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『嘆きの谷に、青い鳥は舞う』3


      3


 少し古い型だが、〈ネメシス1300〉は良いマシンだ。三十分はかかると思われた道を二十五分で走り抜けた。ウリエルに来た時、少々無理をして買ったのだが、それを後悔した事は一度もない。

 そんな愛馬をみすみす無礼な奴らの手で汚させるわけにはいかないので、少し離れたところにクルーザーを止めると、おれはエズラ地区へと入った。

 エズラ地区はウリエルシティの中ではあまり評判の良くない区域だ。風俗店、ナイトクラブ、バー、安酒場が立ち並び、裏通りの壁は落書きだらけ。割れた酒瓶と吸い殻がそこら中に落ちている。昼間でも女たちが通りに立ち、二十四時間いつでもドラッグが買える。住人同士の喧嘩はしょっちゅうで、懐に拳銃を忍ばせている奴らも多い。というかほとんどそうだ。

さっきから考えてはいるが、ルシアという娘の具体的な人間像を描けないでいる。

リチャードが作成したという資料には、彼女がいつどこで生まれて、どんな学校に通ったかは書いてあったが、彼女の感情や言葉は書かれていない。好きな食べ物も、本や服の趣味も、何もわからない。抑圧されてきたストレスから遊び好きになったとして、エズラ地区で遊び惚けながら、朝八時と夜七時に連絡を入れるという生活を一年以上続けられるだろうか? 一度の連絡漏れもなく?

 情報が足りない。制限時間は七十二時間で、そのうちの三時間半がすでに過ぎた。時計の進み方は常に同じだ。だから、その一分一分を実りあるものにしなければならない。時間を無為に過ごす事は、豊作の果実を一つもぎ損ねるのと一緒だ。

と、これは昔、叔父に言われた言葉で、おれはこの言葉が嫌いだった。人は時間に支配されていると言われているようなものだからだ。

〈サウザンドヘッズ〉は古いクラブの並びにあった。酒場だが、昼間からやっているようだ。中に入ると、一見して堅気ではないような連中が振り返ったが、別に気にする必要はなかった。男の一人、筋肉ダルマのスキンヘッドがじっと睨んでいたが、やがて視線を逸らした。

 開店当初はまともな店構えだったのかもしれないが、今はエズラ地区の店らしい荒れ具合だった。チェッカー盤柄のタイル床は汚れが目立ち、照明は薄暗い。カウンターのバーテンは陰気な顔でグラスを拭いていた。

