第43話 焦燥感
俺が落ち着き次第、仲間の状態は全快した。いまだに自分には【リハビリ】が使えないため俺だけは全快とはいかないものの休んでだいぶ楽になった、体力がきついっていうより死線をくぐったって精神的に披露したって方が正しいな
「賢聖さんもう少し休んでいこうか?」
エレンが足を止めて俺に声を掛けてくれる。ほかのメンバーも心配そうに見つめる、だが俺のせいで進めないのは申し訳ない、何より相手のアリスは先に進んでいるから現状休めばさらに差が開く
「大丈夫だ、俺は二人のように戦闘しないし、セリアのように常にスキル使うわけじゃないからな」
「そっか・・・わかった、じゃあ進もうか」
そんな顔をするなエレン、心配しなくても大丈夫だ
足も動く、頭も働くし視界も良好、ここで休む理由の方がない
「この先はさらに足元が悪いと思います、皆さん気を付けてください」
セリアが警告するように今までよりも足元が悪い、根っこはいたるところにあるし大きな岩もある
「よし、登るぞ!」
自分に言い聞かせるように気合を入れなおして歩いた。
「え?」
足が滑って転びそうになる、アマルフィが予見してたと言わんばかりの速さで俺を支えた
「今日はここまでだ、休むぞ」
「何言ってるんだよ、俺なら大丈夫だしそれにアリスたちに先越されてるんだぞ?」
「ここで怪我したら元も子もないだろう、私たちは多少怪我しても賢聖がいるから無理はできても賢聖は怪我したらどうにもならないんだぞ?無理は厳禁だ、それに相手も無理して強行するとは思えない」
有無を言わせない表情をアマルフィする。
そこまで言われると渋々受け入れるしかない
「じゃあ、今日はここらで休もうか、セリアどこか休める場所はないか」
「少し離れた場所に開けたところがあるのでそこに行きましょうか、魔物もいないことは確認できているので大丈夫です」
促されるまま目的地に向かって歩いた。
野営の準備はほとんど手伝う間もなくみんながテキパキとしてくれてご飯を食べた。
見張りはエレンとアマルフィが先にしてくれるということなのでセリアと一緒に休むことになった、セリアは気を張っていたのかすぐ寝息が聞こえた。俺は今日の自分のふがいなさを思い出していた、俺が足を引っ張っているんじゃないのか、そんなことを思っていると気が付くと意識を手放していた。
二人が寝たのを確認してエレンがポツリと言う。
「賢聖さん、大丈夫かな」
「君は賢聖に対して遠慮しすぎだ」
「あ?遠慮なんてしてねーよ、そんなことするのは本当の仲間じゃねえよ」
「そうかい?君は賢聖に恩があるからか、どこか一歩引いて賢聖と関わっているように見えるよ、私は普段君のことを馬鹿だアホだと罵倒しているが冒険者としての能力は高く買っているんだよ、だから一冒険者として聞くが今の賢聖の状況はよくないと思っているんだろ?」
アマルフィはエレンに敬意をもって話しかける。相手の目を見ていつものようなからかうような声ではなく
エレンもアマルフィの本気に気が付いて茶化すのをやめて答える
「分かってるぜ、賢聖さんは焦っているんだ、自分だけ何もできないと思ってるんだ、冒険者として俺とあんたは前線で戦うことでパーティーに貢献しているしセリアは道案内や警戒なんかの役割がある、でも賢聖さんは自分にはないと思ってるんだ。そんなことねえのにな、俺たちが後のこと考えずに戦えてるのは賢聖さんのおかげなのにな」
アマルフィはふふ、と笑う
「やはり君はよく人を見ている、どうしてそこまで正確に見抜いているなら直接伝えてあげないんだ」
「あんたこそ、とっくに気が付いていたんだろ、どうしていわねえんだよ」
二人とも言えなかった、賢聖が何のために頑張っているのか分かっているから。だから遠慮とは少し違う、賢聖の意志を尊重したんだと自分に言い聞かせていた。
「結局そんなところが遠慮してたってことだよな」
「君だけじゃないさ、私もさ。賢聖はいつも人のために一生懸命だ、私にはそれができない、だからついつい魅入ってしまうんだよ。
だから、この見張りの分け方にしたんだよ」
