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凡人魔法使いの成り上がり伝  作者: R-あーる-
Shiny Destiny‐魔法に愛 (毒)された少女‐
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神の御技

神の御技




試合を行う全6チームの生徒が森林グラウンドへ入場が完了した。


「俺たちは西側。敵チームは東。対面側になったか。」

「順当に行くなら、安全策をとって迂回の選択をとるのが最善手でしょうね。」

「だろうな。けど順当ってのは相手も同じ事を考えやすいって事だ。いつ戦闘になっても良いように備えようぜ。」


カイルはそう言うと、慣れた手つきで手近の木に登り遠くを見つめる。


「…うん、まあ、分かっちゃいたが、相手の場所は分かんねえな。」

「一応全員、耐衝撃魔法をかけておこう。弱めの魔法だけど、不意打ちを少しでも防げる。」


木から下りてきたカイルも合流し、各々が耐衝撃魔法を発動する。


「こうだだっ広いステージじゃ、罠魔法は非効率的か…」

「…とりあえずまあ、移動するしか無いか。」


魔法は種類によるが、大体のものは自分自身に効果を及ぼすものの方が魔力消費は少ない。

魔法の中でも一番魔力を消費するのが罠系の魔法。

相手に魔力感知を必須化させ、相手が範囲に入った瞬間発動する。

強力だが、その場に留め続けるために多量の魔力を消費するのだ。

誘い込めなければ大きなロスになる。

移動しながら、適宜周囲を警戒。

地道だがこれが一番の安全策だろう。


「…お二人は、戦闘の経験がお有りなのですか?」


カイル、俺の後に続いて歩くセルエナが歩きながら訪ねた。


「…ねえ、わけじゃない。ただしっかりしたのは今回が初めてだ。」

「そうだったのですね。いえ、ずいぶんと慣れた初動の判断でしたので。」

「マニュアルの動きだ、俺はな。シュティムの方はよっぽど珍しいと思うぜ。」

「え、俺?」


予想外の話の振られ方だった。


「さっき魔法持久適性っつってた。その割に罠魔法での籠城を最初に提案しなかったのは大分珍しいと思うぜ。」

「それは…特に深い意味は無いけど。」

「けど、なんだ?」


俺は、思い出す。

奇しくも、この状況。

薄暗い森林、男女混合のグループ、見通しの悪い視界。

あのときと状況が似ていたから。


「……昔、自分の事だけしか考えなくて、大切な人たちを失ったから。だから今度は状況を打破しようって思って。それで動く選択肢をとったってだけだよ。」

「ふーん。ま、俺もお前も訳ありって事だな。それより、警戒を怠るなよ。見通しが悪くてたまったもんじゃねえ。」


前衛にカイル、後ろにセルエナ、間に俺。

当初の予定通りのスタイルで俺たちは進んでいた。

静かな森に、三人が草木を踏みしめる音だけが響く。

これだけ広いとなかなか遭遇しないだろうが、

つい先ほどカイルが言っていたように、視界のほとんどが木々で覆われていて先が見づらい。

気を抜いた瞬間に、なんてことも大いにあり得る。


「二人とも、紐はどこにつけた?」


俺は前方への警戒を継続しつつ訪ねた。


「俺は首だ。急所につければ反射的に守りやすい。」

「私は手首に。視界に入りやすいので。」

「俺は腰…三人とも自分の適性に合わせたって感じで良いのか?」


適性を明かしていないセルエナはともかく、カイルの首というのがポイントだ。

彼の言い分からすれば彼の主な戦闘スタイルは近距離戦。

それなら手や腰など自分の心中、つまりは人体の急所から離れた場所につけるのはリスクが大きいと言うことだ。

この演習は紐が自分の体から放れた時点で、戦闘は継続出来るが判定的にはアウトとなる。

彼の判断は理にかなっていた。


「ま、少なくとも俺はな。お前はどうなんだよシュティム。なんで腰だ?首とか腹部に巻き付ける方が良いんじゃねえか?」

「背後をとられさえしなければ、腰って言うのはなかなか狙われにくい場所なんだよ。手や足ほどじゃないけど、体の動きの基準になる部位だから、自分の管理が及びやすいんだ。」

