜輝の拳一発で大地が抉れてクレーターが作られる。


 二人の剣と拳、拳と盾の激突で周囲に衝撃が巻き起こり木々が地震でも起こったように揺れる。


 目にも止まらぬ音速バトルの余波でただでさえ木々の無い開けた場所が草も生えぬ不毛の大地に変わり、周囲の木々が薙ぎ倒されこの閑散とした面積が雪だるま式に増えている。


 たかだか二人の人間が戦うだけでここまでの自然破壊がされるものだろうか? 業者の森林伐採が可愛く見えてくる。


 二人の格好から何かのイベントかとも思ったが最新の特撮技術でもこんなフザけた光景を作るのは無理だろう。


 それとも最近の立体映像や3Dは質量を持っているのだろうか?


 ピチャ


「!?」


 凛一が頬に手で触れると赤い液体が着いている。血だ。


 見ればエリスは口の端から、竜輝は右腕から血が流れている。


 血ノリである可能性なんて考えない、何かの特撮モノの撮影かもしれないとか、そんな要素は頭から消えて、凛一は衝動的に駆けていた。


 この森に来てから信じられないことばかりだが目の前のたった一つの現実(リアル)は変わらない。


「ちょっと待てコルァあああああああ!!」


 凛一の大声に初めて第三者の存在を知り、凛一が二人の間に割って入ると二人はあっさりと殺意を収めて一歩下がった。


「てめえ男の分際で女の顔殴ってんじゃねえぞ!!」


 突然現れた少年の正論に竜輝は戸惑いつつも反論をしようとして、だが凛一に遮られる。


「おにゃの子殴る時はピコハンかハリセンはい復唱!」

「お、おにゃの子? 殴る時は彦はんか針千?」


 眉根を寄せる竜輝を無視してクルッとターン、凛一はエリスにビシッと人差し指を突き立てる。


「そしてお前も女の子が剣持って暴れるな!」

「はぁ? あのねえ、あたしは勇者ロトギスの娘で魔王ノアルエイドを倒す使命があるんだから、性別は関係ないのよ」

「関係大アリなんだよ!! 何がロトギスだドラゴンがクエストしながらドルアーガしたような設定しやがって! 女の子は魔王の城で勇者か赤い帽子を被ったヒゲオヤジの助けを待っていろ!」

「言ってることが半分以上理解不能よ! 何あんた、まさかあんたも魔族の手先なの!?」

「オレは普通の学生だ!」


 ズシン ズシン ズシン

 森の奥から聞こえる巨大な足音や木を踏み潰す音に三人は思わず同じ方向を見る。


「おいおいなんの足音だよ……」

「ベヒーモス? まさかドラゴン?」

「象……ではないようだな」

「どれも違うっぽいけど、さてさて鬼が出るか蛇出るか」

 

 巨大な顔が出てきた。


 正確には巨大なロボットの金属の顔だ。

 メリメリと目の前の木を巨大な腕でどけて森の中から全長一〇メートルほどの鋼の巨人、文字通り巨大ロボットが姿を現した。


「ガンダム?」

『ガンダム? 違う違う、コレはアークだって、今どきアークも知らないなんて田舎もんだなぁ』


 鋼の巨人が喋った。


 手も足も腰も胸も何もかもが規格外の大きさを持つ巨人にしては随分と軽い声だったが、巨人がというよりもマイク越しにパイロットが喋ったのだろう。

巨大ロボ・アークはヒザをついてかがむと胸部が左右に開いて中から黒いパイロットスーツを着た人間、肩幅から男だと凛一が認識した人物が現れて黒いフルフェイスヘルメットをはずして見下ろしながらこう言った。


「お前ら地元民? ここがどこだか教えてくれよ」


 おそらく自分とそう年の変わらない、高校生くらいの少年に凛一はため息をついた。


「それはオレが聞きてえよ」


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