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わざとらし過ぎる王様がチラチラ

「しっかりしてください王様、あたしがいるじゃないですか!」

「勇者エリスよ、お主の実力は知っているがお主一人で四天王をまとめて倒せるのか?」

「そ、それは……」


 さすがのエリスも言葉が詰まってしまう。


 森の戦いを思い出せばまだ第二形態を残すあの四人を同時に相手にして勝てる見込みなど万に一つもないだろう。


 確かに四天王はまだ未熟な少女達、ただ親の跡を継いだだけの第二世代四天王だがそれはエリスも同じ、ハーフエンジェルと言ってもエリスもまだ若い少女の勇者だ。


「ああ、このまま人類はなすすべもなくあの邪悪なる魔族に滅ぼされてしまうのか……いや待て、エリス、森で四天王と戦ったと言ったな、何故無事なのじゃ?」


「ああ、それはこいつらと一緒に戦ったからで、そうしたら急に四天王のほうが逃げちゃって、そうですこいつら強いんですよ、凛一なんて勇者学校の一年生より弱いのに口だけで四天王を打ち負かして無傷だったし竜輝とセイルなんて四天王を圧倒しちゃったんですよ」


「なんと!? ハッ、もしや……」


 エリスの報告に王様は驚くと口に手を当てて思い出したように喋り出す。


「そういえばこの国には古くからの言い伝えがあってな、邪悪が力を取り戻し人類を滅ぼさんとする時、翼の生えた勇者が異界より召喚せし三人の救世主と共に邪悪を打ち祓うと、もしやと思うがそなた達は……いや、もはや何も言うまい、魔王軍に追い詰められただ滅びを待つだけの国の為に命を()して戦ってくれなど一体この世の誰が言えようか」


「(おもっくそ言ってんじゃねえかこのジジイ、何から何まで胡散臭えんだよ、その台詞いつ考えたんだよ!)」


 一度マントで顔を覆い、マントの中からすすり泣く声が聞こえて再び表した王様の顔は涙で濡れていて、王様はすぐに腕で顔を隠し直す。


「おっと、これは客人にみっともない所をみせてしまったな(チラ)お主達にはお主達の世界がある(チラ)こんな未来の無い王国の事など忘れてお主達の家族や故郷を探すがよい(チラ)いや、だがこの国の魔術ならば人や土地なぞすぐ見つかる。

勇者エリスを守ってくれた礼じゃ、お主達の家族や故郷を無償で調べよう、これはあくまでわしの善意、お礼なんて、まして魔剣探索なぞちっとも考えなくてよいぞ」


「(最低だ、このクソジジイ俺らに戦わせる気満々だよ、でもこんな演技に騙される奴なんているわけが……)」


「何を言っているんですか王様! あたしは勇者天使エリス、人類の為に戦います!」


「弱き民を守るは武門の務め、微力ながら私の拳をお貸ししましょう」


「世界を救うために頑張るぜ! このオレ様がやらずに誰がやるってんだよ!」


「(何でみんな騙されてるの? オレが馬鹿なの? オレが変なの? オレ死ぬの?)」


 ファンタジー勇者とアクション武術家にSFパイロットの正義感と純真さに疎外感を感じる凛一を無視して王は両腕を広げて涙を流す。


「おおお、一体なんと勇敢な若者達だ、お主達四人が力を合わせればあの邪悪で醜い魔族共もきっと成敗されることであろう!」


「(え? オレ数に入ってるの? オレ剣も魔法も使えなけりゃ武術も巨大ロボの操縦もできないただの学生なのに無視なの? ああ、湖で出会った美少女の笑顔が懐かしい)」


 あまりに身勝手な王に何か嫌がらせをしたくなり、凛一は王様の涙が目頭から出ていないことに気付いた。


「あれ? 王様足元に目薬落ちてますよ」

「なぬぉ!!!!?」


 尋常じゃない驚きと速度で王様は足元を見るが何も無い、気がついた時にはもう遅い、王様がハッとして凛一の顔を見ると凛一は絵本の挿絵に出てくる悪魔よりも邪悪な笑みを浮かべていた。


「ッッ…………」

「あんれぇ? どうしたんですか王様、そんなに慌てちゃって」


 この瞬間、一国の王と一介の学生の間に明確な上下関係が生まれた。

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