第41話 ここからスタート!
あれからエレンが寝息を立てたのを聞いて俺も寝ることにした。寝息が聞こえるまですすり泣く音が聞こえたが声は掛けなかった、気丈に振舞ってるエレンの気持ちを汲んだつもりだ。
誰しも辛い瞬間はある、大人だけはこの先そんな辛いことばっかりじゃないって知ってるけど若いころは今見える世界がすべてだと思い込んでしまうからな、くしくも人間を成長させるのはこういったつらい体験だったりするんだよな
「・・・さん!賢聖さん!」
エレンの焦った声が聞こえる。
「賢聖さん!このままだとクソアマのスキルに頼ることになるぜ!?」
クソアマ・・?アマルフィ・・・スキル・・?
「はッ!」
「やっと起きたぜ!こんな日に寝坊しそうになるってどうなってんだ、そこまでなると大物の風格だよな」
エレンが心配で寝れなかったなんて本人に言えるわけないし、愛想笑い浮かべながら超特急で準備をそろえた。
もちろん、杖もバッチリ装備してだ
「女子連中はもう揃ってるのか?」
「ん?まだ言ってねえけどセリアいるし大丈夫だと思うぜ、時間にはきっちりしてるはずだからな。クソアマはほっておいてもスキルで追いついてくるだろ」
部屋を出ると、完璧に準備したセリアと明らかに寝起きですって感じのアマルフィがいた。
年少組がうちはしっかりしてるから年長組は安心できるな、そんなことを言ったらセリアの顔はにっこり笑っているのに目は笑っていないという、見られた方は全く笑えない表情をしていたので、冗談ですちゃんとしますとアマルフィと俺は頭を下げた
なんとも情けない
「さあ、準備できたな、行くぞ」
アマルフィは掛け声だけは一人前だね、と茶化すがたとえそうでもお前にだけは言われたくないと俺は思うがな!
「あら、まさか来たのね。雑魚集団だから少しでも先に進むのかと思ったわ、それともあきらめて敗北宣言をしに来たのかしら、だとしたら傑作ね!」
朝からこの女の子ほんとに元気だよな、若干の寝不足があるしキンキンした声が頭に響く・・・さっさと進めよ
「では始める前に、勝負の内容は天然霜を入手することでいいな?俺たちが勝ったらエレンへ今日までのことと昨日の俺たちへの謝罪、君が勝てば君たちの方が上だと認めればいんだよな」
ルール確認をすると見せかけて相手の要望を勝手に改ざんしておく、本来は土下座までしないといけないのだがそんなこと俺はできても他の仲間にはさせられないのでそっと消しておく
「ちょっと勝手にすすめないでよ!」
今までチープな煽りにみんな乗ってきて自分のペースで話を進めてきたんだろうが、こちとら煽り耐性は十分あんだよ。日本ってのはマウント取りたくてどうしようもない連中がうじゃうじゃいるからなこの程度煽られたうちに入らん!
