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第44話 決断

静かな時間を過ごす中で、いろんなことを思い出しながら過ごした。思えばこの世界にきてこんなにゆっくり時間を過ごすことはなかった、いつも何かに追われている状況だったからな

別に今が暇ってわけではないが俺にはこんな時間が必要だったんだろうな


「賢聖さん、そろそろ二人を起こしていきましょうか」

「ん?少し早いんじゃないのか?」


まだ朝日が出る前だってのに


「昨日の遅れを取り戻さないといけませんからね」


この子は!


エレンとアマルフィを起こして移動を開始する


「もう、大丈夫なようだね。さすがセリアだ、私にはできなかっただろうから」

「なんだよ、アマルフィも気が付いていたのか、だったら言ってくれればいいのに」

「何を言っているんだい、そこのガキも気が付いていたさ」


それもそうか。


「賢聖さん、すみませんでした!俺、遠慮して言えなかったんだ、でもそれじゃ本当の仲間じゃないって気が付いて、だから」

「いいって、そこはお互い様だって、そんな焦んなくて大丈夫だ」


エレンって感情が不安定になると言葉がうまく出ないんだな


「ありがとう、改めてこれからよろしく」

「ああ、よろしくエレン。二人も改めてよろしく、これからは遠慮なしだ」


新たにチームとして結束を再確認して出発をした。

昨日こけた悪路を進んでいく、四人の中で一番慣れていないためエレンやアマルフィに手を貸してもらいながら進む、昨日までの俺ならきっと手を貸してもらわずに自分の足で登っていたと思う。

元々病院で働いていても人に頼るということはなかった、だってそうだろ?自分が勉強して、治療の技術を習得すれば担当の患者は救えるから、だから頼られることはあっても周りに頼ることはしてこなかった

ここにきていい経験をさせてもらってると思うな


「遠くで何か音が聞こえなかったかい?」


アマルフィが唐突に言い出した


「音ってどんなのだ?」

「分からないが、悲鳴のような声・・・のような気がするのだが」


そういった瞬間エレンは飛び出していた。


「おい、エレン!どこ行くんだ!!」

「もしかしたら!すまねえ、賢聖さん!ちょっと見てくる!」


次の瞬間


『キャァァ!!』


今度は明らかにはっきりと声が聞こえた


「アリスたちの声か!?とにかくエレンを追うぞ!一人にしておけない」


嫌な予感がする。


「捕まりため、緊急時だから私が飛ばす」


アマルフィからの提案、つまり教会から逃げたあの手を使うわけだ。

一瞬ためらったがセリアと俺はうなずき覚悟を決めてしがみつく、相変わらずのスピードでぶっ飛びそうになるが今はそれどころじゃない

ついにエレンの姿をとらえた・・・が


「賢聖さん・・・アリスたちを治してくれ!賢聖さんならできるよな!」


そこにはアリス含む『黄金の獅子』のメンバーと大きな魔物がいた。

魔物は息絶えており無数の弓が刺さっているし体中傷だらけだった、それよりも目を引くのはアリスたちだった、こちらも体中傷だらけでアリスに至っては右腕がなかった。


「エレンこれはどういう状況だ」

「わかんねえ、俺が来た時にはこうなってたんだ!とにかく賢聖さん助けてくれ!」


まず三人の状況を確認する、男の二人の方は完全に息がなくて体が冷たくなっていた。


「エレン、この二人はもう・・・アリスを見してくれ」


エレンは今にも泣きそうな顔をして縋るような顔をしている


「この子だけでも・・・」


呼吸と脈を確認する、弱くはあるが脈は触れれたし息もある!まだ生きてる!

体の状態を確認する、右腕の欠損、腹部の外傷による出血、背部の打撲と左大腿骨骨幹部の骨折、もちろん詳しいことは分からない、簡易的な評価にもなる。今衰弱している原因は出血によるものだと考えると出血を止めることを最優先にしないといけない


