聖剣セラフブレードと魔剣エグゾディアス
「ジャンル?」
「はい、それによるとあたし達のような世界をファンタジー、格闘技の物語をアクション、科学が発達した物語をSFって言うそうです」
「なるほどジャンルか、しかし桜崎殿の世界は凄いな、お主の世界の者を何人か保護したが彼らの話はどれも我々の理解を超える上に未知の技術を持っていた。
特にデコるとかいうあのような細かな装飾技術を一般庶民が身につけるなど考えられんし、あえてズボンを傷つけ味わいを出すジーンズ、それにお主と同じ日本人の男が言っていた夜のプレイ ムホン! ゴホン! とにかくお主の世界は娯楽や快楽追求においては他の世界を遥かに凌駕している」
「ソッチ方面にかけちゃオレの国は世界最強ですよ」
この時、ニヤリと笑う凛一の言葉の意味を正確に理解できたのは王様だけであった。
そしてこの瞬間、一国の王と一介の学生は対等な立場になった。
「それで王様、実はあたし達リンドバルム大樹海で四天王に会ったのですが」
「おおそうだ、忘れるところであった。此度の事件については理解しているようで助かるがその四天王が大変な事をしているのだ!」
妄想逞しいエロジジイから一転して王の風格を取り戻すとリンドバルム王は語り始める。
「エリスよ、お主は魔剣エグゾディアスを知っているな?」
「はい、確か先代魔王が持っていた剣で魔王の死と一緒に封印されたって」
「うむ、お主のセラフブレードが勇者の剣ならばエグゾディアスは魔王の剣、先代魔王が最強と呼ばれていたのもその絶大な魔力だけではなく魔王の剣を持っていた事に起因する」
最強の魔力と剣を持つ魔王、確かにそれならば最強と言われるのも納得だがそれはつまり今の魔王は剣が無く、魔王軍の弱体化を表していた。
「世界を滅ぼすとも言われる威力を持つ魔剣エグゾディアスは魔王の死後、天界の天使達の手によって三つに分断されてそれぞれの欠片を異世界へと封印した、だがその封印した異世界というのが……」
「まさか!?」
エリスは気付いたし、声には出さないが凛一達もすぐに気付いた。
三つの欠片を三つの異世界に封印し、今回の事件でファンタジー世界は三つの世界と融合してしまった。
「現実世界とアクション世界、それにSF世界の三つ、四天王は世界の融合とほぼ同時にエグゾディアスの強大な魔力に気付きこの事実を知ったらしいのじゃ。
勇者ロトギスが魔王との戦いで再起不能になり、あの戦いで多くのベテラン勇者パーティーが死んだ今、人間が魔族と対等に戦えるのは魔王軍の弱体化のおかげ、だが奴らはすぐにもエグゾディアスの欠片を集め失った力を取り戻し人類を滅ぼすだろう」
王様は握り拳を震わせながら目を伏せる。
「魔王軍が魔剣エグゾディアスを取り戻せば我が軍隊などひとたまりもない。
兵を向かわせようにも国中の兵隊達は異世界との融合で起こった地震の被災者や混乱する民衆を鎮める為に各地へ向かい、突如として現れた異世界の小勢力達との抗争鎮圧にも人員を割き、この城にも必要最低限の兵しか残っておらん。
その上エグゾディアスを集めているのが四天王である以上、魔剣回収は自殺行為も同じ、もし四天王とまともに戦おうものならばそれこそ万軍が必要となるが兵が足りないのは他の国も同じ、今この世界を救える者など……」
「しっかりしてください王様、あたしがいるじゃないですか!」