「カルヴァドスを」

 グラスを拭く手を止めず、バーテンはつまらなさそうに答える。

「ここにはそんな気取った物はないよ」

「じゃあ何がある?」

「アプルトン」

「そいつをくれ」

 バーテンは黙ってボトルを取ってくると、褐色の液体をグラスに注いでおれの前へ置いた。ひと口舐め、煙草に火を着ける。

「女を探している」

「外に立っているのじゃ駄目かね」

「この店にいるって聞いたんだ。キドニーって娘さ」

 バーテンはボトルを戻す手を一瞬止めたが、すぐに言った。

「あの子はもう、そういう商売を辞めたよ」

「そうかい。評判の娘だって聞いたんだがな」

「以前はな。少し前に相手が出来て辞めた。諦めな」

「相手って?」

「どこぞの娘だ。育ちの良さそうな」

 ボトルを仕舞い、バーテンは振り返る。

「キドニーは休みだ。もうずっと休んでいる。ちょっと前に新しい仕事を始めたと言っていた。女が二人欲しいなら、外に出て二人組を買いな。新顔は好きじゃないんだ」

「誤解するな。別に買うわけじゃない。ちょっと用があるんだよ。キドニーにはどこに住んでいる?」

 ガタガタと背後で椅子を動かす音がして、次の瞬間、おれの横にバン! と拳が叩き付けられる。

 店に入った時におれを睨み付けてきた男の一人、筋肉ダルマのスキンヘッドだ。

「兄ちゃん。キドニーに一体何の用だ? あいつはおれの女だ。嗅ぎ回ってんじゃねえぞ」

「お前の女……? ふん、話がずいぶん違うがな。キドニーの相手は女じゃなかったのか?」

「馬鹿言ってんじゃねえ。男より金を持ってそうだから女の相手をさせてるだけだ。あの娘の体はおれのモンだ。商売のイロハもおれが教えてやったんだ。実地でな」

「女の飼い主のつもりか知らないが、相手してもらった以上、金は払ったんだろうな? 良くないぜ、彼氏気取りは」

 突っ込んでくる牛みたいな勢いで、筋肉ダルマの手がおれの胸倉を掴み上げた。

「あいつはおれの女だ。エズラであいつが暮らしていけるのは、おれが守ってやっているからだ!」

 目つきがやばい。何かクスリでもやっているんだろう。おれは左手を優しく胸倉を掴む男の手の上に置き、

「まずは礼儀を学べ」

 瞬時に鋼の右手でその下を包み込む。男が反応する間もなく、くるりと捻り上げてやる。護身術の基本だが、筋肉ダルマは対応出来なかった。雑巾みたいに捻られた腕のせいで情けない呻き声を上げて、転がるように床に這いつくばる。

「てめえ!」

 いきり立った筋肉ダルマの連れが酒瓶を片手に向かってくる。

やれやれ。店には悪いが、仕方ない。修理後の肩慣らしをさせてもらおう。

 筋肉ダルマの腕から手を放す。勢い任せに殴りつけられてきた酒瓶を義手の甲で弾き、おれは痩せた男の腹部に裏拳を見舞う。苦悶の呻きに崩れ落ちる男の背後にもう一人いるのが見えた。痩せっぽちをどかし、続く髭面が突き出してきたナイフを躱す。若干体勢が悪い。薙ぎ払われた刃を義手で掴み取り、力任せに折り曲げる。一瞬、呆然とした髭面が、

