格闘技アクション主人公 神谷竜輝2
戦場は突然訪れた。
町で開かれた闘技大会に竜輝が参加している最中に突如として無数の船団が港に現れ、無数の軍艦からは無数の兵士が跳び出し次々に上陸して町を焼き払い、罪も無い民を一方的に殺していく。
竜輝は急いで港まで駆けた。
竜輝が到着した頃、港は大和と異国の兵士達が殺し合い、地面は血の池に溺れる死体でいっぱいだった。
「くっ……」
幼い頃の記憶を思い出しかけて、竜輝はすぐに怒りで折れかけた心を立て直す。
見れば敵は鎧と槍で武装した歩兵達、つまり敵は鎧と武器に頼らねば戦う事が出来ない弱者であり、本人の戦闘能力が低い事の証拠だった。
「甘い!」
竜輝が駆ける。
近づく竜輝に褐色の肌の兵士達は槍を突き立てるが竜輝の肌に突き立てた槍は刃の部分が飴のようにひしゃげて、竜輝の拳や蹴りの一発で兵士達の体は鎧ごと砕け散った。
恐怖で怯える敵兵を容赦なく潰していく。
殺意を以って人を殺すのは初めてだったが今の竜輝には躊躇うだけの余裕は無い。
幼い日に見たあの戦場を、あの地獄を再現してはいけない、もう自分のような戦争孤児を生みだしてはいけない、その熱い思いから竜輝はその拳で敵を殺し続けた。
やがて他の武術家達も応援に駆けつけて異国の兵士はみるみる数を減らしていく。
そもそも剣や槍に頼る歩兵ごときが武術家に敵うはずがない、どこの国かは知らないが随分と甘い見積もりだと考えて、竜輝は気付いた。
「悪いがここは任せた! 俺は町を見てくる!」
他の武術家に場を任せて走る竜輝の全身が悪寒に飲み込まれ、心臓が痛いほど脈打つ。
杞憂であってくれと願いながら町に戻ると竜輝はその光景に愕然とした。
褐色の肌と筋骨隆々の体躯に見た事のない装束をまとった男達が虐殺の限りを尽くし、町民だけではなく大和の戦乱を生き残った武術家達ですらその身を骸に堕としている。
強い、町中にはびこるその異人達の圧倒的な強さを感じ取り、だが竜輝の心は折れる事なく戦い、圧倒的な体格を誇る異国の武術家達を拳一つで何人も殺した。
日が暮れる前に異人達は撤退したが、それは竜輝達が勝利したのではなく、ただ日が暮れたから今日はここまでという余裕に満ちた行動で、竜輝達は見逃されたのに近かった。
心身ともに疲れ果てていたが竜輝は怪我人を運び、崩れた建物の下敷きになった人の救助などを続けた。
そして、救えなかった人々の亡骸を運んでいる中で、近所に住む少年の遺体を発見した。
小刀を握った少年の遺体の側で母が泣いていた。
その少年の母はすぐに家族で逃げようとしたが、少年は母の手を振りほどき、異人を倒すと言って小刀を手に異人に立ち向かい、だが軽く叩き飛ばされただけで首の骨が折れて即死したらしい。
その小刀は以前、竜輝自身があげたものだった。
体が弱く武術ができないと言うので仕方ないから道具を使えと、深い考えも無しに与えたものだった。
竜輝は泣いた。
小刀を与えなければ少年は異人に立ち向かわなかっただろう、死ななかっただろう。
少年が体が弱く武術ができなければ、力が無いままなら少年は逃げのびてこれから先の長い人生を生きる事ができたはずなのだ。
なのに竜輝が武器という力を与えたばかりに少年は死ぬ事になった。
竜輝はこの日、師匠の言っていた事の本当の意味を理解した。
「武器はダメです。何の痛みも苦しみも無く人に力を与えてしまう、痛くて辛くて苦しい想いをして鋼になる覚悟を決めて強い心を手に入れるのです。鋼の心を持たずに鋼の強さを持ってしまう武器はとても恐くて自分だけではなくて大切な人も傷つけてしまいます」
「ねえ、師匠が言っている鋼の心って何?」
「鋼の心とは死ぬ覚悟の事、特に弱き人々の為に死ぬ覚悟です、それに武器は人を傷つけますし、私の手も握れば人を殺せますが、ほら、開けば貴方の頭を撫でてあげられますよ」
「……うん」
「だから竜輝も拳を鍛えて、将来はお姉ちゃんや妹達を守ってあげるんですよ」
「うん! 俺強くなるよ!」
少年が死んだ日、竜輝は幼い頃の自分に謝罪し、そして歩き出した。




