学生と王様の上下関係が逆転し過ぎている
まただ。
今の話を聞いてその場にいた全員が気分を害し、魔族の卑劣さを理解する中で、凛一だけは一人違和感を感じ、一つの結論に辿りつこうとしていた。
「それでは頼んだぞ勇者エリスよ、魔術協会の話ではエグゾディアスの正確な場所は今夜には判明するとの事、今夜は仲間と共に一晩ゆっくりと休み明日に備えるのじゃ」
「安心してください王様、全てはこの勇者天使エリスに任せて下さい!」
「オレ様とアークの強さをたっぷり見せてやるぜ!」
「弱き民の為、命を賭して戦いましょう、と言いたいのですが、しばしお待ちください」
ヤル気十分のエリスとセイルと違い、竜輝は王様に断ってから凛一の方を向いた。
「本当にいいのか凛一、お前には少し危険な旅になるぞ」
宣言通り、竜輝は弱き民草を守る正義の武術家としては凛一の身が心配になったのだろう、だが凛一は「う~ん」と頭を掻いて答えた。
「失敗したらどうせ世界は魔族のもんだって言うならどこにいたって結局は同じだしな、それにあのルビナードって女には聞きたい事もあるんでね」
「聞きたい事ねえ、まあそんなの関係なくオレ様は凛一の参戦はむしろ必須だと思うぜ」
「む、それはどういう意味だセイル?」
「だってこの数日で分かったけどオレ様らが話したって全然通じねーじゃん、いつだって凛一が通訳してくれたり誤解を解いてくれたし、戦闘中だってこいつの頭脳は大活躍したじゃねーか、何よりもエリスが言った通りなんの力も無いのに四天王相手に無傷で生還したんだぜ、オレ様はこいつのそういう部分に期待したいね」
「そうね、それにもしも戦闘でピンチになったら勇者のあたしが守ってあげるわよ」
朗らかに笑ってエリスは自分の胸を叩いた。
一緒に胸も揺れてセイルの目が血走り背を向けられていたせいで見えなかった王様は本物の涙を流した。
凛一の脳内HDはフル回転である。
「それにほら、四人全員で行かないとせっかく王様が即興で考えてくれたニセ伝説が無駄になっちゃうだろ?」
「そうそう、わしの即興で考えたニセ伝説がゴホン! ムホン! 我が国に代々伝わる由緒ある伝説の通りにせねばきっと魔族は打ち倒せないのじゃ!」
慌てて言い繕ったが王様は凛一の背後に黒い悪魔の陰を見て恐怖した。
こうして一国の王と一介の学生の上下関係はより明確になっていく。




