第62話 試験・・・?ちょっとレベル低すぎじゃ
「セスさん、私は【ヒール】は使えません」
そういうと明らかにがっかりとしたというか胡散臭いものを見るような目で見てきた。
「ほう、じゃったら何ができるんじゃ?」
「【ヒール】ではありませんが同じようなことができます、そうですね、よろしければ実践してみても?」
「構わんよ、じゃがな連れてきた連中相手にやるのだとペテンにかけられるかもしれんからのぉ、こちらで用意するがええか?」
それは願ったり叶ったりだ。この手のものは身内相手にやってもしょうがない、それにどうせ治療するなら困ってる人にやりたいからな
しばらく待っていると一人の女性が来た。若い女性で、足をひこずって歩き部屋に入ってきた。
恐らくこの人を治療するというのが試験何だろうと思ったが
「(おかしい)」
「(賢聖さん、どうしたんですか?)」
ポロっと漏れてしまった言葉をセリアが聞いて居たらしく反応する。
「さて、見てわかるじゃろうがこの職員は足を怪我しておってのそれを治してほしんじゃよ」
できるじゃろ?といかにも挑戦的な声で話かかけてくる。
「ええ、構いませんよ。困っている人を助けたいのが私のやりたいことですので、治療する前に簡単に検査や質問をさせてもらっても?」
「ああ、そのぐらいええぞ。ああ、それといいたいことがあるならいつでもいいってええからの」
いいたいこと・・・・ああ、なるほど謝罪するなら早めに言えということか
でも、俺の仮説が正しければ言う言葉は謝罪じゃないと思うがな。
「では始めますね、私は加賀賢聖です。お名前聞いてもよろしいですか?」
女性はチラッとセスの方を見る。セスは頷き女性は答える。
「私はメンデルといいます。」
「ではメンデルさんと呼ばせてくださいね、足を痛めたと聞いたんですがそれは左ですか?」
「ええ」
「先ほど足をひこずっていましたもんね、痛みますか?」
「まあ、ええ」
こんな感じでいくつか質問した、痛みの程度、場所、何をしたときに痛むのか、いつから痛いのか、今回はこけたということだったのでどんなふうにこけたのか、とか一般的な問診をすました。
なんというか正直ここまででおよそ答えが出た。この感じに経験があるからだ
だが、一応触診、打診から関節を動かして痛みの原因を評価してみる。
「そうですか、それでは少し触ってもいいですか?痛かったら痛いと声をあげていいので」
また、メンデルはセスの方をチラッと見て反応を待つ。セスはまた頷き様子を見守る。
「構いませんがすごく痛いのであまり強く触らないでください」
「もちろん分かっていますよ」
ニッコリ答える、そうだあえて言っておくが若い女性を触るときに特に気を付けることがある。それは患者に不快感を与えないことだ、特に若いとなおさらだ。無条件で訴えられる可能性があるからだ、訴えられなくてもいやらしい触り方されたなんて噂が立った日には仕事ができなくなる。
プロはみんなそうならないための触り方、つまり治療のためのやり方を知っている。簡単なところでいうと点で触るのではなく面で触るのだ、点とは指先である。指先で触られたときの感じと手のひら全体で触られるのとでは触られた方の感じ方が違うのが分かるだろうか
是非身近なひとでやってみてほしい、患者に接地する面積が広いほうがいいとされてるんだ。
脱線したが許可を得たので軽く足を動かして評価してみる。ちなみに問診では腓骨の外果が痛いだの筋肉が痛いだの脛骨の骨幹部が痛いだのバラバラで足をひねってこけたと正直聞く人が引けばん?と思うだろう。メンデルに限らず素人はそこの知識が当然ないから当然って言ったら当然なんだけどね。
最初に歩いているときから違和感はあった、問診で違和感は疑問になり、触って確信した。
詐病だな。
この感じに似たようなものを感じたのは学生の時に学生同士での練習を思い出したからだ、学生同士での練習では自分が患者になりきる、当然実際にその病気ではないからぼろは出るし動きもおかしい、それでも当時はそれが普通だと思ってて練習をする、まあ学生ってのはそんなもんだ
で、実際に臨床に出て現実を知る。まあそれはいいんだけどさ
「さて、メンデルさんどこが痛いんですか?」
「え?ですから足がですね」
「んー、そうですか。わかりました、では少しセスさんに怪我のことで少し話してもいいですか?」
二人の関係性が分からない以上本人に許可を取る必要がある、こんな世界だけどインフォームドコンセントとかは守っておいた方がいいだろ、知らんけど
「・・・はい、良いですよ。」
「申し訳ないんですが外でお待ちいただいてもいいですか?セリア、肩を貸してあげてもらってもいい?」
「は、はい!」
セリアは相当焦っていたようだ、いつもならサクッとスキルが発動して治していたのに今日に限っては発動しないしもしかして俺の調子が悪いんじゃないのかと。アリスも同様に思っていた様子でおどおどしていた。
そんな二人を横目にメンデルさんをいったん外へ出るように促す。
そしてセスさんに率直に伝えた。
「セスさん、よかったですねメンデルさん怪我してないみたいですよ。歩こうと思たら歩けますし多分何なら走れますよ」
「ふむ・・・どうしてわかったんじゃ?」
「どうしてってやっぱり詐病だったんですか・・・どうしても何もあれじゃレベル低すぎますよ、プロなんですからやるならもっと本格的にした方がいいですよ」
流石に設定が甘いと言わざるを得ないな、そりゃ模擬的に病気になった呈での試験、OSCEというものがあるがそれは完璧になりきるためにだいぶ細かいところまで作りこんでくるからな
ちょっとやそっとでぼろは出ないし出そうとするだけ無駄だからな
「すまんすまん!試したんじゃよ、いや実のところ君が嘘を言っていいなかったは分かって居ったんじゃ。っとその前におい、メンデルはいっておいで!
改めて紹介しようかの、この子はメンデル、ワシの秘書じゃよ」
ホッホッホと笑うセス。
「どうも皆さま、秘書のメンデルです。今回はご不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。」
さっきまでの塩対応とは違い流ちょうに話し丁寧なお辞儀をした。あまりの奇麗な一連の流れに俺たちはその姿に見とれていた。
「ゴホン!さて、加賀よ。先も言ったがワシは噓が分かるから今回は単純に実力を知りたかったんじゃよ、試して悪かったの。それとすまんが今一度どうやって治療するのか見せてほしんじゃがええかの?」
どうもこの人は憎めない人のようだ。
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