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神仲裁

 村の人達に戻って来てもらい、全員の回復や手当が終わると凛一達は勇者様一行として歓迎された。


 魔剣エグゾディアスが封印されている遺跡の詳しい位置は、世界の融合と同時に突如現れた遺跡として村では有名で村人に聞くとすぐに分かり、地図で場所を確認した。


 今夜は村に泊ってゆっくりと休み、明日万全の状態で遺跡に向かう、ここまでは完璧なのだが、その日の夜、勇者パーティーは崩壊の危機を迎えていた。


「一対一の戦いに割って入るとは何事だ!」


「勝てればいいじゃん!」


「黙れ! あれは俺とガノンダルヴァの武術家の意地と意地とかけた神聖なる一騎打ちだったのだぞ! 見たかあのガノンダルヴァの不満そうな顔を!?」


「見たわよ、この勇者天使エリス様の華麗な不意打ちをまんまと喰らってしまった自分の不甲斐なさに怒るあの顔は見ていて気分が良かったわ」


「たわけ! 如何に悪逆なる殺人拳といえど奴も一人の武人、一騎打ちを邪魔されては苛立つに決まっているだろう!」


「ああもうなんであんたらアクション世界の武術家って頭が堅いのかしら、口を開けば武器はダメだとか一騎打ちには手を出すなとかわけわかんない! 神様に仕える僧侶も頭堅いけどあんたらその百倍堅いわよ!」


「お前達の世界には正々堂々という言葉が無いのか!?」


「あるわよ、そりゃお城での剣術大会ならあたしだって手を出さないわよ! でもあれは敵との戦闘で別に試合じゃないでしょ!? それに剣術大会でだって片方が死にそうになったら止めに入るわよ! だって死んじゃうもん!」


「互いの武を披露し合う場ならば俺も止めるが実戦で仲間を助けてどうする!? 命は助かっても武人としての誇りはその瞬間死ぬのだぞ!」


「なんですってー! 命が一番大事でしょ! 勝てればいいでしょ! 多対一だろうと武器やアイテム使おうと勝てば全て丸く収まってハッピーエンドでしょ!?」


 こんな言い争いがもう二時間以上続いている。


 近頃剣と魔法のファンタジーというよりもRPGゲームではないかと思い始めたエリスの世界だが、確かにゲームだと勇者パーティーは四対一で魔王と戦うし、勇者パーティーだけがアイテムを使ったり武具を付けていたりとかなり卑怯な気はする。


 それでも最終的に魔王を倒しさえすれば世界は平和になるのだから問題ないだろうし、そもそも相手が魔族という強大な相手である以上、勝てばなんでもアリ、という価値観がエリスの世界で育つのは当然。


 その辺が同じ人間同士でしか戦わなかった竜輝の世界との差なのだろう。


 両者の言っている事は単なる見解の相違、価値観の違いでありどちらが正しいとは言えない。


 しかし明日の事を考えるとここでパーティー解散は避けなければならない。


「あのさあエリス」

「何よ、凛一まで竜輝の味方するの?」


 頬を膨らませて可愛くむくれる美少女天使にトキメキながら、凛一はその気持ちを表情には出さず語りかける。


「そういうわけじゃないけどさ、例えばエリス、エリスは魔王と戦う前に何か言うだろ?」


「もちろん! この勇者ロトギスと守護天使エリエルの娘である勇者天使としてバシッとキメてやるわよ、もう口上だって四八パターンも考えたんだから!」


「(力の入れ所間違ってるなぁ)でも魔王だってきっと勇者との戦いの前に何か言って、それで勇者天使エリスと新魔王ノアルエイドの会話がある。そこでパーティーメンバーの魔法使いがファイアボールを撃ったらどうする?」


「そいつなんてことしてんのよ! あたしがシバキ倒してやるわ!」


「魔王が隙だらけだったからって言ってきたらどうするんだ?」


「それは………… !?」


 エリスが水に打たれたようにハッして凛一の顔を見る。


 凛一は優しい笑みで頷いてから竜輝を指した。


「ごめんなさい竜輝、あんた達の一騎打ちって魔王との会話くらい大事な物だったのね、知らなかったとはいえそれを、本当にごめんなさい」


「えっ? いや、分かってくれればそれで良いのだが、俺も熱くなり過ぎた。すまん」


 宿屋の部屋を出て、凛一は廊下で息を吐きだした。


「やれやれ、これでパーティー解散は防げたな」


「おつかれリーダー」



電撃オンラインでインタビューを載せてもらいました。

https://dengekionline.com/articles/127533/

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