「へえ。」


話す間も、カイルは一切の警戒を怠らなかった。

俺だって警戒してないわけではないが、

それにしたってカイルのそれは少し異常なほどだった。

ともすれば、何かに追われているかのような。

そんな生き物が放つ特有の雰囲気に似た何かがあったのだ。


「…カイル———」


俺は彼が緊張しているのではと思って声を掛けようとした。

その瞬間。

後ろから来た衝撃に体勢が大きく崩れる。

俺はその衝撃が、セルエナが後ろから体ごとぶつかってきたものだと気づくのに一瞬の魔を要した。

そして、彼女がぶつかり、俺と共にはじき飛んだその場所、俺の元いた場所に


魔法が発動した。


「…ッ!?なんだよこれ!」

「植物系の罠魔法です…!ごめんなさい、判断が一瞬遅れました!」

「…いや、助かったよ。まさかもう罠が張られてたなんて…」

「いいえ!」


彼女は即座に起き上がるとにらむように上空を見上げた。


「まだ降ってきますっ!」

「降って…?」

「…!クソッ、そういうことかよ!!!」


カイルは自分の足に身体強化魔法を掛けた。


「走るぞシュティム!!!」

「走るって…まさか!?」

「私たちはもう『狙われて』います!」


セルエナの叫びにも似た警告の後、空から降ってきたのは無数の植物。

それらは地面に着弾すると同時に、鎖のように周辺の草木を絡めていく。

突如として降り注ぐ無数の植物爆撃。

それらに当たらぬよう、俺たちは走り出した。


「なるほどな!こっちの場所が正確に分からなくても、ある程度の当たりが分かってりゃこういう戦略もあるかッ!」

「それにしてはこちらの位置を正確に割りすぎてる!罠魔法は魔力消費が激しい…そんな魔法を遠距離でわざわざ博打的に使うとは思えないッ!」

「あぁ!?つーことはまさか…」

「十中八九、こちらの位置は相手側に補足されています!」


俺たちの走り抜けた場所を、魔法が寸分違わず発動している。

ご丁寧にちょうど三人分。

確実に狙いを定めて撃ってきている。

予期せずして後手に回っていしまうことになり、体制が大きく崩れてしまう。

三人が同じ方向に逃げてはいるが、襲撃を受けたことによってこちらの状況整理に時間がかかる。

そして…


「きゃあ!」


セルエナの悲鳴が俺とカイルの足を止めた。


「セルエナ!」

「ああクソッ!捕まったか!」


セルエナが魔法に捕らわれ、転倒する。

チームの仲間を置いていくわけにいかない。

俺は彼女がこれ以上魔法に捕まらないように彼女の頭上に結界魔法を発動する。


「おいシュティム!?結界魔法なんて消費の激しい魔法、こんな場面で使うんじゃねえ!」

「俺なら多少は関係ない!それよりも今は人員が減ることの方がマイナスだろ!?」


つかの間躊躇したカイルだったが、数秒もしないうちにセルエナのそばに移動した。

そのスピードは目を見張るものだった。

よほど洗練された肉体が無ければ、いくら肉体強化魔法といえどこうはならないだろう。


「早くお前も来い!ありがたく使わせてもらうから、しっかり維持しろよ!?」

「…ッ了解!」


俺は二人の元に駆け寄り、結界魔法の維持に神経を注ぐ。

そばではカイルが植物の罠魔法を無効化し燃やしていた。


「ったく、で、何だって?囚われのお姫様ぁ?」

「私たちは、場所を完全に補足されています。それも恐らく全員が。」


結界魔法には絶えず植物魔法が降り注いでいる。

それも心なしか着弾する量が多くなっているような気もしていた。


「完全に補足って…相手方のスタート地点から俺たちのスタート地点はこのグラウンドの端と端、約800メートル、しかもそれは直線距離の話だ!」

「ああ…飛んできてるこの植物は放物線で飛んできてやがる。1キロは軽い距離を正確に補足して飛ばしてくるなんて芸当……」

「相手の中に、演算系の魔法適性を持った方がいる、と言うことです。」