「早く、早く発動してくれ!」


冷静に落ち着きながらスキルが発動するまで情報を整理する。

問題は分かっていた、右手の状態だ、欠損している腕を元に戻すことはできない俺自身ができるビジョンがないだ、それは人間の構造上ありえない

だったらその腕はどうなるのか、それを考えないと発動しない気がした。

きっと【ヒール】であったり他のスキルだとそんなことは必要ないだろうし何なら腕すら治せるかもしれない、だけど【リハビリ】にはそれができない


「エレン、こんな時にすまないがアリスの腕を治すのは難しいかもしれないがそれでもいいか?」


エレンは真っ直ぐこちらを見ながら


「アリスは【弓術】っていうスキルで弓を使うんだ、だから腕が治らないのは辛いと思う、だけど!俺はアリスに生きていてほしいんだ!」

「わかった、後の責めは俺が受けよう」


助かった後、本人がどう思うかは分からない、だけどせめてその責任は俺が持とう。

そのあと、スキルが発動した。


スキルは問題なく発動した、だけどそれはなくなった腕を元に戻すことはできなかった。

病院で働いているとき手足を欠損している人を見たことがる、普通は手術で欠損している場所を縫合するんだが俺にそんなことはできない、だけどアリスの腕は縫合後のように奇麗な状態になっていた。

【リハビリ】のスキルで元の状態に戻すということが能力だと思っていたけど、完全に一度欠損したものはもとに戻らないのかもしれない、それとも自分自身が想像できなかったらできないのか・・・

俺が【リハビリ】ではなく【ヒール】を持っていたらもしかしたら回復できていたのかも、そんなことを堂々巡りに考えていた


「ぅ、ん」

「アリス!アリス目が覚めたのか!」


エレンが目を覚ましたアリスの体をゆすりながら声を掛ける


「エ、レン。あまり揺らさないで」

「ああ、おう」

「アリス、目が覚めたか?気分はどうだ、状況は思い出せるか?」

「気分は・・・悪くないわ。私、あなたたちと勝負してて、天然霜を探しに・・・それで、魔物に会って、リットとシュミットが!二人はどうしたの!無事なの!?」


徐々に記憶を思い出して、直近のところまで来たところで声を荒げた。


「それは・・・」

「言いにくいんだが、俺たちが来た時には二人とも息がなかったんだ、君もひどい状況だったんだ」

「二人が・・・死んだってこと・・・二人は、私を庇って・・・どうしてこんなことに、私が無茶したせいで・・・」


そういって、アリスは涙を流し涙をぬぐおうとして気が付いた。


「ッ!!私の!右腕が、ない!どうして!?私・・魔物に腕を食べられた・・・?でも、だったらどうして生きているの!?」

「状況が呑み込めてなくて混乱しているんだ、少し順をおって話そう、まずは落ち着いて?な?」


患者に接するように、手を取り相手の目を見て優しく、ゆっくりとした口調で話す。

アリスが話せば傾聴し、うなずき、繰り返し、要約して話をする、これが現場で求められるセラピストのコミュニケーションの取り方だから

アリスは今、友人の死と自分の病気、障害の受容ができていない状態にある、これは病気になった人に誰しも起きる状態だ。


「命を助けてくれてありがとう、だけど、右腕が使えないなんてもう私には生きる価値がないわ・・・こんなことならシュミットとリットと一緒に死にたかったわ」


やっぱりというか予想した一言がアリスの口から出た。エレンはその言葉を聞いてつらそうな顔をする


「甘えるのも大概にしたまえよ、私は正直なところ君が死のうがどうでもいいと思ったよ、君は私たちを馬鹿にしたからね。私自身命にそこまでの執着心もないからね

だがね、エレンはそんな君に生きてほしいと願ったんだよ、例え腕がなくなったとしても。賢聖は君の腕が治せないのは自分のせいだと、だから君からの責めは一人で受けるとも言った。

いいかい、君は生かされたんだ生かされたのであれば、死んだ方がいいなんて甘えたことを言うのはやめたまえ。

君の仲間は君を助けたかったんじゃないのかい?だったらそれに報いてあげるべきだと私は思うがね」


アマルフィはアリスにしっかりとした、強い口調で伝えた。


アマルフィが元々、命というのに執着心が全くないのは知っていた、だから他人の命に自分の命を賭けた俺に興味を持ったし行動を共にしてくれている。今回もエレンの行動にきっと思うところがあったんだろうな


「ん・・?アマルフィ今、エレンのこと」

「私だって敬意を示す時ぐらいある、が当の本人は気が付いていないみたいだし蒸し返してくれるな?」

「ずっと名前で呼んであげたらどうですか?」

「勘弁してくれ、私はあいつをからかうのが頼みなんだよ」


エレンは自分が名前で呼ばれたことに気が付かずただアリスの状態を見守っていた。名前で呼べとさんざん言っていたのに気が付かないなんてな


アリスはそのあと気が済むまで泣いた、シュミットとリットを見てまた泣いた。

お読み頂きありがとうございます!
















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