表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/77

第3話 よせ!そんな目で見るな!

森をそれなりの時間歩いた。おそらく前の体だとこんなに歩くことできなかっただろう距離を平気で歩けるあたり自分の体じゃないんだなと実感した。


「そういえば加賀さんは身分証みたいなのあります?」

「いいえ、何もありませんよ?」

「本当の一文無しですね」

「ええ、全くその通りですね」

「・・・どうしてそんなに自身満々なんですか」

「悲観してもしょうがないでしょう。それにセリアさんが何とかしてくれると信じてます」

「あったばかりの人を信用しすぎです」


セリアはやれやれと言わんばかりに、ため息をしながら肩をすくめた。


「では、迷い人ということにしますね」

「迷い人とは?」

「あなたのような人です。」

「なるほど」


そんなものがあるなら最初から言ってくれ。さて、きっとなるようにしかならないというのは分かってはいるけど、そろそろこの先の未来に不安しかない


「そろそろつきますよ」


そういって、目の前に見えたのは大きな城壁だった。うん、間違いなく現代ではない。

フィクションで見る中世の感じがするけど、正直実際に見たことないしよくわからな。ただ、現代でこんな城壁がある場所なんて知らないな

城壁なんて現代においては無意味だしな、文明レベルは高くないことは分かったな


「セリアちゃん、お帰り」

「はい、ただいま戻りました」

「今日はいつもより早いね」


衛兵らしきおっさんと話してる、会話の雰囲気から親しげだし顔見知りか。ってことはもしかしたらこの街の出入りは少ないのか


「しっかり採れたかい?」

「ええ、いつも通り取れました。後はいつもと違うものを拾いましたよ」


え?拾ったってもしかして俺のことか?

いきなりもの扱い、なんとセリアさんは実は口が悪いことが判明!衝撃の事実!


「へぇ、でオタクは何者なんだい?」

「何と答えたらいいものか」

「彼は迷い人なんですよ」

「ああ、なるほどね。オタクも大変だね」


・・・え?迷い人って何なの?急に同情の目線されても。というかまともに説明されてないけど街に入れたし

何なの迷い人って、え?大丈夫なの?


と思って、街の中でセリアさんに聞いてみたら


「迷い人は突然頭がおかしくなった人のことよ。安心して、迷い人は同情はされても見捨てないのがこの街の特徴よ」

「・・・・」


いわゆる精神疾患的な扱いなのね。というか、仮にどの精神疾患だとしてもその対応は普通にアウトやで・・・

もう深く考えるのをやめよう。まずやること考えないとな

①この世界の情報収集

②自分の現状把握

③生きるすべを見つける

だな。③に関してはとにかくセリアさんから離れないようにして当面生きながらえることにしようか





街並みはやはりというか中世風だった。


「やっぱり別世界かー」

「どうしたんですか?」

「いや、自分の現状を改めて実感しているところです」

「はあ、それよりそろそろつきますよ?」


どこへ向かっているかというと薬屋に向かっている。決して俺の薬が目当てではない、俺は病気じゃないからな。採取した植物を買い取ってもらうまでが仕事らしい。

あんまり薬の知識はないけど植物を煎じてとかってかなり昔のものだよな。この世界だときっと抗生物質なんて魔法の治療薬になるんだろうな


そんなことを思いながら歩いていると目の前で荷物を持っている人がこけた。


「痛てぇ!!!!!!」


よくわからん木箱を持っていてこけた拍子に手が下敷きになったらしい、もしかしたら折れてるかもしれない


「大丈夫ですか!」


普段病院勤務で外傷直後、つまり怪我してすぐなんて見ることはないんだけどこれでも医療職の端くれ、目の前で怪我をしている人がいるなら助けるのは普通だ。


きっと俺はこの時とった行動を後悔はしない。しないが、やり直せるなら別の道を通るようにするだろう


「腕がいてぇ!」

「まず木箱をどけますね!セリアさん悪いけど手伝ってください」


緊急時の対応として、周りの人に助けを求めるとき必ず名前や服装など、個人が分かるように呼びかけるようにするのが決まりだ。集団心理的には自分以外に人がいると善行だとわかっていても動くことができないことがある。

自分以外にこんなに人がいるならわざわざ自分が動く必要はないだろう、誰かがやってくれると思い込むからだ。ちょうど今回は知ってる人がいるから助かったぜ


「では上げます、せーの!」


結構重たい、けど何とか挙げれた!


「大丈夫ですか?」


こういう時に救助側が焦ってはいけない、こちらが動揺していればそれは相手に伝わるから、だからできるだけ声のトーンを落として柔らかい口調で話しかける


「腕がいてえんだ!どうにかしてくれ!!」


こんなときに基本的には理学療法士は触らない、医者がまず判断するが


「医者はいますか?」

「いしゃ?教会の人はいます」


教会?この世界じゃ医者の役目は教会なのか?


「ではその教会の人は?」

「馬鹿言いうな!教会にお願いするなんてそんな金ねぇ!」


パッとセリアさんを見るが頷いていた。なるほど、そういう感じね

じゃ、とりあえずは骨が大丈夫かどうかだけ見とくか、折れてたらどうせここは包帯なんてないだろうし添え木でもしとくか


「わかりました、では私が診ますね」

「あんた何する気だよ」

「そんな大したことできませんよ。そうですね、まず指動かせます?」


指、肘、肩を動かしてもらい、そのあと俺が同じ動作を動かす。手に力を入れてもらったり痛みの確認、腫れ発赤などの炎症反応を見た。いわゆるリハビリの評価という行為だ。

リハビリの評価というのは主に状態の把握だ。どういう状態なのか、どんな症状があるのか、どこに困っているのかなどを見る。まず、リハビリで真っ先に行う行為だ


これは折れてるなー、たぶんだけど橈骨骨幹部だろうな。レントゲン見ればこんなの一発なのに、それに診断下すの俺の仕事じゃないし、現代だったら越権行為なんだよな

さて、どう伝えようかな

作品・続きにご興味をお持ちいただけたのでしたら下の★をクリックしていただけると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