第72話 ギルドカードの威光
「どうして、というのは愚問ですかね」
「ええ、そうですね。」
メンデルさんから聞くべきことはこれだけだ、この一言だけ聞けば十分推測するに易い。どうせ、セスさんが面白半分で送り込んできたのと異常な力があるから荒事で対処してくれる要因だな。・・・え、荒事の時対処してくれるんだよな?
不安になってきた・・・最悪自分から面倒起こさなければいいか。
それにしてもメンデルさんってホントに黙ってると美人さんなんだけど、いわゆる残念な美人というやつなのだろう
「賢聖さんどうしますか?」
「やることは変わらないよ、ちょっと不安要素が増えただけで何も問題ない!さ、準備しようか」
準備といっても大したことはしない、今日は広告がメインだから大っぴらに広げてやるつもりだしね
「ん?やけに怪我人が多い気が・・・」
明らかに足をひこずって歩いている人から足腰が弱そうな人がいる。もちろん、全体の人数から言えば少ないがそれにしてもシェーレンの国にいたころより圧倒的に多い。この職業になってから職業病ともいえるが人の歩き方や動作を見る癖がついている、特に病気を持っている人を発見することに関しては無意識にしていることが多い、だけどそれを差し引いてもあまりに多い気がする
「加賀様はシェーレンから来られたんですよね。あそこは【ヒール】がありますからその恩恵を受けているのでしょう。」
あの国の【ヒール】というのは値段は高かったが確かにこの国を見ると恩恵があったというのは間違いなさそうだ、医療の発達していない国はこうなるのか
「じゃあ、手っ取り早く始めるか。」
「大きな声で呼びかけますか?」
うーん、あれでもいいんだけどなんか前の国で失敗してるしなんとなく気が進まないんだけど
「商業ギルドのカードを提示していればそのうち人が来ます」
メンデルさんが意外にもアドバイスをくれる。
商業ギルドのカードね、それで本当に来るのかなと思ってたけどそんな不安は杞憂に終わった。
「あんた商業ギルドの認可があんのかい、ここじゃ何やってるんだ?」
「え?こ、ここでは体の治療をしてます」
おいおい、しょぼい看板とギルドカードかけただけでこれかよ!
後で聞いた話だけど実は商業ギルドのカードってのは一定の品質をギルドが保証してるということになるから騙されたり粗悪品を売りつけられたりする可能性が低いんだと、そのギルドカードを持ってる店が新しく何かしてるってなったらそれだけで少しの注目になるんだと
「体だって?それにちりょう?ってのは何だい、まさかいかがわしい店じゃないだろうね」
なるほど、この国ではシェーレンと文化がやっぱり違うな。曲がりなりにも庶民でも【ヒール】で治療を受けれるっていうのは大きな差なんだろうな
「いかがわしい店ではないんですけど、そうですね・・・バンザイしてもらってもいいですか?」
俺の言葉を聞いて疑いの目を向けていたが俺の周りにセリアやアリスがいるのを見て少し警戒を解いたのか指示に従ってくれた、セリアとかとくに人が良さそうな顔立ちしてるもんな
顔と雰囲気で信頼勝ち取れるなんて人生勝ち組じゃないか!という見にくい嫉妬は置いておいて始めるか
「ほれ、これでいんだろ?」
立ってる姿勢から少し左肩が上がってて首元の筋肉も少し張っているように見えたからもしかしてと思ったけど、運がよかった。左の方が右よりも下がって一瞬顔をしかめて、今度は腰をそって手を挙げているように見せた。
「はい、ありがとうございます。多分ですけど左肩少し痛くないですか?洗濯ものとかする時とか痛くて右手ばっかり使ってみたり、高いものを取るときは決まって右手使ったりしてませんか?」
「そうだけど」
驚いた顔をするおばさん。安心させるように笑顔と少し声のトーンを下げて話しかける、プロのスイッチが入ったタイミングだ。
「その肩が痛いの治せたらいいですよね、そしたら肩も上がって洗濯物も痛くなくてできますし今まで右手でずっとやって疲れるのを全部解消できるとしたらうれしいですよね」
「そりゃいいけど、そんなのできないよ。あんまり変なこと言わないで」
「できますよ、少し評価が必要ですけど」
「ひょうか?」
「簡単に言えば今の自分の体がどんな状態なのか把握する作業のことですね、よければ少し見ましょうか?」
そこからはいつも通りの内容だった、腕を触ったり動かしたりしながら痛みの確認と生活背景を聞いてどんな時に何をしたらどこが痛むのか、どんなことに困っているのかなんかを話をして目星をつけた。
おばさんの方も親身になって自分の困っていることを聞いてくれるもんだから最初の疑心はどこへ行ったのか饒舌に話してくれる。
そして、原因が肩甲骨の上についている棘下筋によるものだと突き止めて【リハビリ】を発動させて筋肉の可動性、その他の筋肉の状態肩甲骨の位置を整えて終了した。
「ほら、これでよくなりましたよ」
「あら、ほんとね!肩が上がるわ!」
おばさんは少し大げさに腕を振りながら喜んでくれた、おばさんが大きな声で喜ぶもんだから近くにいた人たちから注目される。
ここが攻めで時や!




