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俺のジョブってなんなんだろう?

「う~ん、勇者パーティーの一員としてオレもかっこよく戦いたいけどオレの力なんてせいぜい町のチンピラ達から逃げる為の小細工だもんな、ていうかオレの職業ってRPG的に言ったらなんなんだろ?」


 民家の中で瓦礫の下敷きになる人を助け出し、ポーションを飲ませながらそんな独り言を言っていると元気になった村人が凛一の背後を指差し悲鳴をあげた。


「ん?」

「その珍妙な格好、てめーあいつらの仲間だな!? 大人しく人質になりな!」


 学校の制服であるブレザーを珍妙な格好と言ったのは褐色の肌のセイラン帝国軍人だが他の武術家よりも背が低く、筋肉もプレッシャーを感じるほどではない。


 外の戦場ではなくこんな民家に押し入るところを踏まえてもおそらく一番の下っ端だろう。


 それでも凛一の一〇〇倍は強いだろうし、なによりも男の右手には短刀が握られていた。


 背の高い筋肉男に刃物を突きつけられれば恐怖で腰を抜かすだろうが、世界が融合してから免疫ができたのか、ゲームや漫画で慣れているのか、それともあまりにも最強すぎるエリス達と一緒にいて感覚がマヒしているのか、凛一は不思議と恐怖を感じなかった。


 それどころか男の格好を見て冷静に勝つ算段を立てる。


 下っ端の未熟な武術家であるその男は鎧を着ているが露出が多く、心臓や内臓の詰まった胸や腹、防御に使う腕や殴る拳は鎧で覆っているが他はわりと無防備でおまけに裸足だった。


「(チンピラ以外にも通じるかな?)」

「ぼーっとしてんじゃねえぞ死にさらせえ!」


 男は雑魚キャラまるだしの台詞で襲い掛かる。

 そして凛一は男と視線を合わせたままスネを蹴り飛ばした。


「ひでぶっ」


 男が自身のスネを抑えようとかがんだところを鼻にひざ蹴りを喰らわせてさらに足の小指をカカトで思い切り踏み潰し、続けて足元に落ちていた折れたテーブルの足でヒジの付け根を叩く。


「たわば!! ぺがふ!! あぶぱ!!」


 たまらず鼻を押さえてうずくまり、尻を斜め上に突き出したポーズに凛一の脳味噌がひらめいた。


 ここで確認するが男の下半身の守りは腰から垂れさがった金属板のみである。


 凛一は男が落とした短刀を拾って背後へ回り込むと見事な脚力と腕力の合一で生み出したパワーに全体重を乗せて突き出しねじった。


「死ねぇええええええええええええい!!」

「ひでぶぅっうううううううううううううう!」



桜崎凛一の四八の主人公補正(スキル)

千年殺し:凛一はどんなに厚く複雑な服の上からでも人体の急所を正確に突く事ができるのだ。



 四つん這いのまま体を震わせ這うようにして逃げようとする男に、だが凛一はピクルスを作るのにこの家の主が使っていた重い漬物石を持ち上げて、


「ちょっ、おまっ!?」

「うおりゃああああああ!」

「あべし!!」


 首だけ振り向いて凛一を見上げる男の顔面に漬物石が叩きつけられ、鼻血を流しながらそれでも男はまだ逃亡を続けてついに凛一は一切の慈悲を捨てた。


「同じ男としてこれだけはしたくなかったが仕方ない……」

凛一は床に落ちている棒きれを掴むとプロゴルファーのように振りかぶり、男の股間めがけてフルスイングした。


「!!!!!?」


 男の視界がフェードアウトして、体の震えすら止まった。


「よし、勇者の仲間桜崎凛一華麗に勝利!」

 

 バンザイで一人喜ぶ凛一の背中に、助けられた村人は冷たい視線を送り続けた。

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