「化けモンがぁっ!」

 そう叫んだ。隙だらけだった。内股を払い、蹴り飛ばす。吹っ飛ばされた男の体が古びた椅子にぶつかって転げる。

 その時、雄叫びを上げて筋肉ダルマが立ち上がった。猛牛のような巨体のタックル。あれに対応するのは難しそうだ。

【NORMAL】モードでは。

おれは右肩にあるツマミを右へと倒した。生体電流に変化が生じ、義腕の内部機構が稼働。人工筋肉が隆起する。モードチェンジ――【МUSCLE】。

 パン! と小気味いい音を店内に響かせて、おれは筋肉ダルマの突進を止めていた。

「馬鹿な……どんな腕をしていやがる……」

突っ込んでくるスチームバスでさえ片手で受け止めるのがモードマッスルの売りだ。いくらデカかろうと、筋肉ダルマくらいものの数じゃない。

「ふっ――」

 急に緊張を解いて、おれは右手を男の体から放す。体勢を崩した男の腹に、おれは鋼鉄の拳で一撃を加えた。

「ぐぅ……っ!」

 腕を捻られ、腹に一撃食らった筋肉ダルマはここでようやく床に倒れ込み、沈黙した。

 ツマミの位置を戻し、モードをノーマルにする。

「さて、お前はどうする?」

 おれは残った若いチンピラに声をかけた。チンピラは腰を抜かして震え上がっている。

 このちょっとした騒ぎを収めたのは、意外な人物だった。

「そこまでだ。これ以上暴れるんなら、警察を呼ぶぞ」

 ちらと後ろを見れば、マスターの構えたショットガンの銃口がおれの頭部を狙っている。やれやれ。よくよく今日は人から銃を向けられる日だ。仕方なく、おれは両手を挙げた。

「キドニーの居場所だったな。悪いがここにいる奴らは誰も知らん。もうこの街にはいないかもしれんな」

 両手を挙げたまま、おれはマスターのほうを振り返る。

「どういう意味だ?」

「そのままの意味さ。あの子はきっと街を出る気だ。いい選択だ。持たざる者が這い上がる事のないこの街に、何も好き好んで留まる必要はない」

 銃を向けたまま、射殺すような目でマスターが言う。

「それがあんたの見立てってわけか。悪いがこっちも手ぶらで帰るわけにはいかないんだ」

「なら、丘の団地へ行け。そこでキドニーの酔いどれ親父が暮らしている。あの子が今もあの家に帰っているかは知らんがね。親父に会って、さっさと出ていくがいい。ここはよそ者がうろつくようなところじゃない」

 銃の扱いは素人ではないようだ。目が本気だった。撃つと決めたら、ためらいなく撃つだろう。

「オーケー、わかった。わかったよ……」

 おれは挙げていた両手を下し、袖に仕込んでおいた百ギルヴィをカウンターの上に置いた。

「壊しちまった椅子と、連中とおれの飲み代だ。騒いで悪かったな」

 アプルトンを呷り、店を出る。

このくらいのトラブルは日常茶飯事だ。

煙草を銜え、言われた通りおれは丘の団地を目指す事にした。


 丘の上の団地は人が住んでいる気配がほとんどない。郵便受けを一つずつ調べ、ようやく目当ての名前を見つけ出した。

キドニー・レイン。それが彼女の名前だった。

レイン家のドアは、ゴミの山と散らかった酒瓶と落書きで来客を拒絶していたが、ドアノブは壊れていなかった。回してみると、鍵もかかっていない。

家の中は、酒の臭いが充満していた。それに反して玄関はわりあい整頓されている。ゴミ袋が並べられた廊下を進むと、キッチンにたどり着く。

その時、奥の部屋で物音がした。

「……っ、ぅう。あー……キドニーか?」

 ひと声で酒を飲んでいるとわかる声だった。男。それもかなり年配のように聞こえる。忍び足で声がしたほうへ行くと、太鼓腹の突き出た縮れ毛の男が、元はリビングだったらしい部屋の中央に大の字で寝転がっている。

おれは郵便受けに書いてあった名前を思い出す。

「メイソン・レインだな」

 ウィスキーの瓶を片手に寝転がっていたその男は、眠たげな顔を上げて、しばらくおれを見つめていたが、やがて相手が娘ではない事に気が付いた。不明瞭な叫び声が、その口から飛び出てくる。

「ううあああ、な、な、何だ何だお前ェええ!?」

 メイソンの判断は早い。手に掴んだ酒瓶を容赦なく投げつけてくる。ウィスキーを撒き散らしながら飛来する酒瓶をおれは何とかキャッチした。別に躱してもよかったが、あとでこの辺りを調べる時に、ガラス片を気にしながらやるのは面倒だ。

「かね、金、金ならないぞ! 出ていけてめえ、ここはおれの家だッ!」

「知ってるよ」

郵便受けを見たが、予想に反して借金の請求書は一通もなかった。タチの悪い飲んだくれは酒を飲むためなら平気で借金するし、踏み倒そうとするものだ。この親父が見た目よりもまともなのか、それとも……。

「安心しろ、おっさん。おれは別にあんたに金をせびりに来たわけじゃないんだ」

 アルコールでふやけた頭はなかなか正気に戻らないのか、またぼうっとした顔をしている。テーブルの上の比較的綺麗なグラスを手に取り、酒瓶に残ったウィスキーを注ぐと、おれはそれを親父の手に持たせた。

