第50話 倫理との葛藤
移動しながらやったこともない義手製作に取り掛かったのだが
「え、想像より全然難しいんですけど」
義手に直接弓をつけて作ってみたがまあ、耐久性ないわ、重いわ、スキルで補助があっても性能低いわで使い道がないガラクタばかり作ってしまってる
もうこれは俺の手に負える代物じゃないな・・・明らかに職人の技術が必要だ。素材は重いし、接合部の部分も布でくるんでるだけだから振動があれば当然擦れて痛いし・・・
「賢聖さん、これ以上は難しいのではないですか?」
「私もそう思いますわ、義手ができて体のバランスが取りやすくなっただけでも十分ですわ。それに一回弓を弾けるだけで私には十分すぎます」
確かに俺は運動することを指導するプロではあるがものづくりなんてド素人だからな、そりゃ簡単なインソールとかは作れても義手みたいなたいそうなもんは作れないか
「すまんな、期待だけ持たせてしまって」
「構いませんわ、さっきも言いましたけどバランスがとりやすくなったので随分と歩きやすくなりましたしその分皆さんに迷惑かけなくて済んでそれだけで十分ですわ」
「賢聖、今できることがそこまでなら先に進んで街で一番の鍛冶屋にでも頼むのが一番いいんじゃないかい、ここでできない人があれこれ考えるのは得策じゃないと思うが」
ふむ、それもそうか。ここで考えててもいいものができる保証はないし進むか
アリスは移動中は基本的腕のみの義手をつけて緊急時になれば使い捨ての弓をつけることにした。これでもアリスの中では大きな変化で自分の力で戦える手段が残されているだけで心境が随分と変わったらしい。そもそもの問題としてアリスの心境を気遣っての義手作成だったから当座はこれでよかったのか
「賢聖少し、義手作成に夢中になりすぎたのではないかい?」
「バレてたか、まあ、その通りだな。目的を忘れてたわありがとな」
「なに礼はいらないさ、それに誰にだって向き不向きはあるさ全部が全部君だけでできてしまったら私たちの立つ瀬がないさ」
「賢聖さん、また頑張りすぎましたね」
セリアはフフ、と微笑んで見てくる。なんとも親がしょうがない子ねと言っている表情と同じような・・・え?精神年齢三十歳の俺が十五歳の女の子にそんな風に見られらた顔真っ赤だよ!
「ッ!早くいくぞ!アリスしばらくそれで大丈夫だな!なんかあったらまた行ってくれ!」
よし行くぞ!
気恥ずかしさを誤魔化すために早足で歩いたが
「おっと、賢聖さん、あぶねえぞ?」
足が滑って踏み外しそうになったのをエレンが支える
「ここらは足場あぶねえから気を付けてくれよ」
恥ずかしさで全身から汗が出る、ぐぬぬ、こういう空回りも辛い!
「賢聖さん、何か私たちを取り囲むように来ています!」
今までの和やかな雰囲気が一変して切羽詰まった声がセリアから聞こえる
「どんなのだ」
「わかりません、ですが確実に近づいてきています!」
「賢聖さん、危ないですわ!エレン!」
「分かってら!」
エレンが俺の前に飛び込んできて矢を切り落とす。
「これは、矢か!」
「ということは相手は人間ということになるね」
切り落とした矢を拾ってアマルフィがつぶやく
「教会の人たちが追って来たのでしょうか、ここで結構な人がいるように感じます」
教会、こんなところで教会の連中に囲まれたら圧倒的に不利だぞ!?
「それはないだろ、こんな国境付近にあいつらが来るはずがないさ、自国から疫病神が出ていくんだぞ、それにあわよくば野垂死ぬ可能性があるのにわざわざ危険は冒さないだろうね」
「じゃあ、どんな連中なんだよ」
「そりゃ、いつもの連中だろうぜ。こんな辺鄙なところでそこそこの人間がいるとなると決まって賊だろ」
「ええ、そうですわね。ここらを拠点にでもしているんでしょう。賊に遠慮は無用です、相手は容赦しませんから躊躇わないでくださいまし」
この子たち肝が据わってすぐだろ!俺なんておどおどしていたし対人なんて・・・対人っていくら相手が賊、つまりは犯罪者だとしても殺しは殺人になるよね
「自分たちの身が大事なのは分かるけど、相手を殺さないことって・・・」
「そりゃ無理だぜ、そんな悠長なことしてたらこっちがやられるぜ。相手は死に物狂いで向かってくるんだ、ルールなしの殺人集団に情けなんてかけてこっちがやられるなんて笑い話にもならねえよ」
エレンははっきり言った
「君、もし仮に私たちが賊に捕まると男は殺されるだろうが私たちの末路は悲惨なものだよ、辱められて奴隷になり、知らない土地でぼろ雑巾のように扱われて死ぬのさ、そのことを考えてみてくれ」
アマルフィは俺にそう諭した。
人を殺すなというのは医療従事者としての倫理観と俺のエゴだ、日本ではそれでよかったんだと思う、だけどここは異世界、その判断が自分たちの身を危険にすることなら
「すまない、やってくれ」
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