襲われる村
村は酷い有様だった。
褐色の肌の男達が手当たり次第に村人を殺し、家を破壊して回っている。
そして異常だったのはその褐色の肌の男達が皆、ボディビルダーのような身体付きであり、素手で暴虐の限りを尽くしている事だった。
その正体は当然、竜輝のいた格闘アクション世界を統べるセイラン帝国の北方軍、ガノンダルヴァ率いる武術軍隊である。
「間違いない、こいつらが前に話したセイラン帝国の連中だ、凛一、俺から離れるなよ!」
さすがに巨大ロボットであるアークが目立ち過ぎるので帝国軍の目はすぐに凛一達に向いてくれた。
褐色の肌の男達は剣や槍こそ持っていないが体は皮と金属を組み合わせた鎧を着て、手には手甲を付けている。
非武装ではないが、拳を使った戦い方をする以上、雑魚ではなさそうだ。
それでも、エリス達の相手をするには力不足もいいところだった。
戦いが始まるとエリスの攻撃魔法にセイラン帝国の武術家達は妖術士だと驚き、なすすべも無く焼き殺され、オリハルコン製の聖剣、セラフブレードで体を鎧ごと両断されていく。
「言っておくけどあたしの実力はこんなもんじゃないわよ! さあ、自らの悪行を悔いて地獄に落ちなさい!!」
勇者と天使の間に生まれたエリスは非道なる悪漢どもには容赦なく、目に映る敵を片っ端から殺し、問答の余地など与えない。
「なな、なんだこいつらは!?」
「た、助けてくれ!」
『じゃあお前らは助けを求める村人を助けたのかよ!!?』
マイク越しでも伝わる怒気とともにセイルはアークの銃から対人兵器用の弾薬を放った。
一度空に撃ちあげられたグレネード弾は空中で爆発し、無数の弾丸が拡散しながら地上に降り注ぐ。
同じ巨大ロボットを傷つける威力は無いが一般兵士ならば即死できるだけの殺傷力を持ったグレネード弾はセイラン帝国の男達の鍛え上げた肉体を無情に引き裂き肉塊に変えて行く。
弓矢の効かぬ強靭な肉体も対大口径銃用防弾チョッキで身を固めた兵士を貫くアークの対人兵器には勝てなかったのだ。
広範囲に渡って効果のあるその兵器を、セイルは村人のいない、あくまでセイラン帝国軍が集まっている個所に使用する。
身長一〇メートルの視界から見下ろせば都合の良い場所などいくら見つかった。
「ちくしょう! なんだよあのバカでっけー銅像は!?」
「てめえ俺らを誰だと思ってやがる!? 世界最強の軍人ナメんじゃねえぞ!」
『ならお前らも戦争屋ナメじゃねえぞ!! くぐりぬけた戦場の数じゃ負けねえぜ!』
対人兵器の一発が五〇人近い武術家を殺し、村人とセイラン帝国軍が入り混じり対人兵器の使えない場所では竜輝が拳で一人一人確実に殺していった。
同じ武術家で、しかも体格は相手の方が竜輝よりも遥かに優れている。
竜輝は背が高く肩幅も広いが、それは平均的な日本人である凛一と比べたらの話であり、大陸人特有の屈強な体格とは比べるべくもないが、竜輝の流れるような動きを捉えられず、褐色の筋肉魔人達は全ての攻撃をかわされて、逆に大陸人と比べれば矮躯と言ってよい竜輝の一撃をみぞおちや頭に受けて絶命した。
腹を殴られた者の内臓は破裂して、頭を殴られた者は首の骨が折れたり、脳味噌への衝撃で誰一人として生きてはいられなかった。
武道大会では無くここは戦場であり罪無き民草が殺されているならば、殺人拳ではなく活人拳を掲げる竜輝といえど不殺の志を保つ気は無かった。
「レベル一〇〇主人公三人がかりって酷いチートもあったもんだな」
凛一は自力で逃げられない怪我人に回復魔法薬を飲ませて回りながら思わずそんな言葉が突いて出た。