「ほら。ぐいっといって、寝ちまいな」

 酒臭いのをぐっと我慢して、おれは親父が酒を飲むのを支えてやった。喉を鳴らしてウィスキーを飲み干した親父は、そのままグラスを持つ力を失い、ころんと体を傾けた。

 その辺にあった上着をかけてやり、メイソン・レインを床に寝かせる。

 さて、改めて調べてみる事にしよう。

 とはいえ、部屋の中はほとんどゴミだらけだ。ネズミの死体でも出てきそうで正直ぞっとしない。

 キッチンに戻る。古びた旧式の冷蔵庫があった。意外な事に、電気がまだ通っている。中を開けると、大量の酒瓶とともに、数日分の食料が入っていた。日付を見ると、最近販売されていた事がわかる。

あの親父が買い物に行っているとは思えない。それを言うなら、室内のゴミ袋もそうだ。ゴミをゴミ袋に入れるという事さえ考えつかないだろう。という事は。

「動くな」

 あまりにも唐突な『動くな(フリーズ)』に、おれは一瞬身構えざるを得なかった。油断をし過ぎた。黙って両手を挙げる。

「ゆっくり冷蔵庫から離れて、こっちを向きな」

 言われた通りにした。黒よりも明るい色をした髪を三つ編みにした女が、おれに銃口を向けている。拳銃。本日三度目。全く、物騒な世の中になった。

「キドニー・レイン……か?」

「黙れ。聞くのはあたしだよ。こんなボロ家に一体何の用か知らないけど、とっとと出て行ってもらおうか」

「銃を下せ、キドニー。おれは話を聞きに来ただけだ」

「話?」

「ルシア・アルゲンス」

 女の顔色が変わる。当たりか。

「彼女は今、どこにいる?」

「……あんた、ルシアの親父の手先だね?」

 キドニーは銃把を握り直す。回転弾倉の弾は六発全て込められているようだ。その首から下げた、銀の小さなペンダントが陽光に煌ているのが目についた。

「馬鹿な真似はよせ。怪我するだけだ」

「あたしが撃てないと思ってんの? どこの誰だが知らないけど、死にたくないなら嗅ぎ回るのはやめておくんだね」

 ……やれやれ、だ。

 一瞬の虚を突いて、おれは素早く右腕を走らせた。

「あっ!?」

キドニーの反応は目に見えるほど鈍い。引き金が指にかかる前に、おれの右手は回転弾倉を掴んでいた。

「言いたかないが遅すぎるぜ。おれを撃ちたいなら不意打ちで仕留めるべきだったな」

 キドニーの手から、拳銃をもぎ取る。意外な事に抵抗はなかった。若干俯いているせいで表情が読めない。まあ、いい。

「……さて、ルシアの事を話してもらおうか。彼女は今どこにいるんだ?」

 だが、キドニーは答えなかった。どころか、返って来たのは全く別の答えだった。

「遅すぎる、だって?」

 顔を上げたキドニーの目が、鋭くおれを睨む。袖口にでも仕込んでおいたのか、その手には黒い小さな瓶のような物が握られている。瓶の蓋には突起物が生えていて、まるでそれは注射針のように細く――

「馬鹿が。ノロマはあんたのほうだよ、おっさん!」

 小瓶から生えた注射針をキドニーは自ら足に突き刺した。その体が青く光ったかと思いきや、彼女の姿は視界から消えた。

「な――」

 おれの目が現状に追いつくより早く、右頬に強烈な一撃が見舞われる。辛うじて、黒い影が見えた。何だ、一体何が起こっていやがる?