演算系。

珍しい魔法ではあるが、決してウィザードに不向きな魔法というわけでも無い。

その可能性を完全に思考から外していたのも、今回の要因だろう。


「演算系ねぇ。だが、いずれにしたって魔力は有限。こっちも同じ条件だが、俺らにはシュティムがいる。」

「ああ…我慢比べなら、任せとけ…!」


結界魔法は、与えられた衝撃を無効化し、魔法自体を防ぐもの。

脅威こそあれ、破壊力は皆無と言っても良い植物の鎖型罠魔法、

この程度なら、あと数十分は耐えられる。

時間ギリギリまで耐えて、魔法が切れたところを全員で行けば、勝てる。


「…そういえば、お姫様よ。」

「それ止めてください。私は…」

「はいはい、セルエナ。お前、なんでシュティムをぶっ飛ばせた?」

「…?私にもそれくらいの身体能力はありますが?」

「そうじゃねえ。」


カイルがセルエナに問いかける。

俺の目には、少し、警戒しているような問いかけに映った。


「何でお前は上から魔法が来ることに気づけた?」

「そ、それは…感知魔法を……」

「そんなもの俺も使っていた。だから俺も気づけた『お前より少し遅れて』な。」

「カイル?どういうことだ?」

「シュティムを弾き飛ばした後にお前言ったな?判断が遅れたって。それじゃあまるで…」


結界魔法の張られたこの空間はひとまずの安全空間。

危険など無いはずの周辺に、不穏な空気が立ちこめる。


「お前は魔法に気づいてたみたいな言い方じゃねえか。」

「……」


セルエナは、カイルと目を合わせようとしない。

ばつが悪そうに目を伏せ、その肩は小刻みに震えている。


「答えろ。やっぱり今のお前を信用は出来ない。」

「カイル!今じゃなくても良いだろ!とにかく今はどうにかしてこの演習を乗り越えて…」

「素性も知れねえようなヤツに俺の足引っ張られてたまるかよッ!!!」

「ち、違う…私はそんなつもりじゃ……!」


カイルの怒号に、セルエナの怯える目。

今このチームは、破綻しかけていた。



「何だ、仲間割れかぁ?潰しがいねえなあ!」


その声に、一瞬で警戒状態が引き上げられる。

声の主は、

上空から魔法と共に飛来し、


結界魔法に衝突した。


「くぅッ…!!!」

「なるほど。『当たりが一カ所に集中した』ってのはこういうことか。あの女の魔法、なかなか利用価値があるな。」


突如として降ってきたそのフード男は結界魔法の上に立つと、魔法を展開させる。

罠魔法や身体強化魔法では無い。

それは明らかな、殺意のこもった魔法。


「これで終わったなぁ!!?」


周囲が揺れるほどの爆音と高熱、辺りの木々が一瞬にして燃えていく。

爆発魔法。

明らかな攻撃魔法だった。


「…おいおい、攻撃系の魔法は禁止だろうが。」


俺たち三人はその魔法を間一髪で回避していた。

カイルの一瞬の判断。

土壁を発生させる魔法で、熱と爆風の両方を防いだ。


「へえ?これ防ぐか。さっすがカイル・ヴァルハ、コネ入学は違うねえ。」

「……んなこと言うためにわざわざ虫みたいに飛んで来やがったのか?」

「ひひひっ。そうカリカリすんなよぉ。確かに明らかな攻撃魔法、俺の尻尾は無くなった。」


すると、どこから出てきたのか、職員の高速の魔法が発動する。

エリア全体に放たれたであろうその魔法は、

その男の尻尾だけを消失させた。


「へぇ…こんな感じになるわけね。おおっと、そんな話をしに来たわけじゃねえ。」


男は再び俺たちに向けて構えた。


「ちっ…!」


だが男の魔法が発動するよりも先にカイルが動き出す。

一瞬で相手の懐に入り込むと、流れるような近接格闘へと持ち込んだ。

魔法の発動と格闘術を同時に使用するという、まるで曲芸のように洗練された動き。


「ハハッ!良いねえ!ウィザードらしからぬその機敏な動き!」


だが男に触れることが出来ない。