「じゃあ、始めようか」
それにしても頭に響く声だよなー
「ちょ!何言ってんのよ!私の声聞こえないの!?待ちなさいよ!」
こんなに頭に響く声ならエレンのことは気にせずにさっさと寝ればよかったな、ほんと二日酔いじゃなくてよかった
二日酔いだったら耐えれなかったかもしれん
「スタートだ!じゃ、俺たちは先に行くよ。」
よし、先にスタートしておくか、もうお何言ってるか全く聞いてなかったとも今更言えないから話ついていけないんだよな
「はぁ!?なんて身勝手な!・・・え、ほんとに始まったの?ぐッ、私をこけにしたわね!行くわよ!」
なんか怒ってたけどまあいいや、みんなもなんか相手にしなかったことが好感触だったみたいでほめてくれた。
いや、決して人の話聞かないなんて褒められることじゃないんだろうけど、今回ばかりは正解だったみたいだな
今回の依頼は天然霜と呼ばれる特殊な植物につく露を採取することだ。特殊な植物というのは氷結草といって山奥に存在し周りには強力な魔物が存在するため、戦闘は不可避な状況らしい、非戦闘員が二人いるこっちには幾分か不利な状況だが、ここで勝たなきゃエレンが救われない
「山奥と言ってもどこにあるのか知っているのかい?」
「ええ、大丈夫です!昨日調べておきましたから、この街で依頼が出るのできっと近くの山だと思って探していたんです、案の定近くでした」
「近くと言っても日帰りレベルじゃないんだろう?昨日は数日レベルの食料を買い込んだから、セリア具体的にどのくらい離れているんだい?」
「片道1~2日ぐれえだろ、昨日の食料の量はな。てか食料買った時点で予想付くだろ」
すみません、俺はさっぱりわかりませんでした。というか完全に何にも考えてなかったわ
アマルフィも買い物するときはそこら辺、セリアとエレンに任せてたからな!藪蛇をつつくのもあれだしここは俺は何も言わずに知ってましたよ?的な雰囲気出しておくか
道中の移動は非常に速かった、セリアのスキル【植物採取】の応用で魔物のおおよその場所を把握しているから無駄な戦闘は避けれるからサクサク進めた。
途中どうしても避けられない魔物がいても先制攻撃を必ずできるから圧倒的に有利に戦える、奇襲をかける戦闘スタイルはエレンはアマルフィに比べて慣れているように感じたな
「エレンさん、こういう戦いかた慣れているんですか?」
「ん・・・そうだぜ、あいつらの中に【探索】のスキル持ってるやつがいんだよ、それでこの戦い方になれてるんだろうな」
あいつらってのは元パーティー『黄金の獅子』のメンバーなんだろうな
それにしても【探索】ってスキルがあるんだな、よく話を聞くとアマルフィと同じ再発動まで時間がかかるタイプだけどものや人の場所が完璧にわかるらしい
レーダーのマップみたいだな、これだけ聞くとセリアの方が優秀なスキルだと思うがそんなことはない、セリアの【植物採取】はあくまで植物の状態や場所を把握するものだから直接ものや場所を把握するわけじゃない、つまりスキル使用者の能力と単純に相手が動いていない場合分からない、植物の状態が変化していない状況では分からないんだ
だからおおよその場所しか分からないです、とセリアが言っていた。だけどそこはエレンとアマルフィがカバーしている、二人にとって時にアマルフィにとってはずっとソロで冒険者をしてきたからおおよその場所が分かるだけで十分なんだそうだ
ここまでで気が付いただろ
「俺なんにもしてないな」
厳密にはやることはあるんだ、アマルフィのスキル後のリキャストタイムをなくしたりエレンの擦り傷治したり、セリアが疲れださないように体の調子整えたり・・・
杖に至っては本来の使い方通り、地面について使ってる。だって戦闘参加しないし山登りきついしやりがいって大事!
「いったん休憩はどうだい?私たちは大丈夫だが我らがリーダーはお疲れのようだ」
アマルフィが気を使ってくれてる!アマルフィいいやつ!
と思ったけどどうやら本人がお腹がすいたみたいで俺を出しにして食事をとろうとしている、いいさ休めるならなんでもな!
「悪いな、三人は休んでていいから俺が食事作るからな」
賢聖さん疲れてるんじゃ・・・、エレンが不思議そうにつぶやいているが俺は疲れたんじゃないんだ!やることがマンネリ化しているのが!やりがいがなくなっているのが!それこそが問題なんだ!
セリアは全くしょうがありませんね、と俺とアマルフィの思惑を見通して食事の準備を手伝ってくれた。
仲間やコミュニティの役割ってのは本当に大事だ、役割をもらうだけで自分が必要とされていることが認識できるからな、よく高齢者向けにそんな話をしたり指導してたりしたな。今らな本当の意味で境遇が分かる気がするよ
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