現状把握と違和感
この瞬間、一国の王と一介の学生の間に明確な上下関係が生まれた。
「そういや王様、魔剣探索任務はいいとしてオレ様達って異世界から来たもんだから魔族関係良くわかんねーんだよな、大体の事はそこの爆乳勇者から聞いたんだけど戦争の状況とか詳しく教えてくれよ」
「爆…………エリス、今ぐらいその堅苦しい鎧を脱いだらどうじゃ?」
「それもそうですね、では天界武装は異空間へ」
エリスの白銀の鎧と盾が無くなり腰のセラフブレード以外の全武装が空気中にかき消えてしまった。
鎧の下に着ている白いワンピース姿になるとファンタジー世界には服の下にブラジャーをつける習慣が無いのだろう、量感溢れる胸がドタプンと揺れてワンピースに収まりきらない胸が深い谷間を誇示している。
王様とセイルの目が血走り、凛一の裸眼カメラが3Dで脳内保存する。
「道具を自由に出したり消したりできるとは、まるで仙人だな」
この場に閻魔大王がいたら竜輝以外の男は間違いなく全員視姦罪で地獄行きだろう。
「ではわしから説明しよう、まず最初の戦争だが魔族とは遥か昔から衝突が絶えなくハッキリと何年前から戦争をしているとは言えんが戦いが激化したのがおよそ一〇〇年前と言われておる。
そしてエリスの父親ロトギスが守護天使エリエルと力を合わせて四天王と魔王は死に、これで魔族は降伏すると誰もが思った」
「でもあいつらは降伏しなかったわ」
「うむ、四天王の地位はその娘達が引き継ぎ、魔王の娘であるノアルエイドが新魔王に据えられ戦争は続いた。
水のカイナルスは海路を海魔で塞ぎ貨物船が出せなくなり土のスケルレーネは打倒魔王を語る勇者パーティーを次々に襲い、未来ある勇者達は皆その時のケガと恐怖で引退してしまった」
王の話を聞いて凛一はある違和感を感じるが黙って続きを聞く。
「風のマリバリシアは軍事施設や魔術研究所を襲撃し人類の戦力を削ぎ、リーダーである炎のルビナードは魔族の土地へ派遣した軍隊を一人を除いて全て焼き殺し、殺した兵士の骨は鳥人間型の化物達によって街へバラ撒かれる」
「骨を……いや、それよりも何故一人だけ残すのですか?」
「語り部にするためだろ」
竜輝の問いには戦場経験が豊富なセイルが答えた。
「わざと一人だけ帰して戦場の悲惨さを伝えさせる事で自分達に刃向かう気を起こさせないようにするんだよ」
「その通りじゃ、それだけでなく森に住むモンスター達を村や街の周囲、さらには町と町を繋ぐ街道にウロつかせておる。人々を恐怖に陥れて怯える姿を楽しむ、奴ら魔族の考えそうなことじゃ!」
まただ。
今の話を聞いてその場にいた全員が気分を害し、魔族の卑劣さを理解する中で、凛一だけは一人違和感を感じ、一つの結論に辿りつこうとしていた。




