格闘アクション世界敵四代将軍、ガノンダルヴァ
『いいぜ! おもしろくなってきたじゃねえかよアクション野郎!』
驚きはしたが恐怖は無い、むしろ燃え上がる魂に体を震わせながらセイルは銃を収めて高周波ブレードを抜き構えた。
『さあ行くぜ! オレ様とアークの力を見せてやるぜ!』
「待てセイル! あいつとは戦うな!」
竜輝に制されて一歩進んだアークは止まり、オートバランサーが無ければ転ぶところだった。
『ってなんでだよ竜輝? だってあいつ親玉だろ? オレ様にちゃちゃーっとやらせてくれよ』
軽いノリで頼むセイルとは対照的に竜輝は目を見開き、その男を瞠目した。
「その巨体、そして羽織に施された玄武の刺繍、貴様ガノンダルヴァか!!」
ガノンダルヴァと呼ばれた大男が進み出た事でセイラン帝国の軍勢は誰もが姿勢を正して争いをやめ、遠くの者はこの状況が見える位置まで走ってくる。
戦場に初めて訪れる静寂と竜輝の叫びに凛一とエリスも集まりその大男を目で見てその圧倒的な存在感に息を飲んだ。
戦場に立つだけで静寂を作った男はあらゆる理屈を抜きにしてとてつもなくデカイ男だった。
二メートルを遥かに超えた長身とそれを考慮しても広過ぎる肩幅。
足も、腕も、首も、その男の全てが太く、そして胸も腹も背中も厚く、拳はひたすらデカかった。
筋肉が小山のように集まったその男は体の全てが太く、厚く、そしてデカい。
彼に比べれば最大の霊長類たるゴリラですら子供も同然で、今は絶滅した地球史上最大の霊長類と言われるギガントピテクスが生きていればこのような体格だったかもしれないと凛一は思わずにいられなかった。
格闘アクション世界の武術家が持つ圧倒的な身体能力は知っているし、凛一は納得していた。
竜輝の強さは凛一が持っている格闘漫画やアクション漫画に登場する主人公そのもので、漫画表現で三メートルを超えるようなキャラクターは出てきたがデフォルメはデフォルメ、キャラクターブックに記載された身長は二メートル前後だったりする。
だが凛一の目の前にはデフォルメではない、本物の巨人がいた。
単純なサイズならばSF世界のアークやファンタジー世界の巨人族のほうが上だろうが人の身体能力以外は現実的な世界観のアクション世界でこのような人間が存在している事に凛一は驚愕してしまい、その異様さにアークや巨大モンスターを目にした時とは違う圧力を感じた。
ギャグマンガだと筋肉キャラは意外と優しかったりオカマだったりバカだったりとコミカルな特徴を備えているがアクション世界にそんな希望は持たないほうがいいだろう。
あの筋肉魔人が迫ってきたらと考えるだけで恐怖である。
「ほお、我の名前を知っているか、如何にも、我こそはセイラン帝国軍四大将軍が一人!北方将軍ガノンダルヴァ! その矮小な肉体、大和の民か」
「そうだ、俺は大和最強の武術家神谷喜助の弟子、神谷竜輝! 何故この村を襲う!?」