アマルフィも当然気がついていた、だけど自分じゃ言えないのが分かっていた、もちろんこのままでいいとは思ってない、パーティーになったのだからはっきり言うことも求められる
だけど今、賢聖の心に響くことを言えるのは彼女しかいない
「交代だよ、起きてくれたまえ」
アマルフィの声に飛び起きた、山の中で魔物も多いのに熟睡していたからハッとなって目が覚めた。
「賢聖そんなに飛び起きなくてもいいさ、緊急時ではないからね、外にいるあれを呼んできてくれ。私は先に休ませてもらうね」
アマルフィは颯爽と寝床について、セリアはエレンを呼びに出てすぐに交代した。
「賢聖さん、おはようございます。眠れましたか?」
「ああ、寝れないと思ったいたんだがぐっすりだ、セリアも調子良さそうだな」
「ええ、教会の牢獄に比べたらここでも天国みたいなものですから。身の安全や安心感というのは寝る場所以上に影響しますね」
セリアには教会にとらえられて随分と心細い日々を過ごさせてしまった、自分の命を他人に握られている間隔は恐らく想像を絶する恐怖があっただろうに、そんなことはおくびにも出さない
「セリアは本当に強いな」
何を言い返すわけでもなくセリアはただ微笑んでた。
それから焚き火の木がはじける音だけが聞こえる時間が過ぎた。
「何も言わないのか?」
正直、昨日の失態についてセリアから何か言われるものと思っていた、気を使わせているのは分かっていたからな
「何か言ってほしいんですか?」
「そういうわけじゃ・・・」
ふふ、おかしな人。そういってまたもセリアは微笑んだ
きっと俺が言うのを待っているんだ、責めるでもなく催促するわけでもなくじっと待っている
「俺はみんなの役に立ちたいんだ」
そう思ったら考える前に言葉が出ていた。
「エレンとアマルフィは戦っている、セリアはそのサポートしてパーティーのために動いているよな。俺はその間何もできていない、戦闘に参加ないしサポートもできない。なのにやっと活躍できる場面になってもすぐにスキルが発動できなかった・・・
俺は役に立っているのか?このパーティーに貢献できているのか、そう思うと居ても立っても居られなかったんだ。
分かってるさ、俺が空回りしていることぐらい、でも何かしたいんだ、役に立ちたいんだ!」
最後の方はこれを荒げてしまったがそれでもセリアは静かにうなずきながら話を聞いてくれた。
「私は逆だと思います。賢聖さんは私たちのためにと思っていますけど本当は私たちが賢聖さんのために何かしたいんですよ。」
「どうしてだ」
「そんなの当たり前ですよ、賢聖さんはそう思わせる力があるからですよ。
私思うんです、スキルはあくまでも個性の一つだと思うんです、戦うのが得意な人、人を惑わす人、体を治せる人、どでもその人を表すものではないです。大切なのはその人がどんな人なのか、そして賢聖さんには賢聖さんの役割があります」
どーんと構えてください!そうセリアは励ましてくれた。
きっと何一つ解決していない、だけど俺の気持ちはすっきりした、俺の役割は戦闘に参加することでもないし魔物の位置や道を示すことでもない
「そうだな、俺はみんなを癒すよ。それが俺の個性だし役割だと思うから」
「ええ、それでいいと思ます。ですが一つ忘れてますよ?」
「何を忘れてるんだ?」
「このパーティー、アスクレピオスの杖のリーダーです。一人じゃないんですよ、私たちは仲間です、頼っていいんですよ、出ないと私たちも賢聖さんを頼りずらくなりますからね」
セリアには本当に気づかされてばっかりだ。そうだ、もうこの世界に来たばっかりとは違う、俺には役割も立場も責任もある、俺が焦るとみんな焦る、それじゃリーダー失格だな
「どうせ、賢聖さんのことですから反省ついでにリーダー失格とか思っていませんか?」
「・・・心読めたりする?」
「ふふふ、どうでしょうね。でもそんなこと思わないでくださいね、それだと私たちもメンバー失格ですからね、考えるだけ無駄ですよ」
全くこの子は!
俺は深く息をして、セリアに一言だけ「ありがとう」といって、そこからまた焚き火の音を楽しみながら夜が明けるのをまった。
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