カイルの適性は、触れなければ発動しない

男はひらひらとつかめない動きでカイルを翻弄し、


「……ッ!?」


爆発魔法で吹き飛ばした。

地面を転がるカイル。幸い生きてはいるようだが、重傷を負ってしまう。


「カイル!!!」

「ビビって手が滑っちまったよ。鬱陶しいからそこで寝てろや。」


俺はセルエナの前に立つようにして構える。

この男、躊躇が無い。

人間に対して攻撃魔法を放つという行為そのものに。

そうでなければ、あの近距離で爆発魔法など使わない。

新入生のオリエンテーションに参加する人間としては、明らかに攻撃慣れしている。


「…お前、ここの生徒じゃねえだろ。」

「ありゃ、ばれた?おかしいなぁ、ここのぼんくら共なら余裕で騙せると思ったんだけどな。」


もはや隠す気も無いようだった。

男は被っていたフードを外し、その顔をあらわにする。

特徴的な目の模様に、額に刻まれた不気味な刻印が目立つ。


「…!?『ウロヴォロスの刻印』そんなまさか……」

「セルエナ?何か知ってるのか?」

「…逃げましょう!このままでは……」

「お。そこの姉ちゃんは知ってるみたいだな?ってことは、貴族階級かそれに準ずる身分だな、ラッキー。」


刹那、男が高速で魔法を連続して発動する。

大量の火炎魔法が俺とセルエナを目掛けて飛来してくる。

絨毯爆撃にも近い密度の攻撃、当たれば無事では済まなかった。

だが……


「……!おいおいおい!!面白えことしてくれんじゃん!!!」


息は上がったし、魔力も大量に消費してしまった。

だが守り抜いた。

男の放つ高密度の魔法、その一発一発がかなりの威力だった。

だから俺は自分を、自分の適性を信じた。

着弾の直前で俺とセルエナを守れる範囲のみに、炎にとって弱点となり得る水属性の攻撃魔法を当て返し、威力を相殺。

相手の力量が完全に分からない以上、魔力の消費を抑えつつ戦いたかったのだが、思ったよりも強力だった。

俺はウィザードを目指す。

それは相手との戦闘を主とする職業。

だが俺の戦う理由は相手を倒すという部分に無い。

俺は、守るために戦う。

俺の魔法は、そのための魔法だ。


「…何か訳ありみたいだけど、時間はそう無いと思うぞ。」


男の刻印を見た瞬間、森に潜んでいた職員の目の色が変わった。

恐らくそれほどまでの緊急事態。

すぐに騎士ナイトが、ヴァイラさんがやってくるだろう。


「つれないこと言うなよぉ…偶然見つけたお嬢様に、油断してたとはいえ俺の魔法を防げたお前……」


男の魔法が再び襲い来る。

しかもそれは、先ほどまでとは比べものにならない威力だった。


「こんなラッキーそう重なることじゃねえッ!!!」


間髪入れずに次々と襲いかかってくる煉獄の魔法。

その威力は一発目よりも二発目、さらにそれよりも次という風に、

だんだんと威力が上がってきている。

それはまるで、男のテンションに魔法が呼応して威力を上げているようだった。


「クッソ……!」

「ハハハハハハッ!!!ほーら、焼けちゃうぞぉぉお!?」


押し切られる、その直前。


「…あ?」


男の魔法が停止した。

いや、停止させられた。


「…失せろ、ゲス野郎。」


カイルが、男の首に触れていた。

カイルの判断力は素晴らしいものだった。

索敵、状況判断、そして実動。

その全ての選択を一瞬で完了させる。

俺とセルエナに注意の向いたこのタイミングをずっと待っていたのだ。

カイルが触れたことにより、彼の魔法適性である魔法封じの適性が発動する。

もう男の魔法は発動しない。

満身創痍ではあるが、カイルの必殺が決まった。


「カイル!!!」

「逃げろシュティム…!こいつは……」

「へえ…?変な感じだな。魔法が出ないってのはこういう感じなのか。立て付けの悪いドア開けようとしてるみたいな感じだ。」


しかし、


