第36話 考え付いた名案?迷案?
しばらく歩いた、こうやって楽しく危機に迫られることなく旅をするのはいつ以来だろうか
魔物は凶悪なものばかりってわけじゃないし食べれるやつもいる、十分食べるに困らない状況だ。アマルフィとエレンのいつもの言い争いも今じゃ心地いいぐらいだ
『賢聖さん!』
エレン、セリア、アマルフィ三人が同時に俺の名前を呼ぶ。
「予想通りというか、来たぜ」
「数はどのくらいだい?」
「およそ、30人ぐらいです。」
「それはなんとも豪勢なことだね、賢聖どうするんだい」
どうするって何の話だよ、全くついてきてないんだけど!と思ったらセリアが教会の追手だと思われます、と教えてくれた。お前ら主語を言え主語を!
「教会って、もう追ってこないんじゃなかったか」
「賢聖さん、あいつらは面子潰されてるし何より教会に立てついた人間をほっとくわけないぜ」
「君はずいぶんお気楽なもんだね、想定しててリラックスしてるのかと思って知らないうちに大物になったなと感心していたんだがね。全く君ってやつはな」
アマルフィそんなやれやれ、って露骨にしなくてもいいのに。
でも次の街に行こうにも今急いでどうこうできる距離じゃないしな、打てる手は
「逃げるか、迎えうるか、降伏するかですね」
「降伏は論外だね、そんなことすれば間違いなく殺されるからね。となれば打てる手は二つだ、そのうち逃げるのはお勧めしないね、敵が三十人いてどうせ【探索】みたいなスキル持ちがいるに決まっているからね、じゃないと追ってこれないだろうしね。ということで迎え撃つことをお勧めするよ」
「馬鹿言うんじゃねーよ!数は力だ、そんなことも分かんねーのかよ、力押しで来られたら普通に全滅に決まってんだろ、逃げるに決まってるんだろ」
逃げてもいずれ追いつかれる、それは前回死に物狂いで逃げたときに痛感してる、あの時川に落ちなくて普通に逃げ待っていたらいずれ捕まっていたというのは間違いなく確信できる。だけど迎え打つなんてエレンの言うとおりだ、数は力だ、漫画やアニメなら少数が大勢を倒すなんてのはあるが普通はありえない。ましてや向こうにもスキルを持っているやつがいるならなおさらだ。
遠距離から攻撃する手段があったなら俺たちには手も足も出ないからな、スキルですべてが覆るなんて
「ん、スキルで?スキル、スキルか」
「賢聖さん、どうしたんですか?」
「そうだ、スキルだ!」
「賢聖、こんな時にビビッて頭おかしくなる時じゃないんだよ、こんな時こそ冷静になるものだ」
アマルフィが何か言ったが俺には何も聞こえない!そうだ、スキルだよ、俺たちの中に瞬間的にぶっ飛んだ能力を出せるやつがいる!そいつを俺のスキルと組み合わせて!
「アマルフィ、俺たちをひもで縛って引っ張ってくれ!」
「賢聖、ついに、か・・・」
「賢聖さん!大丈夫だ!まだ戻れる!正気になってくれ!!」
アマルフィは頭抱えてるしエレンは励ましてくれる。
「賢聖さん、私はどんなことがあってもあなたを支えますね」
力強くセリアは頷いて覚悟を決めた表情をしている。
あれ、俺なんか間違ったこと言ったか?言って、ないよな?あれ、俺なんて言った・・・?
俺たちを、ひもで、縛れ?
「ち、違うんだよ!おい!そんなあきらめた顔するな!頼む話を聞いてくれよ!頼むって!」
「もうすぐそこまで来てます!」
セリアが焦った声を出す。
「賢聖、具体的にどうするんだい?画期的な手段でないならもう逃げることは難しいから戦うしかないよ」
「いいか、まず俺たちを縛るかどうかして運べるようにする、そのあとはアマルフィのスキル【天衣無縫】で最大出力で俺たちを運ぶんだ、スキルは5分使った後リキャストタイムがあるけどそれは俺のスキル【リハビリ】で効果を打ち消す、つまり常時10倍の身体能力で移動できるってわけだ」
名案だろ?と続けたが三人は引いていた、信じられないくらい引いていた。
「私はいいけれど、二人はいいのかい?」
「わ、私も賢聖さんが決めたことなので信じてみます。」
「きょ、今日は俺にも気ーつかうんだな」
「こんな途方もない提案じゃなかったらこんなこと言わないさ、たぶん想像を絶する体験になるだろうからね。君の気持も聞いておかないと後で文句言われても困る」
「ふぅ、覚悟は決めた。問題ねーぜ」
何をそんなに怯えてるんだ?覚悟?何にいるんだよ、全く二人とも大袈裟なんだからそれよりさっさとここから離脱しないと戦闘になったら怪我しない保証なんてないんだからな
「準備はいいかい?」
「ああ」「やっぱ俺ッ!」「エレンさん、覚悟決めたのでは?」「うッ」
俺とエレンは袋に詰められてセリアはアマルフィに抱えられている状況だ。アマルフィに抱えられているのが一番安全らしい
それよりさっさと出発を!
「では!いくよ、【天衣無縫】」
そこからは地獄だった。確かに目的とした教会の手から逃げるということは達成した。だがあまりに代償は大きかった、俺は思い出した、一度アマルフィに抱えられていたことをあの時絶対にアマルフィに抱えられていくのはやめようと決意したのにあれから短い期間にいろいろありすぎて忘れてしまった。
状況はあの時より最悪だなにせ、袋の中だからな、例えるなら車のトランクに放り込められて悪路を爆走するようなものだ
効果がキレる前にアマルフィに触ってスキルを解かないといけないから俺は手だけ袋から出されている、アマルフィが握ったらスキルを発動するようにだ
時間にして1時間ぐらいだろうか、アマルフィは問題なかったが俺たちが限界を迎えた
平衡感覚はなくなり、絶叫でのどがかれ、体には変に力が入ったため筋肉痛、全身の倦怠感がある、要するに疲労困憊だ
「もう、二度とこんなことしない」
「君は学ばないね、一度すでに体験しているだろうに、そんな君が提案するんだから二人も引けなかったんだろうね」
日本では車やジェットコースターなんかの早い乗り物があったからだろうか、疲労困憊なんのはそうだが二人に比べて体性はあったと思う。
セリアはアマルフィから離れて「もういや」と小さなかすれ声で連呼している。あの姿は普段のセリアを知っているからこそ見るに堪えない・・・
エレンは少し離れた場所で永遠と嘔吐を繰り返していた。エレンも戦っているときは素早く動くことができるのだが人に揺らされるのは違うらしい。
なんというか自分で車を運転するときには酔わないけど助手席に乗ると酔うみたいな感じなのかな、たまにそういう人いたよね
「この惨状を君が作ったんだよ」
「おい、アマルフィそういう言い方すると凄まじい罪悪感が襲ってくるからやめてください、本当に」
「フフ、今日はここで野宿になるかな。食事は・・・賢聖作ってくれたまえよ、セリアはあんな調子だし何より今私を見ると顔を真っ青にして震えるんだ、なぜだろうね、賢聖がこの作戦とったのに」
それはあなたが移動中にセリアのSOSを笑い飛ばした挙句さらに速度を上げたからでは?とは言えず、黙ってセリアとエレンの看病をしながら食事の準備に取り掛かった
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