 疑問を解決する暇は与えられない。続けざまに太腿と背中に蹴りを貰い、おれは上に載ったグラス類を撒き散らしながら、派手にテーブルに突っ込んだ。

「あんたにあたしは捕まえられない。このまま蹴り倒してやる」

 体を転げさせたのは一種の勘だ。次の瞬間、おれがさっきまでいた位置に石斧の如き踵落としが落ちる。安物のテーブルは叩き割られ、木片が飛び散る。

 踵落とし。確かにそうだった。おれに見えたのは、キドニーらしい黒い影が、猛烈な速さで攻撃した瞬間だった。

 見とれている暇はない。空気の圧が眼前に迫ったかと思いきや、またしても蹴り足がおれの顔面を襲った。吹っ飛ばされたおれの体がガラス戸を破り、おれはベランダの手すりにぶつかって情けない声を上げた。

 認めるしかない。彼女は目で追い切れないほどの速度で動いている。

 咄嗟に、おれは右肩のツマミを右へ倒した。モードマッスル。

 目を閉じ、意識を集中する――これはかつて異国の師より授けられた技だ。空間の全てを皮膚感覚で認識し、空気のわずかな変化さえ感じ取る技――その名を、〝悟空〟。

 鼻先に風圧を感じた瞬間、おれは右手でキドニーの蹴り足を掴み取った。蹴りが起こした微風が顔にそよぐ。キドニーが短い声を上げた。

「な、――んで?」

 息が切れている。目を開けて彼女を見た。顔は青く、汗がひどい。常人では考えられない速度を得たがゆえの副作用か。

「真剣白刃取り。聞いた事ないか?」

「そんなもの……っ!?」

 掴んだ足から、彼女の体から力が抜けていくのがわかった。倒れかけた彼女をおれは咄嗟に抱きとめる。

「おい、大丈夫か?」

「っ……放して」

「馬鹿言ってんじゃねえ。そんなんじゃ立てないだろ。待ってろ、今病院に連れて行ってや――」

「放せっ!」

 暴れるキドニーの体に変化が起こった。彼女の全身に青く光る象形文字のようなものの列が浮かび上がる。その手が急激にぶれた。高速化だ。腹部に叩き込まれた拳は女の細腕のものは思えない。ボール大の石を食らったかのようだ。

「ぐっ!?」

 おれの手から彼女の体が離れる。慌ただしくも凄まじく速い足音が聞こえ、瞬時に遠ざかっていく。

あっという間に、彼女はおれの前から姿を消した。

「くっ……全くよ」

 腹の痛みがようやく消えてきて、おれは義腕をノーマルに戻した。この地区の評判の悪さを充分に体験出来た。チンピラも小娘も等しく暴力的だ。おまけに、どいつもこいつも銃を突き付けてきやがる。

 部屋の中は今の戦闘のせいでさっきよりも荒れている。砕けたグラスや机の破片に混じって、キドニーが足に突き刺した注射針付きの小瓶が落ちているのが見えた。

中身はほとんどないが、微量の青い液体が残っている。針に触れないようハンカチで包み、おれは小瓶を拾い上げる。

瓶には何か文字が書いてあるが、おれには見覚えのない種類の文字だった。しいて言えば、キドニーの体に一瞬浮かび上がっていた象形文字のようなものに似ている。

 戦闘の最中に落としてしまったらしい拳銃は見当たらなかった。去り際、キドニーが拾ったのだろう。代わりに、食べ物や水の入った紙袋が落ちている。およそ三日分といったところか。飲んだくれ親父の面倒を見ていたのは、キドニーで間違いなさそうだ。

 そういえば、あれだけの騒ぎがあったにも関わらず、メイソン・レインが起きてくる気配はなかった。

「たく、どんだけ寝てやがるんだ……」

 思わずぼやいた、その時だった。

「……がはッ!」

 奥の部屋で何かを吐き出すような声がした。続いて、瓶が割れる音も。慌ててキッチンからリビングへ向かうと、体を折り曲げて震えているメイソンの姿があった。床には、今しがた吐き出したらしい真っ赤な血だまりが見える。

「メイソン!」

 素早く駆け寄り、脈拍と呼吸を確かめる。……大丈夫だ。まだ息はある。しかし、急がなければならない。

見たところ電話はない。おれはメイソンを抱え上げる。クルーザーまで戻れば何とか病院へ運べる。途中散らばるゴミを蹴散らし、おれは走った。


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