魔法が発動しなくなった男は、近接戦闘でカイルをこちらに投げ飛ばす。

衝突するカイルと俺の体、突然の衝撃に俺はカイルごと後ろに飛ばされてしまった。


「ぐぅッ…!大丈夫か、カイル。」

「逃げろ、あいつは…『ウロヴォロスの刻印』は、俺たちでどうにかなる相手じゃ無い…!」

「この魔法、発動終了は時限かぁ?それとも———」


男の魔法が発動した。


「なるほどぉ、立て付け悪けりゃ蹴破りゃ良いって話か。」


カイルの適性が通用しなかった。

いや、効いてはいた。

確かにあの一瞬、俺が押し負ける直前でカイルの魔法は発動していた。

そう、それはつまり……


「あいつは、隣国の『ヴァルガンド帝国』の刺客だ……どういう理由でここにいるのか知らねえけど、俺なんかよりも数倍の魔力を持ってる。」

「ヴァルガンド帝国?!な、何でそんなヤツがここに…!」

「知らねえって…とにかく、セルエナつれて逃げろ!」

「で、ですが……」


セルエナは何かに迷っているようだ。

ここでカイルを置いていくわけにはいかない。

相手が隣国の敵ならなおさらだ。


「…!へぇ!立つかよ!!!お前やっぱ面白えぞ!!!」


もう誰も見捨てない。


もう誰も置いていかない。


全員俺が、守りたい!


男の魔法はどんどん威力を増している。

今は彼の周りに纏うように発動しているが、

離れていても分かるほどの魔力量。

今の俺に、あの威力が防げるのか?


「ありがとよぉ……楽しい思い出になったぜぇええ!!!」


考えてる余裕は無い。

俺は視界を覆うほどの烈火に全力の結界魔法で応戦する。

だが、


持たない。

数秒たりとも持つこと無く、

俺の魔法は灼熱に飲み込まれた。


俺たち三人を、業炎が襲い来る。


また、守れなかったのか?


あれだけ努力しても、俺は結局———




「…もう、止めてください。」


衝撃におののき、目を閉じていたが、


俺の体は、業炎に焼かれることは無かった。


それどころかむしろ、温かな気配が辺りから感じられる。


目を開くと、そこには、


俺たち三人の眼前で止まる男の業炎の魔法と、

それをせき止めるかのように発動している光り輝く壁が見えた。


「光…魔法……?」


それは、全ての魔法の祖である魔法。

魔法の原点にして、最も扱うことの出来ない魔法。


理由は簡単だ。

魔力消費量の桁が違うと言うシンプルな理由。

小さな光を灯す魔法ですら、純粋な光魔法のみで発動した場合、

一般のウィザードの人生3回分の魔力を使用すると言われている魔法。

それが今、俺たちの目の前で発動している。


「…おい、セルエナ……お前何してる!?いくら追い詰められたからって光魔法は、お前の命が…!!!」

「大丈夫です。」


カイルの言葉にはっと振り返る。

この光魔法を発動していたのはセルエナだったのだ。

だが、彼女はその強力な魔法を一切ぶらす事無く保ち続けていた。


「大丈夫ですって………ルートリア、それに光魔法…?!お前、まさか……」

「カイル?」


彼は何かを知っているようだった。


「何で忘れてたんだよ。こいつの名前を聞いたときに感じた違和感はそれか…」

「お、おい、何なんだよ!セルエナのこの魔法のこと、何か知ってるのか?!」

「ああ。つっても、今思い出しただけだけどな。」


カイルと俺は、毅然として相手を見据え、魔法を維持し続ける彼女を見ながら、

その光魔法に守られていた。


「『ルートリア家の神の化身』だとか、いろいろ言われてたんだよ。あいつは……」


それは、あまりにも強力で、あまりにも圧倒的な力。


「セルエナ・ルートリア。この女は、神の魔法にも等しい魔法『光魔法を無条件で使用』できる…魔法の神に、そして魔法に愛された少女だ———」


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